第14話 カサードの受難 (前編)
ふと気がつくと、暖かな空間で浮いている事に気がついた。
確か、ベッドで寝ていたはずなのだが……? と思っていると、聞き覚えのない女性の声がする。
「カサードよ……エタンダール・カサードよ、そなたは近い未来にエレメント達に命を助けられる事だろう、そしてそれを境にそなたの運命が定まることだろう……」
それだけを言い残し、俺がその言葉の意味を質問する時間も無く、意識が途切れた……。
チュンチュン チチチ……と窓の外から小鳥の囀りが聞こえる。
俺はベットの上で上体を起こし、眠い目をこすりながら、ウーン……と伸びをする。
「うん! 良い朝だ! 今日も頑張ろう! ……でもさっきのはなんだったんだろう?」
とりあえずベッドから降り、顔を洗うために、奉仕人見習いのリリアーナを呼び。
「リリアーナ、水を入れた桶と顔を拭くためのタオルを持ってきてくれ」
「かしこまりました! ただ今持ってまいります!」
バタバタと部屋から出ていくのを見送る。
俺はアクビをしながら、窓を開ける、すると女の子が空を飛んで部屋に入ってきた。
「え?! えっと……これは? どうなってんの?」
俺が目を白黒させて困惑してると、空飛ぶ女の子の方から自己紹介された。
「おはよう! あたちはシルフだよ~ よろちくだよ~」
なんだか赤ちゃん言葉なシルフに遭遇して、さらにオロオロしてまうが、深呼吸して落ち着こう。
スー ハー スー ハー…… うん、落ち着いた。
「やぁ、おはよう ボクはこの国の王子、エタンダール・カサードだ」
とりあえす気品高く挨拶出来たかな? と内心思いつつ、シルフの出方を待つ。
「そっかー、キミがノームが言ってた子か~! ふ~ん、王子様なんだ~」
何やら興味深そうに見られている気がする……、ん? ノーム? あぁ、あの時のノームか。
と言うことは、このシルフはノームの知り合い……ってか、精霊仲間という括りでいいのかもしれないな、と内心で納得できた。
「そう、王子様なのです」
とドヤ顔していると、ドアを開けたままで、水の入った桶を抱えたリリアーナがキョトンとした顔をしていた。
「いったい誰とお話していたのですか?」
あっ 聞かれてた! やばい! 変な人だと思われたか?! と心の中で頭を抱える。
素知らぬ顔で、どこから聞いてたのか聞くことにしよう。
「リリアーナ、どの辺から聞いていたのです?」
「あっ はい! 確か、エタンダールカサードだ! ドヤ! からだったと思います」
『ドヤ! とは言ってないぞ? 頭がおかしいのはチミの方ではないですかねぇ! あぁん?!』
と心の中でメンチを切る。
「そうか、リリアーナはこれが見えないですかね?」
と、シルフのいる場所に指を差す。
指を差されているシルフはキョトンとしているが。
リリアーナは俺が指を指してる空間を、暫くの間ジーッと凝視した後。
「何も見えなせんが? そこに何があるのですか?」
リリアーナの答えで、ここに居るシルフやあの時のノームとかの精霊は本当に、俺にしか見えないらしい事が解った。
ふとリリアーナが持ってきた桶を見ると、タオルが浸かってるじゃないですか。
「リリアーナ、タオルが水の中に入ってるぞ。顔を洗った後、顔を拭うためのタオルだったのに、なぜ水の中に入っているんだ?」
リリアーナをなるべく諭すように話しかける。
と、シルフが俺の肩をトントンとつついている。
何をするのかと、思念で話しかける。
『シルフ、なにかあったのか?』
『あたちがその濡れたタオルを乾かちてあげる~』
『よし、任せた!』
『そのままじゃ、出来にゃい…』
『なぬ!』
『絞ってから広げて、あたちの前で放ちてくだちゃい』
『ふむ、よし解った』
暫しの思念会話で、取り残されたリリアーナが、小首を傾げてキョトンとしている。
「リリアーナ、よく見てろ? 今から不思議なことをするからなー」
俺はわざと、リリアーナの好奇心を煽るような口調で言う
。
リリアーナが抱えている桶の中に手を突っ込んで、水浸しのタオルを取り出し、絞る。
そして、シルフの言われた通りに、シルフの前に広げたタオルをパッと離す。
すると、タオルが旋風に巻かれるようにして、クルクルと回転している。
なんとなくだが、外装のないドラム式の乾燥機のようだ。
それを見たリリアーナは目を見開いて、感嘆の声を上げる。
「うわー! すごーい! カサード様は魔法使いだったのですね!」
「いや、違うから。これは風の精霊の力なのです」
「へぇー! 風の精霊の力 ですかー!」
何か気持ちがこそばゆい様な気がする。
やばい 話が纏まらなかった…_| ̄|○||| ごめんなさい




