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プロローグ
︎︎母さん……! 母さん! 母さん――!!
︎︎それは、心からの叫び。何よりも大事で、大好きな母親へに向かっての叫び。
︎︎途方もない悲しみが、その心を埋め尽くす。
︎︎それは怒りか、悔しさか、悲しみなのか。
深く深く、その悲嘆に沈む。底に沈んで、息が詰まるかの如く――その心は、呼吸を終えた。
怒り。怒り。怒り。――その感情だけが、奥底で燃え続ける。
ムカつくのだ。全てが。
その気持ちのままに、少年は『生物』を殴った。女か、子どもかなんて関係なく。ムカつくなら、怒りの対象は獣でも構わなかった。
とてつもない憤怒が、憎しみにも近い憤りが少年の心を埋め尽くす。腹の底に存在し続ける怒り。それは、心のままに暴れ尽くしても、決して消えはしなかった――
それが、少年の罪。怒りを撒き散らして、残虐さにすら手を染めた。それこそが彼の罪だ。




