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2人を隠す雪模様

「ユウ。ご飯できたよ。」

 奥からセレナの声が聞こえる。俺があいつについて来ないのかと聞いて以来ずっとどこに行くにもついて来て挙げ句の果てには俺が買った家にも住み着いて毎日毎日俺の世話を焼いてくる。でもそれも悪くないと思う自分がいた。しかし、あいつもわかっていると思うが本来悪魔とエクソシストは決して交わらない。例えあいつが言っていた通り俺があいつと一緒にいた過去があったとしても。

「早く。食べちゃうよ。」

 セレナが再び俺を呼ぶ。俺は考えていることを中断して椅子から立ち上がる。

「今いく。」

 奥にも聞こえる音量で返事を返しリビングに向かう。早くあいつが俺から離れていかねーかな。そんなことを思いつつ。しかしその想像をすると胸に棘が刺さったような気分に襲われた。俺はその痛みを少し不快に思った。



 リビングに着くとセレナが腰に手を当て怒っていますと言わんばかりに頬を膨らませている。

「なんで来るの遅かったの。」

 ジト目になり声も幾分かは不満そうだ。

「別にお前のことを。」

 考えていた。その言葉を口にせず喋ることを止める。何を言ってるんだ俺は。なんであいつのことを考えているなんて。セレナの方を向くと先ほどまでの不機嫌さはなくなりどことなく嬉しいと言った感じだった。

「私のことが何だって?」

 セレナは言葉の続きを催促する。

「何でもない。」

 俺は強引に会話を断ち食卓へ向かう。

「食わねぇのか?」

 俺は食卓に着きセレナへ問う。

「食べますぅ。」

 セレナは急いで食卓に着く。俺はその様子を見て食事を口に運ぶ。固い黒パンと質素なスープ。あいつがここに来てからずっと作っている手料理。こんなに贅沢ではなく僕の貧乏臭い食事だが俺はこれを喜んで食べている。何故かはわからない。あいつに聞いても何も答えない。しかし予想はつく。あいつと過去に一緒にいた。それが関係しているのだろう。しかしそれを確かめる術はない。

「いただきますしてからでしょ。」

 セレナが掛け声をかけずに食べ始めた俺を見て注意する。俺にはそれをする義理は無いので無視して食べ進める。セレナは一向に掛け声を始めない俺を見て一つため息をつき。

「いただきます。」

 掛け声をかけ食べ始める。俺はセレナは食べ始めるのを見て食べる速度を落とす。

「合わせてくれるんだ。」

 セレナは俺が食べる速度を落としたことに気づく。

「ふん。合わせんと俺が洗う羽目になるからだ。別にお前のためじゃ無い。」

「素直じゃ無いね。」

「うるさい。」

 食事は進む。セレナが食べ終わる時に俺も食べ終わるように食べる量も調整する。セレナが食べ終わるのと同時に俺も食べ終える。食べ終わった食器を持ち台所へ向かう。

「持って行ってくれるんだ。ありがとう。」

 セレナは俺の行動にいちいち感謝してくる。俺はその感謝の言葉を無視し台所に食器を入れ、近くの窓を開けそこから家を出る。

「こらそこから出ない。」

 後ろからセレナが俺を怒っている声が聞こえる。俺はそれを聞こえないふりをした。



 家がある裏路地から少し出て大通りへ出る道へ向かう。その道は雪で行手を塞がれ簡単に入れないようにしている。王国が裏路地に住んでいる浮浪者などを大通りへ出さないように臭いものに蓋をする様に道の雪をはいてはここへ捨てる。無論、批判殺到だが俺はこれを好印象に思う。俺がここにいる事がバレないからだ。俺の存在を隠すように雪はここに降り積もっている。そんなくだらない事を思いながら雪の山をかき分け大通りへと出た。

 そこには、もう見飽きた光景が広がっていた。平和ボケをした道をゆく者の表情。浮浪者を見下し早く死なないかと口にする悪意がある者。そしてそれが行き交う人の流れ。俺はそれを掻き分け、目当ての場所へと向かう。

 そこには黒い渦がある。それは悪魔の抜け道と呼ばれる悪魔にしか見えない通り道だ、ここを通じて様々な世界何より悪魔達が住まう魔界へと移動できる。俺はそれに手を翳しかき消した。エクソシストが良くやる行為だ、見えてはいないが全体を浄化して悪魔の移動する道を消す。なぜそんな事をしたのか自分で理解はできてなかった。ただ、セレナが他の悪魔に害されるのがなんとなく気に入らなかったからだ。目的を済ませた俺はその足で人の流れに身を任せて大通りを進んでいった。

 

 

 進んでいった先は大きな商店街がある。ここはとある男が一から気づいた場所らしい、そんな事はどでも良いが。俺はその商店街を歩いていると一つの装飾品が目に入った。

 それはダイヤが真ん中にあしらわれ、それを金で作られた花で囲われている意匠が施された指輪だ。一つフラッシュバックしたものがあった。指輪と幼い少女。少女はセレナを幼くした感じを覚える故にセレナの幼い頃だろうか。幼いセレナが大切に指輪を包んでいた。その指輪と同じ意匠なのだこの指輪は。そして今のセレナはこの指輪を付けていない。それに疑問を覚えた。

 俺は何かに背中を押されその指輪を購入した。

 俺はもう忘れたフリをするのを辞めた。

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