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第9話


「すいません、親が不治の病に!今すぐ帰らなきゃいけいんで、お願いしますそこをどいてください!」


退路の先には、いつの間にやら騎士さん達が移動しており、僕の邪魔をする。


「クククッ……。そんな即席で作り上げた冗談が、わしに通じる訳なかろ。今時そんなこと言うやつはいない。それに安心しろ『勇者』。将来安泰だそ、それにわしの娘のどこに不服がある?」


王様の娘さんには不服というか……釣り合わないというか……。

僕みたいな駄目人間よか、もっといい人見つけた方が良いと思うんだ。


王様の言葉にルーミアは顔が赤くなっていた。


それよか……。


「『勇者』やめてください。なんですかその若干死亡フラグは。僕にはちゃんとした『苗字』があるんですから、そっちの方で呼んでください。でないと口すら聞きません」


苗字にこだわるには色々と理由がある。

『辰子』これが僕の名前だ。

『タツシ』がしっかりした読み方で、『タツコ』と呼ばれる時もあった。それは半ば同級生からの嫌がられとして定着していた。


僕はそれが凄く嫌いだった。


だから、名前より苗字で呼ばれる方が気楽で好きだった。


ま、それはさておき。


「『苗字』ってなんだ?」


文化の違いがあるから、こうなる事も予想してなくもなかったけど、やはり異世界の壁を感じます。

「つまり、僕のことはタチバナと呼んでください。と言いたい訳です。皆にも言うけど、間違っても僕のことを『勇者』って呼ばないでね。あれ、ほんと嫌だから。僕としてはタチバナと呼んで貰いたいので以後よろしく!」


なんとなくgbしてみた。


「さっきの『勇者』嫌い発言は、そんな清々しいしく公言するものではないのだがな……。前にも言っていたが、そんなにタチバナは『勇者』になるのが嫌なのか?」


さっきの『勇者』嫌い発言してから、周りからの視線が前よりも少しどころじゃなく痛い。

ここの『勇者』は何故そんなに崇められているのかと疑問に思うのだが……。

やっぱり世界平和の為に魔王を倒したとか、世界の乱戦を未然に防いだとか、そんな肩書きでも持ってるのかね……。


しかし、姫を助け出すだけなら、『勇者』ではなくとも良いと思う。

『英雄』やら『救世主』と色々とあると思うんだが……。

『勇者』はどうしても剣と魔法で戦い、魔王を倒すというビジョンしか浮かび上がってこない。


知識不足なのか……これは……。


「さっきから悩んでいる様だがどうした?」


「いや、ちょっと『勇者』の成り立ちについて自分なりに考えてました。それで質問なんですが王様。王様の中での『勇者』って何ですか?」


「世界一の強者。世界を背負える器。魔を滅ぼす力。世を照らす一筋の光。人々の希望。ま、言えばきりが無いが、これだけは言える。勇者の全てが古代より『黒髪』であること」


理解はした。

でも嫌がらせだろそれ。

昔からそんな物伝えてくるな。


「本格的に帰りたくなってきました」


帰る場所無いけど。

「これも先人からの伝えだ。諦めろ。どんな経緯があったとしても、黒髪であり、我が娘を助けた辺りでタチバナには平穏な日々など来はせんのだから、諦めてルーミアの婿になれ」


ちらっとルーミアを見ると、脳処理が追い付いていないのか、顔が真っ赤の状態で全く動かない。


なんか、一部の者からは殺気を感じるのだが……こっちの身にもなって貰いたい。


はっきり言って、胃に穴が空きそうです。


「婚約は同者同意しないと成り立たないから却下!」


僕は力強く言った。

ルーミアはどうか知らないが、こんな強制的な婚約認めて堪るか!


「ほぉ~、ルーミア。お前はどうだ?」

いつの間にやら冷静になっていたルーミア。

深呼吸して、自ら落ち着かせている。

たぶん全員の視線がそっちに行ったと思う。


「私はタチバナ様のこと愛してます!!!!」


「ブッ!!!」


告白からぶっ飛んでプロポーズされちゃったよ!


ヤバイ死ぬ、胸が張り裂けるほどに僕は嬉しくて死んじゃう!こんな事なかったから……異性からの告白じゃなく、ぶっ飛んでプロポーズなんて…………。



















ほんと……涙が出るほど嬉しいよ~。








ルーミアはこちらに向かって抱き着いてきた。

しっかり、身体を密着させ、お互いの鼓動が聞こえる程に……。

僕らはお互いを感じ合っている。


手を伸ばしたい……。

でもそれは、同時に答えでもあるから……。


「……ルーミア……」


声が震える。

同時に罪悪感で吐き気がする。


「タチバナ様、私は貴方を愛してます!これは、王が決めた事ではなく、私が決めた事です!だから聞きたいです……貴方の答えが!」


これは蜜の様に甘い言葉だ。

酔えればどんなに幸せな事か……。


僕とルーミアは見つめ合う。

ルーミアは思いを伝え顔が本当に真っ赤だ。リンゴの様に真っ赤で、可愛いと錯覚してしまう。

ルーミアは不安からか、瞳には涙が溢れる。


僕はそんなルーミアに同様してしまう。



あぁ……。

……本当に好きなんだなと……。


「僕は……」


答えは最初から決まっている。

そう、転生する前から覚悟は出来ていたはずなのに……。


無意識の内か、拳を強く握り閉め、手からは少しばかり血が滲み出している。


汗ばむ拳から出る血は、本当に不快だった。


僕もルーミアが好きだ。



でも……。



「ゴメン……ルーミア。君の願いは叶えられない……」


決めてしまったのだ。

転生して何を成すのか。

ここでやめてしまうのは、自分を裏切る気がしてしまう。




僕は…………。


















『全ての不幸の女性を出来るだけ助けたい』





そう、願ってしまったのだから。



「そんな……」


ルーミアの身体が震え出す。



チュッ……。

ルーミアの額に僕はキスをした。



「えっ……」


不意の事に呆然となるルーミア。


「ほんとごめんね……。僕は我が儘だから……」


決心はついた。


「私は貴方をこんなにも慕っているのに……愛しているのに!どこがいけないのですか!私駄目な所とか直しますから……だから私から離れないでください……。お願いします……おねがぃ、じまずから……」


まるで母に駄々をこねる子供の様だ。


「ごめんね……。でもルーミアは、これから国を引き継がなきゃいけないし、子孫も残していかないといけない。こんなブラブラ男より、もっと優秀でカッコイイ人と結ばれるのが、君の幸せだと思うから」


「わたじは……。私は、貴方以外の子供は作りたくないし、私には、貴方以外のカッコイイ人なんて存在しません。私の幸せを勝手に決めないでください!私はタチバナさんと居るだけで幸福なんです!」


切り替えりが早いな……。


こんな感じで、僕への思いも切り替えしてもらいたい。


「じゃ……。試練だよ。この試練を乗り越えられたら生涯君を愛して続けると誓おう」


「それ、本当ですか!!」


ルーミアの顔が、キスする一㎝まで近付いてきた。


「ほんとほんと」


「本当に本当に本当ですか!?」


さっきまで泣いていたのが嘘のような笑みで聞き返してきた。


「えへへ……、これで私達公式な夫婦になるんですね。」


「そうだね、なれれば良いね……」


僕はルーミアの耳元に近付き、耳元に小さく囁いた。


「《忘却の記憶》」


辛いなら忘れてしまえばいい。

辛かったら最初からなかった事にすればいい。

忘れたくなければ抗えばいい。

なかった事にしたくなければ記憶を魂に刻み付けろ。



「貴方は誰ですか?」

ルーミアは僕に聞く。


「通りすがりの自称正義の味方だよ」

笑顔で僕は答える。


「タチバナ……貴様いったい何をした!?」

王様が叫ぶ。


そりゃそうだ……。

だって無断で、娘の記憶消しちゃったんだもんな……。

そりゃ怒る。


「ん?どうしたのですかそんなに大声出して。珍しいですね」


ルーミアは今の状況を理解出来ないのか、クエスチョンマークが頭上に現れそうだ。


「大丈夫ですよ王様。忘れたのは僕の事柄全部です……。大して日常生活に支障はでません。ただ……この数日の記憶が無いだけです。それに、僕はこの人の好意を受け入れられない」


他の人が不幸なのに、僕が幸福になるなんて許されない。


これは、僕が決めたルール。


「訳があるのか?そんな泣きそうな顔になりよって、説得力ないぞ」


少し考えていた事が顔に出てしまったのか、王様に悟られてしまった。


「理由はガキみたいなものですよ……僕は正義の味方になりたいんだ……。正義の味方といっても狭い範囲内ですけどね」


拷問されるの見ると、ほんとキレそうになるからな僕は。


「じゃ、僕は行きますね」


そう言って此処を出ようした。


「え?もう行くんですか!もう少しゆっくりしていけば良いのに」


この言葉に留められてしまった。


ポン……。


ついついルーミアの頭を撫でてしまった。


「///なんですか!?」


跳び上がり、距離を取った。


「ありがとう」


僕は満面の笑みでそう答えた。


「/////」


そして、僕はこの城から出ていった。



























「ぬぉ~!!ルーミア超可愛いよ!マジお嫁さんにしたかったよ!調子のって断らなきゃよかった。チクショウ!!」


今絶賛後悔中だった。


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