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⑦鈍器☆シールド



――――迫り来る凶刃。しかしながら俺には取って置きがある。


「オリハルコン製鈍器☆シールド!」

バキンッ!


振り下ろされたナイフが粉々に粉砕される。


「な……何でよおぉ……」

薄暗がりの中武器を失いへなへなと崩れ落ちるのは聖女チェリー・ポップピーアアーメだった。


「俺はオリハルコン使いのトロピカルバナナ二世。つまりオリハルコンさえあればそのようなナイフはただのおもちゃにすぎない」

俺が掲げたのはオリハルコンの延べ棒を木に取り付けたシールドだった。


「うそ……オリハルコンは加工ができないはず!シールドなんて作れないはずよ!?」

「はっ。何を言っている。加工ができないからと言って接着剤でくっつかないとは言ってない!」

そう、接着剤は有能であった。こうしてオリハルコンのシールドまで作れちゃうっ!


「卑怯なっ」

「卑怯はどっちだ魔王子さま俺の寝所を狙いやがって」

次の瞬間寝室の電気がパッと煌めくと魔王パパ、魔王妃母、俺のスィニョリーナ・クレナイ姉さん、勇者エイト、他の魔王四天王たちが乗り込んでくる。


「何故……っ、バレていたの!?」

「お前のファミリーネームを聞いたときから分かっていた。お前が先代勇者グレッグ・ポップピーアアーメ・フタマティアと王妹エカチェリンダ・ポップピーアアーメ・ネトリームヌスの娘だとな」

いきなり呪文のようなものを告げて済まない。分かりやすく言えばコイツは先代勇者と王妹の娘だ。魔王国ではものっそい嫌われていると言うことがポイントだ。


「そんな……っ、分かっていて何故」

「子に罪はない。たとえお前の親父が二股した挙げ句、王妹と結婚して地位と名誉を得つつも先代聖女の身体だけを迫って逃げられたとしてもなぁっ!」


「うそよそんなふしだらな!私はお父さまから魔王に拐われたと言う先代聖女さまのことを聞き、救出すべく勇者さまと旅立ったのよ」


「いや……私は自らシュヴァルツの元に来たのよ。さすがに先代勇者は平気で二股してるし、勇者特権とか意味の分からないことを言うし、女に身体だけ求めるなんてさすがにちょっと」

そう告げたのは母ちゃんである。


「え……?先代聖女さま?」

聖女が驚いたように母ちゃんを見る。


「そうね。でもその娘には罪はない……と思って魔王城滞在は許可したけれど、さすがに息子を狙うのはないわ。ギルティよ」

「そうだなあ、ハニー。さすがにもう許可は出せんぞ」


「……と、言うわけでさよならだ」

「ま……待ってよ!私メインヒロイン枠よね?聖女ってそうよね?一度主人公の命を狙っても改心して仲間になるエンドはないの?」


「は?主人公の命狙ったり仲間のふりして裏切ったりするような女はヒロインにはいらねぇんだよ!男の子はかわいい女の子とか父親が二股クズ勇者だっつー辛い宿命背負ってるとすーぐ優しくしちまう!許してメインヒロイン枠を与えちまう!けど俺は……」

「な……何なのよ」


「お前のことが全くタイプではない!」

「……」

そう、結局はこれなんだよ。かわいくても辛い過去を背負っていても、主人公がメインヒロインに選ぶかどうかは……結局は好みかどうか。


強いて言うのなら俺は……おっぱいのでかい年上のお姉さんが大好きだ!


項垂れながら魔王国を追い出される聖女。撤収するみなの中で、クレナイ姉さんが見てとベッドの上を指差す。


「かわいいわね」

「んもう、ハルきゅんとリブたんったら~~」

ベッドの上ではふたりの精霊が仲良くすぴすぴとおねんねしていた。リブたんったら、姉さんに付いてきたけどハルきゅんがすやすやおねんねしていたから一緒におねんねしたくなったのかなあ~~?


「もしよければ姉さんも、どうっすか」

「んもう、ダメよ」

「けど……っ」


「サ~~ギ~~リ~~?」

びっくん。

みんな撤収したと思っていたのだが、俺の真隣に般若の笑みの母ちゃんがいた。


「いいからアンタはちびちゃんたちの面倒見てなさい!お兄ちゃんでしょっ!」

「……はい、すんません」

その夜は撤収していく姉さんに泣く泣く手を振り別れたが、幼児ふたりのあどけない寝顔にたっぷりと癒された俺だった。



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