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第5話


今夢を見ている。


僕の世界にいる親友が突然現れ、何か言いはじめた。


「実は俺……。木耳って小学校の給食に出てから、ずっとクラゲの仲間だと思ってたんだぜ……。キノコの仲間と知った時の俺の悲しみが分かるか?笑っちまうよな?鬱だ死のう……」


それだけ言うと、姿を消し、僕は夢から覚めた。


「知らない天井だ……。そしてどうでもいい」


「目が覚めましたか」


メイドらしき人が居た。


いったい僕が気絶している間に何があったんだが……。ハァー……。


ついつい溜息を漏らしてしまった。


「私はここのメイドをやっている、メイヤと申します」


スカートの端をつま先で掴み、上品にお辞儀した。


リアルメイドですか……。


「僕の名前は、ん~どうしよう、本名を名乗るべきか、また別の名前を名乗るかべきか。メイヤさんどっちが良いと思いますか?」


「私のことはメイヤと呼び捨てで結構です。名前に関しては、御都合が悪くないのでしたら本名を名乗るべきだと思います」


「僕の名前は★○□▲@■!!」


普通は発音出来ないような奇妙さで言った。


メイドさんは眉を潜ませ、困ったような顔をしている。


わざわざ発音出来ないようにしたのだから、面白いリアクション頼みます。


「すいません、もう一度お願いします……」


「★○□▲@■!!」


「すいません、私が勉強不足のあまり、貴方様の名前を発音することが出来ません。……すみません……」


メイヤさんは落ち込み、目を伏せてしまっている。


「ぷっ!!ごめんごめん、さっきのは冗談。僕の名前は橘辰子って言うんだ。よろしくメイヤさん」


「からかわないでくださいタチバナ様」


メイヤさんは少しむくれ面になりながらも僕に言った。


「後僕のことは様づけじゃなくても良いから。いやホント、偉いこととかしてないから!!平民だから!!一般ピーポーだから!!だから様付けはやめてください!!」


様付けは本格的にやめてもらいたい。相手を様呼びするのは好きなんだけど、自分に言われると背中が痒くなってくる。ついでに悶える。


ディスプレイ越しから聞くならまだ大丈夫だけど、リアルで聞くにはちょっと免疫力が足らない。


「なら大丈夫ですよ。タチバナ様はこの国の姫を盗賊共の魔の手から救ったんですから、もう国中では『勇者』扱いです。ですから偉いんですよ」


『勇者』?!


「え!いつの間に僕勇者になったの!国とか世界とか魔王の魔の手からとか救ってないよ!!勘違いなのか!勘違いなんだな!殺される~!処刑だ~!」


頭がトリップして、フラフラと身体が動く。


「落ち着いてください。まだ正式に決まった訳ではありませんので、そこまで混乱しないでください」


とりあえず落ち着こう……。何故こうなったのか聞かなければ!


「簡潔に説明プリーズ!」


「ですからさっきおっしゃったとおり、タチバナ様が俗共から姫様を助け出したんですよ。まさに勇者様の様だったと他の者にも聞きました。」


「へぇ~、でも僕のただの自己満足だし、勇者って崇められるほど果敢じゃないよ。それと姫様って蒼髪の娘?」


まさかな……。


「あ、はい。『クレセント』第一位継承者のルーミア・クレセン・S・トリプル様です」


メイヤさんが目茶苦茶良い笑顔してくるのですが。


「色々言いたいことあるけど……。逃げて良いですか(涙目)」


まさかまさかのテンプレ。まさか、助け出した人が王族とか泣いちゃうぞ。後処理大変だし、周りから暗殺されそうだし……、良いこと全然ないじゃんか。


あでも、歓迎されて美味しい料理が食べられるかもしれない。


中に毒物が混入してたらどうしょう……。


それからメイヤさんがさっきからこっちを目茶苦茶良い笑顔で見てくるのだが……。嫌な予感がする……。


「駄目ですよ。さっき周りの者達にタチバナ様が目覚めたと姫様に伝えるよう言いましたから。姫様は吐血して倒れたタチバナ様のことを心配してましたよ」


「あ、そうだそうだ。僕……吐血して倒れてたはずなんだけど、誰がここまで運んでくれたの?」


触れられて吐血ってなんかシュールだ。


「姫様が運んでくださいました。あの時は私も驚きました。まさか行方不明の姫様が、見ず知らずの方をここまで運ぶなんて」


一瞬姫様が片手で僕を担ぐ姿を想像してしまった。


なんと言うか……。イメージが……。


「じゃ、お姫様様に、「ありがとうございました」とでも伝えておいて。そして僕は飛ぶ!!」


飛び立とうと、窓に足を掛けた。


ギュウ……。


背中に何か暖かい物が……。


「駄目です!!姫様が来るまで待っててください!タチバナ様は恩を阿多で返す人なんですか!本当に姫様は貴方に感謝してるんですよ!だから、もうちょっともうちょっとだけ待ってはいただけないでしょうか!」


振り返るとそこには、僕を止める為に身体を張ったメイヤさんがいた。


というか、抱き着いてきてます。背中にある感触が……。


駄目無理……。


「ガハッ!!」


本日二度目の吐血をした。


「タチバナ様大丈夫ですか!!あぁ~どうしましょ!今すぐ医者連れて参ります!だからタチバナ様死なないでください!」


だから触れないで……。マジ死ぬ……。


「僕は大丈夫だから、あまり揺すらないで……」


意識が朦朧となる。最後に見たのは涙目のメイヤさんの姿だった。


こんな良い人なのに泣かせるなんて……、ほんと最悪だな……僕は……。


そして、意識が堕ちた。









「ここは?」


起きると、僕が寝ていたのはやたら豪華なベッドだと分かったか。


「おめ覚めになりましたか……。気分はどうですか?」


蒼色の髪、緑の瞳。歳は僕と同じ17ぐらい。ルーミア・クレセン・S・トリプル。僕が助け出した内の一人。まさかお姫様だとは思ってなかったんだけどね。


しかし、何故に僕は今お姫様と一緒に居るのでしょう。


そんな状況に僕は『混乱』している。


「姫様。ここは、どこでしょう?」


相手が相手だ、最低限敬語ぐらいは使うべきだろう。


「私の事はルーミアとでも呼んでください。タチバナ様は私の命の恩人なんですから、敬語じゃなくとも良いですよ。私達を助け出してくださったのですから、なんの遠慮もいりませんよ」


なんともフレンドリーな、お姫様様だ……。こういったフレンドリーな人って、民衆に愛されそうだ。


「最低限のケジメはつけます故、姫様が気になさる必要はありませんが、一つだけ聞きたいことがございます」


姫様は少し不機嫌な顔をした。


「でしたら、私の事をルーミアと呼んで敬語も外してください」


なんつう条件だよ……。


「はぁ……。分かった分かった。ルーミアと呼べば良いの?」


「はい!」


少しはにかんだ顔でルーミアは言った。


機嫌が戻って良かったよ。


「で?あの娘達は?」


「あの者達でしたら騎士団の者達が今故郷に帰してますよ。あの娘達は「ありがとうございました」と言ってましたよ」


「そりゃ良かった」


少し腰を落ち着かせた。


「なぁ、ルーミア。その騎士団って全員男か?」


一様聞いておく。


「え?いえ、女性の方々も居ますよ。それがどうかしましたか?」


「フッフッ……。気にしなくても良いよ、あまり意味は無いから」


ルーミアは、いかにもクエスチョンマークが出そうだ。


「それよりも、お身体の方は大丈夫ですか?」


そういえば吐血してから記憶無いや……。


「身体の方はもう大丈夫。っか、あれは僕の精神の脆さが招いたことだから。あまり気にしないでね」


そう言ってルーミアの頭を撫でた。


「///////」


え?なんですか?無意識ですよ?


橘辰子は『なでぽ』を覚えた。


橘辰子は状態異常『悶え』になった。ついでに吐血しそうだ。


BBBBBBBBBB…………。


状態異常『悶え』はキャンセルされました。


「あぁ……、そういえば、メイヤさんはどうしたの?お礼言いたいんだけど」


メイヤさんの話を持ち出すと、突然ルーミアの機嫌が悪くなった。


……何故に……。


「あの者なら、今外で待機してます。呼びましょうか?」


「いや、別に良いよ。ただ「助かった」と伝えたかっただけだし。ルーミア伝言頼める?」


あまりね……。だって、メイヤさんの顔を見たらまたあの感触思い出しそうだしね。


「はい!」


何故か姫様は笑顔で返事するし。


まぁ、あまり難しく考えると頭痛くなるし、気付かない方が良いこともあるでしょ。



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