1話
『藤谷葵』として、初のコンテストに応募したお話。
『藤谷葵』として活動を始めた第一作目は、コンテストがきっかけだった。
コンテストのテーマに、心奪われた。
テーマは『叶わなかった恋』。自分の心の中にずっとくすぶり残っているほんのりと暖かな恋。
それを四千文字のエッセイとして書くことにした。
昔のことなので、記憶に自信はない。嘘を書きたくないので、必死に思い出し、分かる範囲で書いた。
最後の方は無理やりに話を終わらせた感じで、なんとか四千文字に達したが、自分的にはお粗末である。
応募した結果、落選したが、出版社から電話がかかってきた。
「コンテストには落ちましたが、この作品は出来がいいです。長編にして出版しませんか?」と……。
この時、病状は良くなかったことと、四千文字程度でも無理やり書いたのに、それを十万文字に膨らませるのは無理がある。
丁重にお断りをした。
その後も、電話が一度だけかかってきた。
「何か今、長編を書いていませんか?」と。
今は体調が悪いので特に書いていませんと答えたら、それ以降は電話は来なくなった。
まあ、自費出版をメインとした出版社だったので、自費出版をさせたかったのだろうけど。
自費出版には、私調べでは、三百万円くらいかかる。お金欲しさでコンテストに出したのに、そんなお金はない。
そもそも後から分かったことだが、自費出版は基本的に赤字。余程のベストセラーにでもならない限り、黒字にはならないらしい。
それを知ったら、電話が来なくなったことにほっとした。
この作品を書いたことから、今まで病気で止まっていた私の時間が、動き出したような気がした。
読んで頂きありがとうございます。
『叶わなかった恋』をテーマにした作品。
これは、小説投稿サイトにはアップできない作品ですね。
歳バレしてしまいますから(笑)。