トリップしてました。
「―――斐?」
「――――――っはぃ!?」
綾の呼びかけに異次元に旅立っていた意識が現実に戻る。
「あれ?」
教室を見渡すと、残っているのは斐名と綾の二人だけだった。
―――いつの間に?
ショックの余り、思考が飛んでいたらしい。
―――先生も来て、話していたはずなのにどんだけ?
長い間、トリップしていたらしいことに思い至り、自分の情けなさに脱力する。
「どうしたの?」
綾が机にへばりついた斐名の肩を揺さぶる。
「私にもなにがなんだか…目を開けたまま寝てた?」
―――まさかの王子さま発見で、。
「なにそれ?」
「―――そういうことにしておいて…」
「まあ、いいけど。とりあえず、帰りましょうか?」
「―――そうする…」
―――――
自宅通いの綾とは途中で別れ、斐名は寮の自室へと帰った。
自室のベットに倒れこむように寝転ぶと、下校時に綾から聞いたことを思い返した。
正確には、意識が飛んでいた時の状況を。
あの後、許宮センセイが教室に入ってきて、簡単な挨拶があったらしい。どうやら、許宮センセイが生徒を受け持つようになったのは去年からで、教室の生徒の合計は二年生を入れても9人のみ。そのため、二年生を含めた顔合わせを次回行うことになったようだ。
「まさか、王太子と同じ教室になるなんて…」
ついてない。悪運にもほどがあると思う。
けれども。
私の平穏のためにも―――
私が四族であることは隠し切らなくちゃいけない。
短いです。