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5話

ちょっと嫌な事があって、気分が乗らずにいました。

元上司の奴は、どうやら苦しんでいるようだ。


ただ、正直、案外俺もつらい。


何故かといえば、かつての会社の様子を再現しているからだ。


アテナとラプラスの二人の提案を元に、元々考えていた案をこねくり回した結果が現在になる。


元上司の会社での軌跡を再現しているのだ。

そして、身体を自分で動かせない状態で元上司の過去と現在を合体させている。

現実認識はオンの状態のままだ。


こうして、かつての行いを振り替えさせているというわけだが、当然俺の分身も居るわけで、精神がじりじりと削れるようだ。


---

SIDE 元上司


「なんだと、俺は客だぞ! 客から金取る気か!!」

「一週間待ってくれだぁ、納期は今日だろうが、決めたことは守れ!

 俺が仕事を突っ込んだって?

 受けたのはお前だろう、出来ると思って受けたんだろ?

 じゃあ、出来ないなんてことは言えんよな!」

「おお、でかした。

 ()の功績として発表させてもらうぞ。

 大丈夫、名前は入れてやるから。」

「前に言っただろ、なのに何も出来ていないとは何事だ!」


ああ、ああ、もう止めてくれ。

俺は何を恥知らずな事を言っていたんだ・・・・・・。


客から金取る気かって、金払わなければ客じゃないじゃないか。

上司からの無茶振りに否の言える平社員なんていないじゃないか。

我が部署って、結局自分の手柄にしてしまっている。

前に言ったと言っても、ちょっと質問程度に声をかけた程度だ。

客観的にみると、こんな嫌な奴だったのか・・・・・・。


(ったくまたかよ。

 おまえに言われたからやってんだよ)

(あ~あ、はいまたあんたの手柄だね。

 はいはい、社畜はおとなしく言う事ききますよ)

(おまえ、文句言ってるだけじゃないか。

 フォローぐらいしろよ、上司なんだから。)

(ああ、顧客に謝ってこないとな。)


更に、部下の心の声が何故か聞こえる。

声がさらに重圧となって、俺を苛む。

なのに、俺の身体は、上機嫌で笑い、理不尽に怒り、卑怯に世渡りをしている。

それらは、確かに俺が行ってきたことだ。

しかし、今の俺にはとても耐えられない。

耐えられないのに、これが10年続くのか!!

何どもVRの停止を打診しているが、どうやっても終わらない。

終わってくれない。

もう駄目だと何ども何どもおもいつつ、目を背けられない、耳を塞げない世界に打ちのめされる。


---

「なかなか、やるわね」

「たしかに、これならかなりの効果が期待されます。

 ただ、心根が変わっていなければただの再生になっていたところで、危ういところでもありました。

 ストレス値から推測するに、相当なダメージでしょう。」

アテナとラプラスは絶賛するが、俺としては複雑な心境だ。

俺がかいがいしく元上司のフォローをしてまわっている姿は、なんともいたたまれない。


俺は目を逸らす事ができるから、まだいいんだけどな。


大体限界かと思われる位に精神が麻痺してきた様子もみられたから、場面を切り替えることとした。


これら、元上司の言葉は実体験を元に脚色したフィクションでございます。

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