第19話
町の人波を見て、これが都会か……とちょっとばかり感傷に浸っている。
と、そんな事考えるよりギルド探さないと。
あまりコミュニケーションが得意ではない僕である、片っ端から聞いて回るにも結構の勇気が要る。
常に心臓バクバクの状態で体に悪い。
強気でいられるのは正しいことをしていると確信している時のみで、基本僕は小心者であり、人に道を聞くのも戸惑うヘタレである。
あまり他人に迷惑は掛けたくないと思うあまりコミュニケーション能力が欠落している。
その内、これも克服したいと切に願う。
とりあえずお金を得る為、今持っている宝石を換金してくれる装飾店に向かった。
宝石の原石をどうやって入手したかというと、ダンジョン製作のさいに掘っていたら勝手に見つかった。
やはりというべきか、どの世界も宝石の類は結構の値が張るため収入に困らない。
中には魔力を内包している原石も発見したので適当に売っぱらったら1番高かった。
今のところ、この世界のお金を使ったのはリリアナに料理を出すため食材を買った時ぐらいである。
お金の単位は。
白貨1枚、金貨100枚分
金貨1枚、銀貨100枚分
銀貨1枚、銅貨100枚分
銅貨
である。
これはこの世界共通らしく、貨幣は硬貨を用いて経済を成り立たせている。
だが、僕が居たあの世界のように1000円札というお金が紙という概念はない。
「おぉ~!また来たのか宝石少年」
そこにはナイススマイルのナイスガイが人懐っこうな笑顔をして陽気に笑っていた。
「なんですかその名前?」
「ん~いや~、君から貰った宝石純度が高くてな、欲しい欲しいと周りから散々言われてよ……。
そのせいで家の宝石が全然売れなくてな……。あ、けど宝石少年の宝石のおかげでしっかり稼がせて貰ってるぜ!」
「そりゃ良かったですね。
じゃ、また生活費の足しにするためオッサンこれ買い取ってほしい」
「ほほぉ~、また随分とでかい塊を持ってきてるじゃねぇか。
よくまぁ、こんなの見つけてくるな。
なぁどこで見つけてくきてんだ?」
「企業秘密って言ってるでしょ……。まぁ、とりあえずミスリル鉱とルビー原石、後色々あるから買い取ってくれませんか?」
「はぁ……。俺は良いけどな、そんだけ持ってりゃ自営業も出来るだろうに」
「面倒臭い、人付き合いが苦手、そして女性の方からの熱い視線が辛い。
しまいには吐血するぞこのやろう!」
僕の叫びにオッサンは愛想笑いしながら若干引いている
さっきからこっちの方を凝視してくる人が多く、大体は女性なのだが、一部男性もおり僕に向けて殺意をびしびしと飛ばしている。
黒髪はやはり珍しいのか人々の目線を集めてしまうらしい。
チラホラと通り過ぎ際にコッチを見ている人が多い。
「旦那はモテて良いな……」
「黒髪が珍しいだけでしょ?別に面が良いわけじゃないしモテたこともない。
こんな餓鬼に誰も寄ってこようなんて思う人なんていませんよ」
「自虐精神旺盛だな、オイオイ」
「あ、そうだついでにギルドの場所教えてくれませんか?」
「……まぁいいさ、ちょっと待ってろ。
あったあった、ほれ、この地域周辺の地図だ。持ってけ」
「ありがとうございます」
「別に構わないさ、どうせ銅貨10枚で買えるんだ。
いつも世話になってるしこれぐらい軽い軽い。
これからも家をよろしく。
浮気はしないでくれよ……?」
どこか店主の不安そうな顔に僕は噴いた。
なんというか、ごっつい顔して小動物ぽくなるギャップに耐え切れなかった。
あの不意打ちはちょっと反則だろう。
そのせいか、何人かの人は笑うのを堪えているのが分かる。
「…………まぁギルドで何するか知らんが頑張れ」
笑われたのがしゃくなのか突然無表情で周りに威圧を掛けている。
それを感じ取ったのか笑いは声は消え、バラバラと人が散っていった。
「……助かりました。ではこれお願いします」
そう言うと僕はさっきからずっと持っている袋を店主に渡した。
店主はニコニコしながらも僕の渡した袋を開け、中身を物色し始めた。
「……これなら金貨3枚だな」
金貨3枚を出すと、物と引き換えに僕に差し出した。
「毎度あり♪」
金貨3枚を普通の財布に入れて、スリに気をつけながらギルドに向かい歩き始めた。
しかし、さっきからの熱い視線がまだ消えていなく、さっきからついて来ている。
ストーカーですかこのやろう!
いかんいかん、女性には紳士的女性には紳士的。フゥ…フゥ…ハァ……。
以上刷り込み完了。
「あの~私のために死んでください」
そして僕が後ろを振り返ろうとした瞬間、背中をナイフで一刺し、中には毒が入っていたのか視界がクラクラと視点が定まらないず治療しようにも手足共々口すら開けない。
僕はなす術もなく力尽き財布を引ったくられ、犯人の幼女は家族と一緒に笑いながら食卓を囲む普通の家族の光景が映し出されていた。
BATEND1 金銭を目的とした幼女の殺害。
と脳内でそんな光景を幻視した。
「(嫌だぁぁぁあ!!)」
起こるかもしれない最悪の事態を予想し、BADENDにならないようにならないように細心の注意を払う。
これが唯一僕に与えられたスキル(?)『妄想危険探知』そのおかげか交通事件(通り魔)に一件しか合ったことしかないし、結構大事なスキルなのだと思う。
「(うん、声を掛けられたら後ろを振り向かず走って逃げよう)」
「あの~」
(キター!!(・∀・))
僕は振り返ることなくギルドまでDA☆SHした。
ダッシュじゃなくてDA☆SHというところが肝心です。
もう疾風のように走り去りましたよこの場から。
え?勘違いだって?お前の被害妄想だって?
ハッ!!これぐらい常識として周りのクラスの子から言われ続けてきましたよ。
痛くも痒くもない!
……なんてことありませんけどね……。
僕の心はピュアなんです。触れたら砕ける脆いガラスなんです。だから追っかけてこないで~!!
「待ってください!!私の話しを聞いてください!!!」
可笑しい可笑しい可笑しいよ。人外級の速度について来るなんて……なにあの子?
しかし、分かったことがあるとすれば、余計捕まりたくないということだけだ!!
人混みの中を走り抜けるなんて、なんか人弾幕シューティングみたいだ。
「《加速》《加速》《加速》!」
魔法の複数掛けにより更に僕は速くなる。
後ろの標的はいつの間にかロストしていた。
流石にこの速度には追いつけないか……。
周りを見渡しから標的が居ないか確認し、地図の通りギルドに向かった。