102話 貧民街暴動を何とか宥めろ作戦!
「モッキンバード、リッカミッラ、エリミール。この度の戦い、よくやった。王として礼を言う。諸君達には、後で褒美を与えることにしよう」
国王は皆の顔を、一人づつ眺めながら噛み締めるように話す。
モッキンバード達は国王の前に跪く。
「ベルラ……そなたも儂をよくぞ守り通した」
ベルラも跪いて、国王の言葉を聞いていた。
「して、カサードよ。儂が奴等に襲われている事を何時知ったのじゃ?」
「父様……いや、国王様。それはですね、『虫の知らせ』でございます」
「? なんじゃそれは?」
「う~ん……わかりやすく申しますと、勘でございます」
「そうかそうか」
ふぅ……取り敢えず誤魔化せたかな?
「では、城下の貧民街で騒動が起こってる様なので、ボク達はこれで失礼します」
「うむ」
国王とベルラを残し、ボクとシャロミーとモッキンバード達は部屋から出て、城下へと急ぐ。
城下の貧民街近くまで来ると、慌ただしく警備兵が行き交っている。
最前線辺りまで来ると、貧民達が押し合って警備兵に罵声を浴びせている様だ。
「あっ カサード殿下!? ここは危険です、お下がりください!」
警備兵の一人がボクに気が付き、気を使ってくる。
「ん……大丈夫。何故こんな騒動になってるんだ?」
「それは……、我々に聞かれても……」
ん~、騒ぎの元凶である、彼等に事情を聴かなきゃ解らないか……。
『こんな時は、腹いっぱい食べれば、怒りも霧散するだろ』
カサードはそんな考えで行動を起こす。
まず商人ギルドに行き、大きな鍋と豚肉・鶏肉・白菜・ネギ・キノコ数種類・味噌・黒胡椒を大量に準備させようと、ギルド長の部屋に押しかける。
「アイヤ?! カサードサン、突然どうしタ?!」
「突然の訪問ですまんが、早急にこれを用意して欲しい。今日中にだ。それと、木のお碗を二百人分だ。用意出来たらその品物を、貧民街近くに運んできてくれ。頼んだぞ」
カサードは商人ギルド長のフーシェー・イェンに、ここに来る途中に書いたメモを渡して、直ぐに商人ギルドを出た。
「アイーヤー……これを用意するですか? ……何かの商売に繋がるかもしれないカラ、カサードサンの頼みを優先するネ!」
カサードが出て行った後、フーシェー氏は、カサードが出て行ったドアと、メモを二~三回交互に見ていたが、これも商売だと思いギルド長は腕まくりで、部下のギルド職員を総動員して依頼を遂行する。
次にカサードが訪れたのは、ハイダルイ大聖堂教会だった。
「司祭様ー! 司祭様は居ますかー!?」
大聖堂に入るなり、この大聖堂を管理している司祭を呼ぶカサードの声がエントランスに響く。
「どうしました? 司祭様は今、お出かけになられています」
ここに勤めているであろう修道士が、事務所らしき部屋から出てきて、そんな風に言ってきた。
何だか門前払いされてる気がする……。
「ちょ……えーっと、どうすっかな」
あまり自分の権威を傘に威張りたくないので、カサードは戸惑う。
ここは無理にでも押し通るしかないか?
「では、本当に居ないのか自分の目で確かめる! 勝手に探すぞ」
修道士の言う事を無視して奥へ進む。
「それは……困ります!」
「ん? なぜ困るのだ? 神は寛大なんでしょ? 貴方が困る事は無い筈だが?」
カサードは修道士を振り切り、ズンズン奥へ進むと何やら派手な装飾を施したドアを見つける。
「ん? えらく派手なドアだな? ……司祭の部屋はここかな?」
とりあえずドアをノックしてみると、返事が返ってきた。
「誰も来させるなと言ってるだろ!」
暴言と共に、司祭はドアに向けて投げたらしく。ドガシャーンという音がした。
『なにこれ? この教会を管理・運営している司祭の行動か?』
そんなことを思いつつ、ドアノブを回し中に入る。
「入ってくるなと言ったのが解らないの……誰だお前は?!」
酒瓶を振り上げて投げる寸前で、部下の修道士とは違う事に気づく司祭。
「かなり酔ってらっしゃるようですね、司祭様」
「誰だーお前はー!? 名を名乗れぃ!? ヒック」
「これは失礼しました、ボクはこの国の王子のエタンダール=カサードと申します」
「何だァ? ヒック 王子だとぅ?!」
『うーわ、酒臭い……この時代の聖職者ってこんな感じなのか?』
はてさて、酔っ払いの司祭に会って、カサードは何を考えてるのだろうか……。




