⑧オリハルコンの目覚め
――――翌朝。
驚くべきことが起きた。
「うにゅぅ……おはようでち」
「おはようなの」
目を覚ました幼児と幼女の大きさが違う。正確にはハルきゅんが7歳児になってないか?
「おはよう……ハルきゅん、リブたん。ちょっと確認したいんだけど、ハルきゅんおっきくなってない?」
「説明しよう」
いきなり現れたのはアダマンタイトの精霊だ。
「いやお前不法侵入」
「違うわぁっ!……その、お前の精霊選びのあと、トロピカルバナナ一世に叱られてしまってな」
あー……確か父ちゃんはアダマンタイトを選んだんだっけか。
「……大人気なかったことを反省しよう。それに貴様がやり遂げたことに私は感服した」
アダマンタイト……!傲慢なやつかと思いきやちゃんと謝罪と感服ができるなんて実はいいやつなのかもな。
「私もよおおぉっ」
さらにミスリルビッチが増えたんだけど。多分魔王四天王の誰かを選んでいるはずだが不法侵入には変わらんだろ。
「てかやり遂げたことって?」
「金属の進化だ」
「え……?」
進化……とは?鉄が鋼になったり、合金で強化されて別の金属になったり……とかだろうか?
「我々金属の精霊たちは人間や魔族といった人類に使われ加工され、磨かれることで進化する」
それは地球でも同じ。金属の進化は人類の進化と切っては切れぬ縁。
「オリハルコンが今まで幼児のままだったのはオリハルコンが加工もできず誰も扱えなかったからだ」
「つまり進化ができなかったのか」
それに加えてアダマンタイトやミスリルは世界のスリートップ金属として進化したから大人の姿。ヒヒイロカネは武器本体と言うよりも装飾品枠としてだからちょっとばかりボクッ子卒業できてないんだな。
「だが貴様は何百何千年と成し得なかった進化を実現して見せた。オリハルコンを鈍器として見いだし、さらにはマーカーで装飾、シールドに加工して見せた。剣や槍などの加工とは違うがそれもまた違った意味での加工だ」
そっか……現代の剣や槍に加工することだけが加工じゃない。何たって昔は竹や木の棒に尖り石や金属の欠片をくくりつけて使っていた。
「そっかぁ……あれがねぇ。だからハルきゅんも成長できたんだな」
やってみて良かったかも。
「成長したでち!」
うんうん、相変わらず口調がかわいいから一生溺愛し尽くすと今再認識した。
「じゃぁもしかしたらモリブデンも進化ができるのかな。モリブデンも異世界特有の金属だろ?何かできないかなぁ」
「わたちも、たのちみ」
だ~~よなぁ~~、リブたん。
「いや……その、トロピカルバナナ二世よ」
「ん?何だ、アダマンタイト」
「モリブデンは他の世界にもあるぞ。多分召喚者や転生者がいた世界にも……」
「……え?」
まさか地球にもあるのか――――っ!?
モリブデンが地球にもある……それは半分マダガスカル人の俺が魔王子として転生したことよりも驚きの事実であった。
――――その後、地球からの召喚・転移者の物理チームによりモリブデンの研究が進められ、さまざまな活用法が進められた。
結果すくすくと育つふたりの幼児……は日本で言えばもうすぐ小学3年生くらい。
ふたりの成長を和やかに見守りながら、勇者が魔王城に就職する世界は優しく営まれていく。
【本編・完】
――――いや、結局トロピカルバナナて何やねん!




