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手繰り
私は行き交う人々の好奇な視線に、むしろ、不思議な視線を向けていた。
同じくらいの少年少女も、同じような、不思議な目で外の大人を見ていた。
スーツの黒の中、私は、その白に目を奪われた。
「(……綺麗。)」
男の大人の人に対して、そんなことを思った。
白いシャツに、色の褪せたジーンズ。
肩に掛かるか掛からないかの、少し色素の薄い髪の毛。
サラリ、と。流れるように風に揺れる髪の先を見ていた私は、その白が、大きな窓のすぐ側まで来ていたことに、はっとした。
不躾にも、見つめ続ける私に、白はその綺麗な顔を、コテン、と傾げる。
同じようにコテン、と首を傾げた私を見て、白はその口元をゆったりと緩め、凄艶に微笑んだ。
[ 序章 了 ]