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異世界より戻りし男の苦悩~むこうでは手練れの傭兵でした~  作者: クワ


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昨日の映像の男

 日が昇り、未明に見た幽霊の事をオーナーに伝えると、長嘆息を吐き「そうですか」と重い口を開いた。

「ただいま」

 家に直帰してシャワーを浴びていると、汗と共に突き抜けていった幽霊の一部が洗い流されていくような不思議な感覚に陥る。

「朝ごはんはまだかにゃ」

「あ、そうだな、ごめんな」

 信長は棚から猫缶を取り出すと素早く開封してカランカランという音と共に中身を器に掻き出す。

 シロワカは少しばかり不服そうな態度を見せるも器に顔を入れて食べ始めた。

「サニア、メシはどう――」

 お風呂より鼻歌が聞こえてきた。

「寝る前に何か食うか」

 棚の中にあるシリアルを取り出して器に盛り、牛乳をかけてゆっくりと口を動かした。

 バリッバリッっと賑やかな咀嚼音とともに空腹が満たされと同時に昨日の事が頭をかすめた。

「そういえば、幽霊の写真はちゃんと写ってるか?」

 以前、そこにいた者や在ったものが消えるなどの話を聞いていたため確認をかねてスマホをいじり始めた。

「まずは写真だな」

 後姿が薄ぼやけながら写っている。

「……映像は」

 こちらもおぼろげながら写っている。

「ビデオを見ていると半透明だからなのだろうか、周囲の常夜灯などの光を反射しておらず、物体として存在していないものとしてそこにあり、それをどう表現していいか頭の中で色々と錯綜しだす。

「あー考えるのやめやめ」

 トイレの鏡の所、男の生気のない横顔が見えるところまで進むと、背筋にゾクリとしたものが走った。

「――え、ええ」

 その男は顔は正面を向いていたものの視線だけが横目でこちらに向けられていることに気が付いて、どうしていいか分からない恐怖に襲われた。

 物理的に対応できるものとは違う恐怖心。

 多少湧き上がってきた眠気も一気に吹っ飛ぶ。

「うっ」

 素早く後ろを振り返る。

「まあ、いないよな」

 安堵のため息をついてスマホをテーブルに置いた。

 それでも、家に着いてきてるような気にとらわれて落ち着く無く周囲をうろついた。

「……どうしたんだニャ?」

 不審そうな視線をとばしながらシロワカが声を掛けると、信長はシロワカが神かもしれない存在であったことを思い出し昨晩の一件を話始めた。

「見せてみるニャ」

 再生が一通り終わると「もう一度だニャ」と数回繰り返し再生させた後、シロワカは顔を上げて信長に向けた。

「お化けとか幽霊とかではない気がするニャ」

「妖怪とかでもない?」

「多分違うニャ」

 そこでほっと肩を撫でおろし、恐怖心から解放された。

「シロワカ、夜勤明けだからこれから寝るので後はよろしく」

「待つニャ!」

 強い口調で引き留められる。

(さっきの映像に何かあったのか?)

「な、なに?」

 恐る恐る返事を返すと。

「お昼用意するニャ」

 信長は映像の件ではなかったことに安堵をし急いで引き出しを開いた。

「なんの缶がいいかな」

「今日こそチャ〇チュールがいいにゃ」

 脇の下から素早く体をねじ込んでスティック状のブツをくわえて引っ張り出す。

「まあいいか」

 新しい容器を出すとチャ〇チュールの中身を絞り出し、その横にサラダ用ササミを数切れ入れて机の上に置いた。

「シロワカ、用意したぞ」

「にゃーん」

「足りないかもしれないからササミもちょっと追加しといた」

「ありがとにゃん」

「じゃあおやすみ」

 そう言って布団へもぐりこむ。

「あっカーテンを閉めないと」

 外の明りが直に差し込み寝られるものではない。

 サーーー

 パチッ

 電気を消すとカーテンで太陽光が遮られたのもあり、部屋の中は薄暗くなった。

「おやすみにゃん」

 シロワカはわざわざ布団のそばまで声を掛けに来て、ぺろりと信長の頬を舐めた。

「おやすみ」

 眠気がしばらく来ないため、寝返りを何回か打つといつの間にか眠りに落ちていった。

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