⑤その聖剣の名前は
いつもの魔王子の朝。ハルきゅんが眠たげに隣でもぞもぞしてくれる素晴らしい朝だ。
「サギリ……事件だ!」
「何だいきなり」
侍従たちが平然と朝の支度をする中、エイトが息せききってやって来る。
「聖剣がっ」
「ん?どうした?確か前にオリハルコンで粉砕しなかった?」
「その、打ち直しが完了したんだ。ほら」
と言って聖剣を見せてくる。
「いやおい、魔王子のベッドの傍らで聖剣出すなよ」
お前が魔王城に就職してなかったら完璧にしょっぴかれてるかんな?
「ごめん。でもこの聖剣、悪いやつじゃないんだ」
『聖剣ではない!我が名はシャイニング・グランドクロス・エクスカリバー三世だ!』
「え……?しゃべった?この聖剣」
『シャイニング・グランドクロス・エクスカリバー三世と呼べ!』
「そうなんだ。しゃべるから使いづら……でも命あるものだからな」
「そうか、エイトったら。日本人特有の付喪神的な思想からウザくても側に置いてやってるとは。ぐす……っ、お前いいやつだな」
「サギリ……!」
『いいやつが無視すんじゃねええぇっ!』
「うにゅう……おみみいたいでち~~」
はっ。聖剣の大音量にハルきゅんがもぞもぞと起きて辛そうにしている。
「おいこら聖剣」
『シャイニング・グランドクロス・エクスカリバー三世と呼べ』
「ハルきゅんの眠りを妨げるとは許せん!この鈍器オリハルコンで!貴様を木っ端微塵粉砕破壊してやろうっ!」
『ヤヤヤヤヤメロオオオォッ!また俺を砕く気かあぁぁっ』
「ああそうさ。この俺の前でハルきゅんの眠りを妨げた貴様の運の尽き!刃を粉砕して生きているところを見るからに……コアは柄に埋め込めれたその青い宝石か?」
『ひ……っ、何で』
「数あるファンタジーに於いて……そう言うものだからだ!さ~~あ、覚悟しろぉっ!おしゃべり聖剣!」
『ひっぐ……しゃ……シャイニング・ぐっぐぐぐグランドクロス・えええぇエクスカリバー三世……なのに』
「関係ねえよ。今回はコアまで粉砕するから」
『ギャアァァァァッ』
「うにゅう……さぎりおにーたん……でち」
「ハ……ッ!ハルきゅん?」
「みんな……なかよく、でち!」
はうあぁぁぁぁっ!!ハルきゅんのその一言に、全てが浄化されたようだった。俺たちは冷静に立ち戻り聖剣は命が繋がった。
「そんで?何が問題なんだ、エイト」
「実は聖剣がなおったらなおったで本名で呼べと迫ってくるんだ」
物理と言うよりも精神的にだな。
「でもあんな長い名前覚えられない」
『シャイニング・グランドクロス・エクスカリバー三世だ!余裕だろ!』
「ぶぁっかもおおおぉんっ!」
『ひぃっ!?』
「長い名前と言うのは時にカッコいい。中二病作者と言うものはついついキャラクターに長いカッコいい名前を付けたがる。しかしながら作者ですらちゃんと覚えていない。俺の本名は覚えているから直入力だがな」
因みに聖剣の名前は全部コピペです!
「ほら、お前全部コピペだって」
『ぐおおおぉっ!ならば何故我はこんな長い名前で生まれたのだ!?』
「そんなの決まってんじゃねえか!所詮は……ネタだ!」
『そんなあえぁぁぁっ!ならば我はどう生きれば……』
「とっとと愛称付けてもらえってことだ。俺も長い名前だが『トロピカルバナナ二世』と国民に親しんで呼んでもらえることが嬉しい。さらに親しいものには『サギリ』と。だからこそお前も愛称で呼んでもらえ。きっとその真の価値が分かるぞ」
『そう……なのか』
聖剣がエイトを見たようだな。
「そうだな……じゃぁ……エスクカリバーで!」
まんまだが、聖剣が何気に照れているような気がするのでまあいいかな?
「みんななかよちでち」
「なかよし!」
いつの間にかハルきゅんの隣で楽しそうに座っていたリブたん。姉さんも微笑ましそうに見守っている。あーん、かわいいなあ。
それにしても……しゃべる剣かあ。刃を粉砕されても生きているとは。うん……?そう言えば武器って刃になる金属だけじゃなくて、木や他の金属、他の素材と合わせているんだよな。
俺もそれで……何かできるだろうか?




