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兄代  作者: 戸塚千景
序章
1/6

プロローグ

 薬品の匂いが立ち込め、まだまだ夏の足跡の残る日差しが入ってくる部屋に、2人の少年はいた。

 片方の少年はベッドに体を預け、上半身を起こし窓の外を静かに眺めている。そんな彼に、少し離れたドアの近くに立つもう1人の少年が悲しげな眼差しを送っていた。

 ふと、ベッドの上の少年が口を開き、こんなことを言い出した。


 自分が、もう1人いればいいのにな…。


 それは、あまりにもか細く、弱々しい声であった。

 そんなことは、誰もが一度は考え、願うことだろう。そして、すぐに叶わない夢だと思い直し、その考えを捨てるものだ。

 立ちながらその呟きを聞いたもう1人の少年は、そんなことあり得ないと言いかけたが、その口を慌てて閉じた。夢で終わらせない、たった一つの方法を見つけたのだ。

 ただ少年は、目の前の人物の力に、希望に、夢に、なりたかっただけなのである。

「兄貴。俺が兄貴の、もう1人のあんたをやってやるよ」

 それは、顔がそっくりな、彼らにしかできないことであった。

 少年はその時の、息を吹き返したような顔をする兄の姿を、とても喜ばしく思った。

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