人脈を辿っていけば、6人目までにどんな人とも繋がれるらしい
ここはクロの部屋。そこら辺に教材が散らばってる汚い部屋だ。
クロはLAINを開く。スマホには道端の猫のアイコンと、新幹線のアイコンが映っている。
クロは重い口を開く。
「皆、ありがとう。人脈作戦を手伝ってくれて。よく頑張ってくれた」
結果からいうと芳しくなかった。そりゃ人脈辿っていけば、いつか有名人にたどり着けたりするんだろうけど、知り合いの知り合いには、流石にお願いを聞いては貰えなかった。
現実は上手くいかないもんである。2人も同じような状況らしい。つまり、
「人脈作戦は失敗ってわけだ。」
これで終われば楽だったんだがな。
だが、手はまだある
「じゃあ次はバレバレの住所特定だ。皆、やるぞ!」
「やりますよ!」
「努力はするじゃけ」
頑張った。だが、
…結論から言うと、なんの成果も得られなかった。有名人なのだから情報の一つや二つはあると思った。どうやらその考えが甘かったらしい。
「猛獣使いのクロ、バレバレはトルッターのお願いには答えてくれましたか?」
俺は顔振る。
「何も反応なしだ。既読もつかねぇ。」
今考えてみれば、バレバレ程の有名人相手にトルッターをしたところで、同じようなのがいっぱい来てるんだから見るわけないだろう。もしくは見つけれないだろう。
「…やれることはやったか?」
正直やれることはやったと思う。ここまでよく頑張った。
「とりあえず、明日が来るまで次の今日に何するかの計画を立てますか」
「1日ぃも、無駄に出来ねぇからのぉ」
俺たちは兎に角話し合った。だっていつ今日が終わり、今日が始まるのか分かんないんだから。
スマホの左上の表示は23:58となっていた。
俺は髪をかきあげる。
「なるほどなぁ。結局トルッターを見てもらうこと前提になるのか」
どんな事をやるにせよ、バレバレの目に止まらなきゃ意味が無い。
スマホの表示時間が、24:59に変わる。
「つまりですね!明日は兎に角トルッターしまくって、見てもらえるのかを確かめましょう!」
「もし見てぇ貰えたんならよう、出演できる条件を確かめて再現可能にすりゃいいわけじゃ」
方針は見えてきた。それに、
「バレバレは今日の23:00から配信してた。配信してないっていう最悪の可能性は免れたわけだ」
ちなみに配信内容は、有名人配信者Aの詐欺行為についてだった。
「運がいいのか悪いのか分かりませんねぇ」
「不幸ぉ中のサイワイってわけじゃ。」
今日、普通の動画が上がってたら泡吹いて倒れてたわ。まじで一安心よ。
まぁ、安心している場合じゃない。打てる手は打たないと、
「トルッターする以外になんか明日すべきことってあ……」
突然、クロの声が途切れた。
スマホの表示は0:00に切り替わっている。
何故だか分からない。何故だか分からないが、俺はこの後の記憶を持ち合わせていなかった。
急に喋らなくなったクロに2人は心配していた。
「……!?大丈夫ですか!?」
「これぎぁ、噂のぉ寝落ちもちもちってことじゃな」
「そんなこと言ってる場合ですかぁ!」
「じゃぜ。家に突撃じゃ。無事であれよ、猛獣使いのクロ……」
クロの無事を祈る2人。
もちろん、これはクロの預かり知らぬその後の緊迫した状況であった。
────
それは突然だった。特に、今回に関しては特に。だって、さっきまで知ったかぶりの佐藤と、ギャンブラー高橋と話してたのだから。
真っ暗な世界で何かが頭に響く。
──バレバレの動画に出演せよ
と。
何度も何度も響き渡る。
めっちゃ気持ちわりぃ……
別にそんなに言わなくたっていいのに……
──バレバレの動画に出演せよ
────
チリチリチリチリー!
目覚ましがなった。
直ぐにスマホをスワイプして、アラームを削除した。スマホの画面には6月10日(月)7:00と映っている。
「夢ならばどれほど良かったでしょうなぁ~」
苦いレモンの味を噛み締めながら、気持ちを切り替えて、今日のやる事を思い出す。そうだ、今日はトルッターをやりまくらないと。
スマホのアプリ、トルッターを起動する。そして、バレバレにdmを送った。
「あの有名人配信者の関係者です」
っとよし。
ん?あの有名配信者Aとは誰かって?
前の世界で、バレバレに詐欺行為がバラされた有名配信者Aだ。
これなら見かけた場合、必ず既読をつけるだろ?我ながら天才だ。
俺の今日やる事は、すなわち関係者を装い、バレバレのトルッター閲覧時間の解明、あばよくば関係者として動画出演である。
そうやってやる事の明文化をしていると、いつものように下の階にいる母親から声がかかった。
「クロ!早くしないと遅れるわよ!!」
はーいと答えてリビングに向かう。
向かってる途中はいつものようにカレーの匂いが漂っていた。
リビングに着くと、そこには椅子に座って朝食を食べている妹の姿がある。妹は降りてきた俺に気づいたようで、俺に手を振ってきた。
「おはよ〜」
3連続も気分のいい妹を見れるなんて、俺は恵まれた兄だぜ。
「おはよう」
と返して椅子に座る。そのままカレーを食べ始めようとしたら、
「ちょっと待ってよ!お兄ちゃん!」
「うんはぁ!?」
妹が椅子から立ち上がって向かいの席から俺の肩を掴んできた。
めっちゃ驚いた。驚きすぎて、妹の方が驚いちまったようだ。
「どどど、どうしたのお兄ちゃん!」
「いや、いきなり掴まれたら誰でもあんな反応するだろ!?」
心臓止まるかと思ったぜ。心臓の自律性に助けられた……
「ご、ごめんねお兄ちゃん」
「いや、全然気にしてないよ。むしろ嬉しいってもんよ!」
これは、これまで見たループの中とは違う妹だ。いや、大なり小なり皆違ってたか。
皆違って皆よしだな。
「あ、ありがとね。そ、その、えーと、」
妹は人差し指の先端どうしを合わせ、モジモジしてる。
なんかはっきりしない感じだな。
……ん?あ、確かカレーが好きなんだよな俺の妹。2回目のループ知識が役立つぜ。
この感じは、多分、カレーが好きなこと告白する流れなんかな。
「どしたん?話聞こか」
話を聞こうとした時、妹の様子が少しおかしいことに気づいた。
「ふ、ふざけないでよ!……えーと、そのいつものお兄ちゃんなら、なんで私の気分がいいか聞いてくるかなぁって」
ん!?いつものお兄ちゃん!?
……まさか、こいつ……。確かに思うことはあった。なんで俺だけこんな目にあうのだろうかと。
確率的に相当天文学的な数字なのだ。俺がこのループを経験する確率は。だって、こんなこと聞いたことないもんな。
俺は悟った。どうやら、妹もループしてるようだ。
俺は妹を安心させなければ。
「安心しろ。このループはいつか終わらす」
「……?」
どうやら少し安心させられたようだ。この世界でループを終わらせることが出来るかは分からないが、最大限足掻いてやるぜ。
「ほったん、いつも通り学校に行ってきていいぞ。俺が何とかする。何回か回数は必要かもだが、必ずなにか成し遂げるよ」
これで、何回もループしちゃいけない要因も増えたな……とか思ってると。
「よく分かんないけど、ほったんって辞めてよね!たん付けはちょっと恥ずかしいからね!かほって呼んで……」
と、妹と話していたら、母から横槍が入った。
「そんな馬鹿な事やってないでさっさと朝食食べちゃいなさい!」
あまりにも長く話しすぎた。朝食を食べない俺たちを見かけて母親が怒鳴ってきた。
多分会話を聞いていたんだろう。なのに、こう言うって事は母親はループしてないな。
「はーい、ほったんまた後でな」
「だーかーら……、まぁいいけど」
とりあえず、お互い母親の言ったことに従って、朝食を食べ進めた。
朝食を食べ終わってから1時間後、俺は自分の部屋にいる。
学校は?って?
俺にはバレバレのトルッター確認時間を確かめる必要があるからな。学校なんて行ってらんない。
学校休むって行った時は、母親も妹も困惑してた。基本的に学校休むことなんて無いからな。
母親には受験勉強でと、妹には任せろと言っといた。
さてさて、こっからは20分事にバレバレにメッセージを送り付ける単純作業だ。あんまり送りすぎても見られないかもだからな。
っと言うわけで、動きがあるまで早送り!
天国と地獄のbgmを流しとくぜ。
テン!テケテテテン~テケテケテン。
テン!テン!テンテン…………
……
────
13:42。ついにこの時が来た。トルッターに返信が帰ってきたのだ。
計14回メッセージを送ったかいがあったもんである。
このまま、トントン拍子で進んでくれればいいが……。返信のメッセージにはこう書いてあった。
「何度もご連絡ありがとうございます、コレコレです。
ご連絡してくださったのは、今回の配信で何か主張したいことがあるからだと存じます。
つきましては、こちらに関係者である証拠と主張したい事を書いてくださると幸いです。
何卒よろしくお願いします。」
俺はその返信を見て、適当なメッセージ送っただけなのにこんな丁寧に返してもらえるもんなんだなと感心していた。
だが、動画に出演出来るかというと、それは難しいそうだ。だって必要なのが関係者である証拠だ。
流石にこんなものすぐに用意なんて出来ないし。関わりもない。でも、このチャンスは逃しちゃいけない。すぐ返さないと。
「ご丁寧な返信ありがとうございます。関係者である証拠は、個人情報保護の観点からお渡しすることが出来ません。動画に出させてもらえれば、Aさんの詐欺行為について詳しく話すことが出来ます。」
まぁ、こんなもんだろ。何も出せる情報はないんだから深く話しちゃダメだ。とりあえず、動画に出る流れになれば俺は救われる。
兎に角相手からの返信を待つ。こんなに返信を待ち望んだのは、好きな子に告白した時以来である。
思いの外既読は早くついた。あとは、返信だけだ。
あと少しの辛抱だ。
……
おかしい。
何がおかしいって
既読が着いてしばらくしたのに、連絡が返って来ないことだ。
結構誠実な文章を書いたつもりだったのだ。
きっと、バレバレは俺をスパム認定したに違いない。
……この勝負、俺の負けだ。
次は勝つ。
……しばらくて、徐々に気持ちが落ち着いてきた。ちょっと興奮してナイーブになりすぎたかもしれない。
今わかったことをまとめよう。
1つ、13:30にメッセージを送信すれば見てもらえる可能性が高い。
2つ、関係者を装うと、証拠の提出を求められる。応じれなかった場合、既読無視される。
3つ、我が妹、ほったんもループしているのでさっさとこのループから抜け出さないと行けない。
このことを踏まえて知ったかぶりの佐藤と、ギャンブラー高橋に相談しないとな。
とりあえず、2人にLAINしよう。
多分今日は出演できなさそうだけど。
────
空がオレンジに輝き始めた。
この時間が何を意味するか。そう、部活の終わり時である。
とりあえずLINEしてみた。
「2人とも~、この後会議するぞー」
とりあえず、半裸のおじさんのGoodスタンプも追加しといた。
そして、しばらくもしないうちに知ったかぶりの佐藤から返信が帰ってきた。
「僕は今日、プログラミング教室なので遅くなります!申し訳ないです!」
え!?そうなの!?
いや、待て待て。前の世界では、プログラミング教室なんて言ってなかったじゃねぇか!?
とりあえず、簡単な返信をする。
「そうなん?」
「そうですよ!てか、いつもこの日は遊べないよって言ってたじゃないですか!!」
あ、そういえばそうだった気がする。あれ、てことは、前の世界の知ったかぶりの佐藤は何も言わずプログラミング教室を休んでくれたってことなのか!?
あいつ、優しすぎるぜ……。言ってくれれば、全然そっち優先したのに……。
申し訳ないことしたな。知ったかぶりの佐藤にはプログラミング教室にいっててもらいたいな。
「頑張ってこいよ!」
「もちろんですよ!」
じゃあギャンブラー高橋だ。返信が来るのを待とう!と思ったが、すぐに返信は来た。
「すまん、おれぇも用事あるんじゃけ」
と。
みんな忙しいらしい。なのに、
知ったかぶりの佐藤とギャンブラー高橋は何も言わず、俺のために頑張ってくれた。
皆用事があるのに。それを俺に言わないで助けようとしてくれたのだ。
感謝感激雨あられ。略してアーメン。
今思えば、俺はあの二人に頼りすぎていた部分がある。
俺からアイディアを出したことって少なかった気がする。
頼ることは間違ったことでは無いと思う。だが、頼りすぎもなんか違う気がする。
やってやんよ!次の今日に向けて全力を尽くす。
ほったんよ。何回このループがある分からんが、任せてくれよ。解決してやんよ!!