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蒼の夢想い  作者: 藤咲 彩
後章
28/33

色々






 凪のいなくなった生活は、コンクリートの壁に囲まれた、牢獄の中にいるようなものだった。

 灰色のフィルターがかかった世界で。

 毎日、絵を描いてたけど、その他のことは覚えていない。

 


 大学もやめて、画家として仕事だけをしていた。


 ―――海の絵は、描けなかった。



 


 お世話になっている画家の先生が開く個展が、児童擁護施設で開かれるから行ってみないかと誘われたのは、凪を失って二回目の秋だった。


 

 孤児は、今の日本ではあまりいなくて、殆どが何らかの理由で親と暮らせない子供達だと説明された。

 ホールのようなことろの窓から、一人の女の子がこっちを見ていた。

 

 まだ小さくて、背の高いこたちに埋もれていた。

 けど、不思議そうにこちらを見つめる目が、昔の凪に、少しだけ似てると思った。



 窓に近付くと、女の子は少し驚いたように俺を見上げた。


 「こんにちわ」


 ガラス越しでは、聞こえないのかもしれない。

 女の子は俺を目を丸くして見つめている。

 何か伝えたいのかと、首を傾げた。

 すると、女の子も一緒の方向にコテン、と首を傾げた。


 


 ―――その瞬間、俺の世界に色が戻った。

 嘘みたいに、鮮やかな世界が広がって行った。

 


 小さな女のこは、俺を見つめていて。


 


 色を失った世界で、俺を、見つけてくれたんだ。





 

 

 


「最近、先生よくあの施設に行っているみたいですね。」


 池田さんは、俺に仕事をくれたり、コンクールの案内をしてくれたりしてくれる、仕事のマネージャーのような人。


 今日も打ち合わせで、こんなど田舎の俺の家まで来てもらっている。


「あぁ…恩人がいるんです。」

「恩人?」



 色を失った俺の世界に、また色を戻してくれた。

 フィルター越しに描いていた絵を今見たら、本当にでたらめに、色を使っていて笑えた。


 笑えるくらいに、なれていた。



 あれから、俺は月に一回くらいのペースで、施設の中高生に絵を教えに行っている。


 その、ついでに。

 いや、あくまでついでにね?




 あの女の子の顔を見てから帰る。





 女の子は和葉といって、交通遺児だった。


 


 施設の中での彼女は周りに気をつかって、とても素直。

 先生方からの評判もよく、年上のこたちにも気に入られて、年下の面倒もよくみるような、絵に描いた様によくできたこだった。




 でも、ずっと見てると気づく。




 時々、泣きそうな顔で笑っている。


 たった、十二歳の女の子が、必死に強がっているその姿は。




 胸の奥を、きゅ、と締め付けた。






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