④家宝オリハルコン
――――南国の穏やかな気候、しかし魔法で涼しい魔王城の夜。そんな夜、事件は起きた。
「はっうあぁぁぁ――――っ!!」
俺は絶叫した。
「魔王子さま!」
「どうなされましたか!」
近衛騎士たちが飛び込んでくる。
「今日は俺も宿直なんだサギリ!」
「早まらないで!まずはお姉さんに相談なさい!」
エイトと姉さんまで来てくれたのか!
「みんな……聞いてくれ」
俺はハルきゅんをお膝の上にちょこんと乗せる。
「ほら、これだ」
そしてオリハルコンの延べ棒を見せ付けた。
「ハルきゅん、おなまえ書いたでち!」
そう、延べ棒の表面にはハルきゅんのサインが書かれている。まだまだたどたどしい幼児の字。しかしそれがいい。
どんな達筆と言えど幼児が頑張って書いた字にはかなうまい。
「あーんっ、もう家宝にするううぅっ!」
脚をバタバタさせても完璧には表せないこの高揚感。
「もう、あなた、ますますオリハルコン狂が悪化しているわよ」
まさにハルきゅんコンである。でも俺はそれが何よりも心地よい。
「けどオリハルコンって加工が不可能……だったはずでは?どうやってサインを書いたんだ?」
「いい質問だ、エイト。使ったのはこれだ!」
じゃじゃーん!
「油性のマーカー!」
これは……どんな世界でも最強なのだ。お名前を書くと言えばこれだろう!
「え、ありなの?それ」
「あったり前だ!油性に書けぬ名前などない!」
※あくまでもトロピカルバナナ二世個人の意見です。
「油性のマーカーが生み出した絶対油性領域はこうして家宝となるんだ」
「でち!ハルきゅんは家宝になるのが夢だったでち!」
「そうだったの?ハルきゅん」
「そうでち。でもオリハルコンは武器に加工できなかったから家宝になれなかったでち」
それは聖剣とか伝説の杖みたいな感じの家宝かな。
「武器じゃなくたっていい」
「でち……?」
「ハルきゅんのお名前がここにある。ここにハルきゅんへの愛が溢れている。愛があるから家宝が生まれるんだ」
「愛が、あるからでち……っ。サギリおにーたん、だいしゅきでちっ!」
「あんっ、俺も~~っ!」
ハルきゅんをぎゅっと抱き締める。
「そっか……愛があれば」
姉さん?
「リブたんも、家宝になれる?」
姉さんの足元にはいつの間にかリブたんが顕現していた。
「もちろんよ!モリブデンにもリブたんのサイン、書こっか」
「うん!」
姉さんがリブたんを優しく抱き締める。こうして愛と共に家宝が生まれ行く。
「ぐふっ」
尊すぎて俺……どうにかなりそう。バタンとベッドに仰向けになればハルきゅんが胸元をぽふぽふしてあやしてくれて……100億倍萌えた。
こうして家宝は……伝説になるのだ。




