第12話 影の素顔
そういえば、農地改革の前に、農作物の種を仕入れなければいけない事に気がついた。
が、同時並行でもいいかな~? と勝手に自己解決させてしまう。
とりあえず、平民が食べている固いパンを何とかしなければと思い、前世で得ている知識でなんとかしよう。
「確か~、天然酵母の作り方が書いた本を読んだはず……ん! 思い出した! 確かリンゴとブドウをつぶしたものに砂糖を加え、瓶に入れて30℃ぐらいで培養するんだったか? そして、泡が出て発酵を確認したら小麦粉に混ぜて、発酵したら小麦で練って発酵、それから焼くとフワフワパンになるんだっけか」
その天然酵母のレシピをメモに書く。
今度、パン屋に渡すことにするか。
× × ×
あれこれと準備をしている間に、一週間が経った。
早速、アポ無しで畑を耕しに行くか!。
汚れても良い様な服装に着替えて、馬舎に向かう。
だいぶ前から世話をしている愛馬、サクラはウェルシュコブという種類だ。
サクラを軽くブラッシングしてあげると、気持ちよさそうに目を細める。
さて、鞍を装着して、跨がろうとしたら、襟首をヒョイと掴まれ、宙ぶらりんにされる。
「うわぁ! 離してー! 降ろしてー!」
手足をばたつかせるが、ビクともしない。
もしかして……と思い、振り返ってみると。
筋肉ムッキムキな女性が、俺の襟首を掴んでいるではありませんか!
とりあえず、体育座りのように体を丸め、一気に体を伸ばす! と、やってみてもビクともしなかった。
何て言う筋力だ! まるで太い鉄の棒に吊るされてる様です!。
あぁ、愛馬のサクラが心配そうにこちらを見ている……。
「フフフ、例えが面白いな、カサード王子よ」
え? 何? 思考ダダ漏れなの!? ってかこの感じ、前にもあったような……。
「あっ! 思い出した! あなたはあの時の! 確か……ベルラ氏でしたか?」
ストン、とやっと降ろしてもらえた。
「そういえば、ベルラ氏の素顔って、初めて見たような……」
じっくりと素顔を眺める、黒色の肌、薄紫でサラサラなロングヘア、エメラルドグリーンの瞳、総合的に見ると物凄く魅力的な顔……なんだけど、体の方が物凄いゴツイ! 腕なんか普通の成人男性のウエストぐらいありそう! ってな訳で、目測開始! 身長は195cm、腕周りは~、71cm程、胸は~、うわっ!。
「やめろ! 計らないでくれ! これは極秘だ!」
ベルラは顔を赤くし照れながら、その大きい掌で顔を覆い隠された。
体はムキムキだが、心は乙女だったらしい。大変失礼しました!。
「とりあえず、ベルラは心……というか、相手の思考が見えるのですかね?」
顔を手で覆われたまま、俺は確認するようにベルラに問いかけた。
「そうだ、私の能力は他にも在るが……、この事は他言無用でお願いしたい」
「解ってるよ。僕の事も頼むよ」
「あぁ、解っている」
お互いの秘密を共有したこの感じ、何か……いいな!。
「そういえば、カサード王子。何処へ行くつもりだった?」
不意にベルラから逆質問がきた。
「あぁ、ポニーに乗って農耕地区へ行き、畑を耕そうと思って準備していた所だ」
するとベルラは若干顔を曇らせる。
「そうか……カサード王子 現実を見て逃げ出さない事を誓えるか?」
ん? どういうことだろう? と思いつつ。
「誓える! なにか問題が起きたら、また策を考えればいいだけの事だ」
と返事をし、愛馬のサクラに跨り、ベルラに見送られながら、単身で農耕地区へ出発した。
チラッと後ろを見て、カサードは呟いた。
「どーせ、ベルラはどこか離れた所から監視してるんだろうなぁ……」
う~ん……城周辺や国の位置などのMAPも描いた方が良いだろうか? (´д`)ァー……




