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日和
カラン、と下駄が音を立て、私はびくりと息を止める。
私の先に敷地を出ていたあの人が、そんな私を横目に笑っている。
くすくすと、ただ笑うだけの彼は、私を促そうとはしない。
私は止まりかけた息をゆっくりと吐き出し、そっと、自分の足を、外の世界へと。
「…。」
いつもは、近寄ることもしなかった古くて小さな扉から、一歩踏み出した足が、外の砂利を踏みつけた。
私は足下を見つめていた視線をあげ、再び、彼を見る。
彼は、やはり、くすくすと。それは楽しそうに、私を横目に笑うのだった。