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異世界食道楽アドベンチャー  作者: 海鼠腸
日本食普及尽力編
114/137

111話 蜘蛛亜人とのファーストコンタクト(後編)

 カサードが、熊の皮を剥いでいると、アラクネが話しかけてきた。

 

「おまえらに頼んでみたが、えらく時間かかるのぅ」


 ボクは、皮の剥ぎ取り作業をしながら話をする。

 

「まぁ、食べるまでは結構時間はかかりますね。で、アラクネさんはいつもどうやって食べてるのです?」

「わっちか? わっちは獲ったその場でかぶりついて食べるのぅ」

「え? 毛皮は付いたままですよね? さらに言うと生ですよね?」

「うむ、食べる時に毛の食感があるが、かまわず食べているぞ」

「……じゃあ、今日は楽しみにしてくださいね。とっても美味しく食べる事が出来るはずです」

「ふむ……では楽しみにしておこう」


 等とアラクネと食べ方に関して色々と話しながら、熊を解体していく。

 

 約一時間程かけて、内臓と肉を分け終って一息つく。

 

「ふぅ……漸く解体できたな。さてと……食べごたえ重視で、もも肉をステーキ風に調理してみようかな?」

 

 カサ-ドは、いつもの様にポンッ! と手を叩き、熊のもも肉を食べやすい厚さに切り分け、インベントリから味噌が入った瓶を、手品のように出現させると、おぉー! と盛り上がった。

 

 そして、オリジナル魔術『ジョキンダー』を籠手に薄く展開。

 さらに、篭手の手のひらの方に、無数の小さな刺を生やして、ペチペチと肉の表と裏を叩いて小さな穴を開けていき、その作業が終わると刺を引っ込める。

 その後、肉に味噌を薄く塗って、数分置いておく。

 その間に近くに転がっていた石ころを立てて、作った簡易かまどに薪を数本置き、焚き火の火種を簡易かまどの方に移し、フライパンを熱する。

 そして、熱せられたフライパンの上に、下ごしらえをした熊肉を乗せると、ジュワァ~~~~!! と肉の焼ける良い音と共に、焼けた味噌のいい香りが辺りを漂う。

 

「ふわぁ……何だにゃ、この匂い!?」

「嗅いだことの無い香りですわ!」

「じゅるり……」

「未知の匂い……わっちもヨダレが出てきたぞ……」


「よっし、出来たよ~」


 木皿に上手く焼いた熊肉を乗せて、各自に渡した後、皆で食べ始める。

 

「美味しいにゃ!」

「これは!? いつも食べている肉と全然違うぞぃ?!」

「おい……しい」

「これは美味ですわ!」

「うん、肉の臭みがなくて、味噌の味も絡んでて我ながら美味しく料理できたなぁ」


 各自に『熊肉の味噌包み焼き』の感想を言っている。

 

「「「おかわり!!」」」

「おぉぅ!? 皆、食欲旺盛だなぁ、焼くよー……」


 カサードは、全員(アラクネを除く)にお腹一杯になるまで、せっせと料理を作り続ける。

 リリアーナの分の肉を焼いていると、不意にアラクネが話しかけてくる。

 

「おまえの作る料理、わっちは気に入ったぞ」

「あっ、ありがとう……」

「わっちはおまえの事も気に入った」

「なぜです?」

「おまえは、わっちの姿を見ても恐れなかった、それとわっちの願いも聞いてくれた。おまえ以外の奴は、わっちの姿を見るなり肝を潰し逃げていく」

「あぁ~……なるほど。まぁ、アラクネが話しかけてきた事で、意思の疎通が可能だと思ったからかな?」

「ほほぅ、面白い答えだな。ますます気に入ったぞ」


 要するに、[一人?で食事するのが寂しかったから]という事にしておこう。

 

 約一時間後、漸く全員(アラクネを含む)が満足した様で、満腹になり寝る者や、剣の素振りする者もいた。

 

「えっと、見張りは誰がする?」

「わっちがするぞ」

「ちょっとまって、私がするにゃ! カサード様が、あなたを信用してるみたいだけど、私はあなたをまだ信用してないにゃ!」

「ん~……すまんアラクネ、好意だけは受け取っておくから。見張りはシャロミーがしてくれ」

「そ……そうか? 仕方がないのぅ……」


 そんな感じで見張りをシャロミーに託し、ボクは毛布に包まって寝る事にした。

 アラクネの方はと言うと、少し寂しそうな顔をし、森の方に消えていった。

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