第15話 カサードの受難 (中編)
はっじまっるよーヽ(´▽`)/
シルフの風の力でタオルを乾かしてる最中に、リリアーナに注意しようとした……が
『タオル乾きまちたよー』
俺は思わず、カクッと膝の力が抜けて、やや吉本風ズッコケになる。
ずっこけた姿を見ているリリアーナは、一瞬キョトンとするがすぐに微笑んだ。
シルフが乾かしてくれたタオルを空中でキャッチして、リリアーナに指示する。
「リリアーナ、桶を机の上に置いてくれ。置いたら、乾いたタオルを持って待っていて」
「あっ はい!」
リリアーナは言われた通りに水の入った桶を机の上に置き、渡したタオルを持って待機している。
そして俺は、丁寧に顔を洗い、タオルを、と無言で手を差し出す。
すると何故か、リリアーナが握手してきた。
「ちょ! 違うだろ! タオルだよ! タオル!」
「あぁっ! そうでしたか! ごめんなさい!」
ちょっとしたコントをしつつ、渡されたタオルで顔を拭う。あとで、面白かったよとリリアーナの頭をなでなでして、その場を和ませたり。暫くの間、リリアーナとじゃれあった後、身だしなみを整えて執務室へと向かう。
執務室で少したまっている書類を捌きつつ、文官のジェロマンと今後の計画の打ち合わせする。
「ジェロマン、来月にでも、貴族税の布告を頼む」
「了解しました、カサード王子。 しかし、布告した後は貴族側から、何かしらの反発が予想されます」
「うむ、その点は織り込み済みだ。ジェロマン、気にすることはない。全て民の為だ」
「承知しました」
そして再び書類の処理に集中する。小一時間程仕事をしていて、もう一つ言い忘れてた事を思い出す。
「あー、ジェロマン、もう一つある。」
「なんでしょうか?」
「貴族税で増えた税収で、農地を増やす。増やすついでに農地用の水路を作ろうと思うのだ。そしてさらに、王都から5キロ程離れた河を使って物流の拠点を作るぞ。そうすればサルベーヌ共和国やサドーガ大公国の物流の時間を短縮できると思う」
「素晴らしい考えでございます! カサード王子様は民のために考え、働いているのですね! 私は感涙にむせぶ思いでございます!」
俺の考えに感動したのか、涙を流し始めたジェロマンを眺めながら、ウンウンと頷く。
× × ×
一ヶ月の間、ジェロマンと貴族税に関する話を煮詰める日々が続いたが、布告する日がやってきた。
「ジェロマン、後は布告するだけだ、頼んだぞ」
「はい! では、私は町の広場へ行って布告して来ます!」
数時間後、ジェロマンが傷だらけで戻ってきた。
「ジェロマン、ご苦労であった……その怪我は貴族達の仕業か?」
「はい、しかし貴族以外の者は喜んでおりました」
「そうか、全ては民の為と思えば、痛くはなかろう? しかし、膿んでしまってはいけないな、治療をすると良い」
「分かりました、では医務室へ行ってまいります」
「うむ」
ジェロマンは執務室から退室する、その後ろ姿は、やり遂げた誇りで満ち溢れていた。
数日後、俺はシャロミーを護衛に、町の様子を見に行く。勿論、2人は余り目立たない格好をして町を見回る。
心なしか賑やかになっている気がする。
「らっしゃいらっしゃい! 安いよ! あっ そこの兄さん! これ買ってってくれよ!」
「そこのおねぇさん! この宝石安くするよ! 見ていってくんな!」
そんな喧騒があちこちで飛び交っている。
「シャロミー、前よりも活気があるな」
「はい、そうですね。良い流れだと思います」
シャロミーとそんな会話をしていると、横から声をかけられた。
「おっ そこの坊や! このジュース飲んでみてな! そんで気に入ったら買ってくんな!」
とジュースを勧められた。まぁ、飲んでみて美味しくなかったら、買わないで、そのまま行けばいいか。
「うん!」
ジュース屋兼果物屋のオヤジからジュースを試し飲みさせて貰った。
「ん! 美味しい! どれとどれを混ぜたらこんなに美味しくなるの!? 教えて!」
「おっ 気に入ってくれたかい? じゃあ、これとこれだな……坊やが可愛いからオマケを入れて銀貨1枚だ」
と袋に果物を多めにガサガサと入れて渡してくれた。
「おじさんありがとう!」
笑顔で手を振り、その店から離れる。
果物の入った袋を持ったまましばらく歩くが、重くて腕が疲れてきたので、シャロミーに渡し、市場をいろいろ見ていく。
すると突然、痙攣・呼吸困難に陥り、俺は動けなくなってしまった。シャロミーが動転して周りに助けを求めている。
俺も何が起こったのか全くわからないが、AR機能が作動し、赤文字で【warning】【解析中】と点灯している。
『な……なんだ? 何が起きたんだ?』
行の空き具合とか試行錯誤してます。
それとも、そのままで良いかなぁ?(´ω`)




