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異世界より戻りし男の苦悩~むこうでは手練れの傭兵でした~  作者: クワ
第四章

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ホトルスの制作した魔法映像

 現代、信長とサニアといる時間



 信長の家で流れるミニシアターは、オープニングらしきものが終わりを告げて本映像が始まる。


「なんか、現代のテレビを見ているみてぇだな」

「ホント、作りが紀元前じゃないよね」


 中年の男性が、店女性の店主に話しかける。

「こんにちは、これはなんですか?」

 そんな感じで質問しているのだろう。

 女性が戸惑いながら説明をしだす。いかにもアンタ知ってるだろって顔だった。

 画像の下の方には神聖文字ヒエログリフの字幕が映し出されている。


 画像の男性は撮影点に向かって歩き出す。画像を見ている信長たちから見たら、画面の撮影者がゆっくりと後ろに下がり、同じ速度で男性がこちらに向けて歩いてきているような構図だ。

 何かしらの音楽が鳴り、その後画面が停止した。

「ん、映像の損傷か?」

 古い映像にあるのだが、魔力が尽きた所が途切れてしまう事がある。

 信長とサニアがそうこう話している内に映像が動き出す。


 男性はにっこりと微笑み、よくわからない道具を撮影点にむけて見せてきた。

 その後すぐに画面が切り替わり、映像が始まる。

「なんか、クイズみたいだね」

「俺も感じた。今は何か答えを説明しているみてぇだよな」


 似たようなクイズらしきものが二度ほど続くと、突然画面が切り替わり若い女性が腰から顔までの高さでスクリーン一杯に映し出された。

「なんだろ、ビンを持ってるよ?」

 女性は液体の詰まった瓶を両手で持ち、微笑んでいる。

「あっ、使い始めた」

 撮影点が女性の顔にズームする。

「なんだ、使い方の解説か?」

 再び引きの画像に戻ると、言葉が流れる。当然意味は分からない、ただ何かを訴えているというのは伝わってきた。

「なんだかCMみたい」

「CMが始まったのってラジオが始まった後だぞ、テレビは第二次世界大戦後とかそれくらいだぜ」

「でも、魔法の映像だから、そっちは昔からあったかもしれないじゃん」

「……」


 中年の男性が、色々な場所を案内していく。それはまるで遺跡巡りの旅番組の様だった。

「ねえノブ、当たり前だけど新しくて壊れていないよね、前に行った遺跡」

「そうだな、写しているのが当時だしな」

 映像の中では、壁画のレリーフに書かれていたような服装をした男女が躍動していた。


「この人はどんな気持ちで魔法で映像保存したのかな? 誰にも見られないかもしれないじゃん。それでも何のために苦労して録画して編集してってやったんだろう?」

「どうしても見せたいヤツがいたんじゃないのか?」

「そうだよね。誰かと約束でもしたのかな? 無事戻れたって伝えるためとか……」


 ナイル川らしき川が洪水を起こしている画像が音楽と共に映し出される。

 そこから流れるように切り替わって種付け、雑草狩り、収穫と映像が映し出される。

「これは、農業の一年かな?」

「ひょっとしたらこれもCMだったり」

「たしかに、そんな音楽!」


 魔力の残存量から映像も終盤に差し掛かったことが分かる。


 アブシンベル神殿


 まだ、日は明けていないようで周囲は薄暗く、松明を掲げている者が見える。

 神官が祈りを捧げ、兵士が彼らを守り異分子の侵入を排除する。

 その手前には幾千という民衆が詰めかけて、思い思いに祈りを捧げている。


「あっ」

 東から太陽の船が黒い星空をゆっくりと漕ぎ出す。

 船は周囲を徐々に薄紅色に染め上げ、徐々にその姿を現す。

 アメン・ラーの微笑みが徐々に地上に注がれると、その束は徐々に神殿の奥へと進んでゆく。

「おお」

 光が中の像を照らすと、神官、兵士、民衆隔てなく祈り始めた。

「なんか……すごい」

 言葉にならないほどの神々しい空気が映像上からも伝わる。


 その映像と共に、音楽が流れ出す。

「エンディングってとこかな」

「多分ね」


 音楽が終了し数秒後に魔力が切れ映像が途絶えると、何とも言えない清々しい気分が沸き起こりみなしばらくはその場で余韻に浸っていた。


「石倉さん、よくあのテレビから魔法を見つけられたよね」

 サニアが感心した言葉を発すると、石倉は説明を始めた。ただいつもと違うのはしんみりとした口調で語っていたことだった。

「魔法の映像保存というのは、スマートフォンで読み取れるQRコードの魔法版みたいなものだ。スマートフォンの代わりに魔法で読み取るという違いがあるだけだな」

「わかる人間が見れば一発で分かるのだが、当たり前な事なのだが知らない人間は見ても気付けない。ある意味暗号的に使えるものだな」

「そう、わかる人間が見れば、な」


 信長とサニアは石倉にも事情があると察してこれ以上この事に触れるのを控えた。


 石倉は先ほどまで画面があった場所に向かい小さく言葉を吐いた。

「遅れてすまない。約束は守ったぞ。お前らしく素晴らしい映像だった」

「さらばだ、ホトルス。来世逢おう!」

 石倉は視線を上げた、その脳裡にはホトルスと見た天に連なる遺跡の星空が鮮やかに映し出されていた。

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