第9話 町内視察(後編?)
一通り街を見て回ってきたが、やはり全体的に暗いような気がする……。
もう少し活気があって、賑やかなものと思っていたが、カサードが考えていたのと、違っていたようだ。
「ふぅ…… 最後に市場を見てきたら、城に戻って考えをまとめようかな」
歩きながらため息をつき、独り言。
不意にシャロミーが後ろから、肩に腕を回してきて。
「カサード様は聡い子です。でも、あまり思い詰めないでくださいね?」
シャロミーが優しく囁く。
「う……うん……」
『うわぁー!? 胸が当たってますよ! シャロミーさん!』
俺は顔を真っ赤にしながら頷く。
その後、シャロミーは立ち上がり、俺の後ろに付き、歩き始めた。
数分後、市場まで来た。
様々な店で、並んでいる商品を、眺めたり触ったりして、品質を見ていくが。
品質が良くないものや、扱いが雑なのか一部黒ずんでいる品物も置いてあった。
リンゴを並べて売っている店の前で、主人らしき男に話しかける。
「おじさーん、このリンゴ、一ついくらですか?」
すると満面の笑顔で。
「らっしゃい! 一つ銅貨2枚だ!」
「はーい、じゃあ二つください」
シャロミーが腰の袋から銅貨を4枚出し、支払った。
「まいど!」
威勢のいいオヤジだ、好感が持てる。
リンゴをズボンで擦り、ガブリと食べてみる。
『なにこれ? ボカボカじゃないか……全くりんご本来のジューシーさが無いじゃないか……まぁ、前世日本のと比べても仕方が無いかもしれないな~』
と内心愚痴り、シャロミーの顔を見てみると、俺と同じ顔をしていた。
そこから、店のオヤジに視線を送ると。
「すまねぇな……(品質の)良いものは全部貴族達が買い占めてしまうんだ」
りんご屋のオヤジは申し訳なさそうな顔で頭をボリボリかきながら謝った。
「あっ そうなのですか。 それじゃ仕方がないですね~」
『貴族め……許すまじ! 食物の恨みは恐ろしいぞ!』
心の中で血涙流す。
肉屋・魚屋エリアは、やはり日持ちさせるためなのだろう、燻製された物や干し肉 ソーセージ 魚は塩漬けされた物が並んでいる。
『冷凍技術が未開なのだろう……保冷器なんか作れば大儲けかな? あー……でもソレを購入し、設置するだけでもお金かかるかぁ~……駄目かこの案……』
あまり美味しくないりんごをシャクシャク食べ歩きながら思案を巡らせた。
「シャロミーさん 大体見回ったから戻るぞ」
食べながら、振り向かずに後ろに付いているシャロミーに伝える
「はい」
短く返事をし、城に向かい歩き始める。
市場を離れる手前で、後ろから叫ぶ声が聞こえてきた。
「ドロボー! そこの人! その子を捕まえて!」
「えっ?」
何事だ? と思い、振り向くと、数時間前に別れた少女のリリアーナが、ソーセージを両手に持って、こちらに走ってくるじゃないですか!。
衝撃の再会に目を丸くしてると、逃げてきたリリアーナが、シャロミーを盾にするかのように隠れた。
「ちょっと! 貴女! 何故私を――」
追ってきたソーセージ屋の女の店主は、腰に手を当てながら、文句をつけてくる。
「あんた達はその子の仲間かい?! 仲間だったら承知しないよ!」
と、えらい剣幕で迫ってきた。
若干頭が痛くなってきた……が、ここでリリアーナを渡したら、物凄く恨まれる事だろう。
俺たちはこの子の為に言い訳する羽目になった。
「違います! 俺たちはこの子の仲間ではありません! 数時間前に会っただけの関係です!」
きっぱりと突っぱねる。
しかし、そうやってこの子を再び地獄に突き放すだけの非情さは、持っている訳では無いので、こう付け加えた。
「関係は無いが、この子を許してやって欲しい! その品物はいくらだ? 俺たちがこの子の代わりに支払う!」
女主人は一瞬驚いた顔をするが、すぐさま訝しげな顔になる。
支払っても許さないよ! と言う雰囲気を出しているので、シャロミーに合図を送り、仕方なく印籠(王族の証明書)を出すことに……。
すると女主人もリリアーナも仰天した顔だ。
女主人の方は青ざめて土下座みたいな格好になり、リリアーナは驚きすぎたのか、口が半開きだ。
「お……王子とは知らず、無礼な事を言ってしまい申し訳ありませんでした!」
女主人が謝罪の言葉を口にする。
「金貨3枚で良いかな?」
「さ……3枚もですか!? そんなにいりません」
「いや これはこの子の盗ったソーセージ代と、迷惑料だ、遠慮せず受け取って欲しい」
そう言った後、辺りを見回し、誰も居ないことを確認してから、女主人に金貨3枚を渡す。
そして、呆然とする女主人に背を向け、リリアーナを保護名目で、王城に連れて帰ることにした。
さて……この子の今後の扱いをどうしましょうかね……(´ω`)ヨホホ




