登校拒否したい
―――朝になってしまった。
前日の『恐怖』からか、なかなか寝付けなかったうえに夢見も悪い。どう悪かったかは思い出したくもない。というより、忘れ去りたい。もう、察してくださいとしか云いようがないぐらいに悪かった。
重過ぎるため息をベッドの中で吐き出す。
時間が迫って来たので、ベッドから這い出るように降り、身支度を始めた。
―――朝日が目に沁みる。
気だるい身体を動かして身支度を整え、朝食を食べ、いざ登校という時間。
気分は最悪。
何故か。
入学して今日で2日目。
すでに心は登校拒否したい気持ちでいっぱいだから。
行かなくちゃ行けないのは分かってますとも。けど心は正直なんです。
―――ああああああ、行きたくない…
陰鬱な空気を醸し出しつつ、寮を出た。
―――――
教室の扉の前。
―――いやいやながらの登校だったけど、着いちゃったよ。
さてさて、かれこれ十分ほど扉の前を塞いじゃってます。邪魔ですよね。でも、通行の邪魔だろうとなんだろうと心は正直なんですよ。
開けたくない。
時間はもうじき予鈴がなる時間。確実に何人かは教室内にいるようだった。
その何人かの中に王太子がいたら…
そう思うと、扉を開けるのを躊躇してしまう。
しかし、いまのままでは不審者だ。
―――王太子に近寄らない。関わらない。そう決めたはずなのにな…
このままでは平穏な学園生活が遠のいていく。それとも、すでに手遅れなのか。
もはやデフォルトになりつつあるため息をつく。
いや、まだ大丈夫だと信じたい。できる限り、関わらないようにして…
「入らないの?」
心の中で一人、問答をしていると背後から声をかけられる。
振り向き、後ろにいた人に心は凍りつきました。
顔が引きつってないコトを求む!!
お約束なことに、さらさら金髪な王太子サマではないですか!
彼は不思議なイキモノを見るような目で私を眺めていた。
ちょっと前までの自分を思い出す。
―――うん。不審者ですよね。
とりあえず、なんでもいいから声を出すんだ私…!
「―――えっと…お、おはようございます?」
ああ、もっと良い言い逃れはなかったのか…
言いながらも、すでに後悔していた。