第5話
赤崎高校サッカー部は、人数不足と成績不振により廃部が謳われていた。
社会問題となりつつある少子化、また、素行不良生徒がはびこるやら、学習環境が悪いやら、独り歩きした噂もあり、入学希望者も年々減少している。加えてそれに伴い、人気のない部活動が次々と斬られて行っているのが、赤崎の実態だった。
サッカー部も、その時は標的の一つだったに過ぎない。
雨霧は、廃部なりかけの部活に入って、立て直しに成功すれば格好良いからと言う理由を晴天に話して赤崎に入学した。
最初に行ったのが、頭数を揃えるところだった。
3年生は2人、2年生は4人。あと、もう4人必要だったのだ。
父の仕事先が安定せず、いつ転校するか分からない不安の下に入学し、仲良くなったところでいつか別れてしまうのだろうと部活に入ることを諦めていた垣浦と再会し、彼を一番に部に引き入れた。
その後、どうも周りに実力が認められずサッカーからは遠のこうと考えていた松木と、彼に合わせて右往左往していた降谷と出会う。中学では同じ地区だったので大会などで顔を合わせていたこともあり、お互いに選手であることが判明していたため、雨霧は松木に、強引に部活加入書を記入させていた。
そうやって、部の存続に駆けまわる雨霧を偶然見かけた国城が、最後の一人として加わった。理由として、必死な雨霧の顔が面白かったと言っていたが、こればっかりは真意は未だ掴めていない。
元々実力があるメンバーが偶然にも揃ってしまったのが、サッカー部の転機となったに違いない。成績もいまいちだったこの部は、新チームとなってから少しずつ変わっていった。
我の強い1年や、上級生も上手くまとめる雨霧のカリスマ性が光る。技術指導はもちろんのこと、練習スケジュールの管理、個別メニューの製作、相手チームのリサーチから練習試合の申し込みに至るまで、雨霧は全てをやってのけた。
それだけチームのことが好きで、サッカーが好きだったからだ。
勝った時の喜びや、負けた時の悔しさをみんなで味わいたくて、少年は一人で奔走していた。
そして、雨霧は壊れた。