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持つべきものは友だぜ

「……俺、タイムリープしてる」


衝撃な事実を伝えた。


時が止まる。


2人とも唖然としていた。だが、2人は対照的で、知ったかぶりの佐藤は呆れた表情で唖然としていて、ギャンブラー高橋は険しい顔をしていた。


「あの、ゲームのやりすぎですか?なろう系の読みすぎですか?動画の見すぎですか?」


「現代っ子の呆れ三拍子をありがとう。だが、これは事実だ。ギャンブラー高橋が証明してくれる」


ギャンブラー高橋なら期待に応えてくれると思った。だが、以外にそんなことは無いらしい。首を降っていた。


「俺に授業が昨日と同じ内容と伝えてきたことだけじゃ、タイムリープしている証明にはならないじゃけ。タチの悪いイタズラの方がまだ納得出来る」


俺が何を言わんとしているかは理解してくれたようだが


「とりあえず、タイムリープしてるっぽい断片的証拠ならあるってわけですね」


まぁ、最初から信じてくれるとは思わなかったわ。でも、やっぱ信じられない状況っていうのは辛いもんだぜ。


「教科書を火曜の持ってきたのだって立派なタイムリープの証明じゃない?」


お前さんなぁ、とギャンブラー高橋はそれに答える。


「今言った証拠は全部お前さんが仕組めることじゃけ。主体的すぎる。」


えぇとつまり?


「イタズラの可能性が捨てきれないという訳ですね」


なるほど、確かに全部俺が主体の行為だからイタズラで片ずけることもできるのか。困ったな…


ギャンブラー高橋はそんな俺の表情を察したようで助け舟を出してくれた。


「つまり、他の人、お前さん以外の人間がこのタイムリープを証明できれば良い訳じゃぜ」


えぇとつまり?


「いや少しは自分で考えてくださいよ。つまり、何時何分に誰々が何かをすると予言してもらって、実際にその通りになったら信じる他無いって事です。」


なるほど。でもなんか特徴的な出来事あったかな…俺じゃない人がした事か。思い出せ…


「えぇと、今日やる授業の内容じゃだめか?」


「教科書と授業の進み度合いから推測できるじゃろ」


確かに…


何か何か、思い出せ!俺!!


…あ、


クロに電流走る。


「抜き打ちテスト」


「抜き打ちテストですか?」


そうだ抜き打ちテスト!5限の授業でいきなり抜き打ちテストが始まったじゃないか!


「5限かぁ、なるほどのう。じゃあその時に俺たちが信じるか信じないかが決まるわけじゃ」


「まだあと4限あるのか…先は遠いなぁ」


まだ先だが、いずれ信じられる時が来ると思えば安いもんである。


「ちなみに、何かタイムリープするようなきっかけはあったのですか?タイムリープのトリガーで有名なのは死ぬ事ですよね」


「おい、ナチュラルに怖いこと言わないで。…きっかけか。」


多分、あれだ。


「お前らにも話したと思うけど、夢で出てきた謎の声──バレバレの動画に出演せよ──これが関係してんじゃないかなって。今日も同じ夢見たし」


じゃあ俺、夢通りに受け取ったらバレバレの動画に出演しないといけないの?つらぁ。


「お前さん、昨日の俺らはいないじゃけ」


そういえば、前回が無くなってることを思い出した。


道理で反応が悪いわけだ。この世界?世界線?の2人には話してなかった。


「あぁ、詳しく説明すると…」


とりあえず、夢の内容と、違う世界線で話した内容についても話した。


そういえば、ギャンブラー高橋が言ってた期限の懸念が当たってたな。まさか1日とは思わなんだ。


そして話を聞いた後、知ったかぶりの佐藤は安心したような顔つきをしていた。謎である。


「だってタイムリープの条件がはっきりしたじゃないですか!」


知ったかぶりの佐藤が吠える。


バレバレの動画に出演することだよな。いや、別に安心できることじゃなくないか?


「いえ、安心出来ることです。だって普通はタイムリープの条件が分からなかったり、死ぬ事がトリガーだったり、死ぬ事の回避が解除方法だったりするんですよ!!バレバレの動画に出演するだけでタイムリープが解除されて、しかも痛みも何も感じずタイムリープ出来るんですよ!?不幸中の幸い、いえむしろ最高位の幸福です!!」


なんか知ったかぶりの佐藤が興奮してる。ウケる笑。


「そう考えると、死なないんだからこのタイムリープも悪いことじゃないか」


「いや、そんなことはなかろう」


ギャンブラー高橋は俺たちの考えを真っ向に否定した。


「どういう事ですか?」


知ったかぶりの佐藤は耳を傾ける。


「問題点は1つ、条件の鬼畜さだ」


「いや、動画の出演ですよね?そんな難しいことないと思いますよ?」


「それについては俺も同感だ。死ぬのに比べれば、動画に出るのなんておちゃのこさいさいだぞ」


別に難しいことじゃない。犯罪を犯して、動画で告白すればいいんだろう?


「お前さん、これからの事考えたことあるか?」


これからのこと?大学受験して、就職して、結婚して…


「犯罪行為はその全ての将来を妨害する」


「いや、それは大袈裟だって。世の中には万引きとかの軽犯罪をした人なんてごまんといるぞ。事情はどうであれ、そういう人が社会の一員として復帰している事例は沢山ある」


確かにこれからの害になるだろうが、なんとかなるだろう。


「まぁ、お前が軽犯罪を軽く見すぎてる気になるが、一旦そこは置いとく」


ギャンブラー高橋は続ける。


「軽犯罪程度があのバレバレの動画に取り上げられると思うか?」


ギャンブラー高橋が俺の考えの甘さを突く。


…うっ、確かにそうかもしれない。バレバレの動画に出てくる人達は、割と酷いことをしていることが多い。


「しかも1日だ。1日にして取り上げられるぐらいの大きな犯罪をしなきゃならない」


今考えてみれば、たった1日の間だけで、動画に出れるよう奮闘しなきゃ行けないわけだ。


「取り上げられるぐらいの大きな犯罪は、将来の希望を崩れさすのに容易じゃけ」


「なるほどですね。ですが、その程度でしょう。死ぬに比べれ…」


まだまだあるぞと、ギャンブラー高橋はにやける。


「被害者として動画に出ることは難しい。何故なら、被害者になるには相応の相手の犯罪の証拠が必要だからじゃけ。生活困窮者として動画に出ることは難しい。何故なら1日だけだからじゃ。そもそも、バレバレは今日配信を行うのか?このループで死んでしまったら?どこにループ出来る確証があるじゃろか…」


ギャンブラー高橋はめっちゃ懸念点を言ってくれている。多分心配してくれているのだろう。有難いのだが、そろそろチャイムが…



キーンコーンカーンコーン



なっちまったぜ。


「おっと、俺ぇとしちまったことがよぉ」


ギャンブラー高橋はすぐ切りかえて、全速力で席に戻った。あいつはなぜああまで時間通りに座りたがっているのだろうか。


「まぁ、また話しましょう!猛獣使いのクロ!」


知ったかぶりの佐藤もそう言って去っていった。


2人は、完全に信じていないにもかかわらず、俺の言ったことに対して真摯に向かい合ってくれた。まじでいいヤツらずぎる。


俺の方でも、ギャンブラー高橋が言ってくれた懸念点を考慮しながらバレバレの動画に出演する方法を考えよう。頑張るよ、俺。



────



さて、運命の時が来た。5限だ。


アインシュタインは言った。「神はサイコロを降らない」と


これはどんな物理現象も同じ条件なら絶対に同じ挙動をするということを表した名言だ。


これは我々人間の直感にも即する言葉だと思う。


だが、実はこの言葉、量子論という分野によって間違っていることが判明してしまったのである。


つまり、何が言いたいかって言うと、本当に抜き打ちテストを行ってくれるか不安ってことです…!



キーン↓コーン→カーン↑コーン→

キーン↑コーン→カーン↑コーン→


チャイムが鳴った。そして、元気よく、詐欺に会いそうなぐらい純粋アイドルの星空が号令をかける。


起立!気をつけ!礼!


「よろしくお願いします」


「はいよろしくお願いしますね」


それに対し年季のある先生は淡々と返し席に座った。そして、


「…えぇ、今日は抜き打ちテストから始めまーす。成績に含めますから本気で取り組んでくださいね」


QED、証明完了



────



放課後、俺たちは部活をサボった。タイムリープに比べば、些細な出来事である。


そんなことよりもだ。タイムリープの件について話し合わなければと思い、帰り道の道路の途中で話を始めた。



「流石に信じてくれたよな」



願望の眼差しで2人を見たが、その必要はなかったみたいだ。金髪リーゼントと青髪が縦に揺れる。


「えぇ、いくらでも僕が助けてあげますよ!」


「最初に疑っちまって悪かったな。いくらでも手を貸したるじゃけ」


心強いセリフである。じゃあ


「あと半日でバレバレの動画に出る方法を考えてくれ」



「…」



2人とも黙った。夕日が彼らをオレンジに照らす。



「おーい」



知ったかぶりの佐藤は目を逸らし続けてる。ギャンブラー高橋は申し訳なさそうな顔をしてた。猫みたいで可愛いなぁ。


「じゃなくて」


謎に高いギャンブラー高橋への好感度を抑え、現実を直視する。


「明日になんなきゃキツいか」


「僕には今日動画に出演プランが考えつきませんでした!!そう、明日こそ頑張ればいいのです!」


「明日ではねぇよな、次の今日じゃけ。諦めぇは良くねぇが、戦略的撤退はわるきゃねぇ」


まぁ、うすうす感ずいていたことだ。だって明らかに一日の大半を学校に費やしすぎていた。あと、信頼に。


「申し訳なく思わないでくれ。信じてくれてるだけでもまじで有難いから。まじ感謝、感謝」


2連続感謝で感謝を伝える。とりあえず、


「気持ちを切り替えて次の今日にフォーカスしよう」


「まずはぁ、勝利条件の確認じゃな」


「では、僕が改めて勝利条件を言葉にしましょう!バレバレの動画に出演して、明日を迎えることです!!」


そう。動画に出演して 明日 を迎えることだ。ここで留意しなきゃ行けないのは、


「今日だけで完結の物語じゃないってことだ」


仮に今日だけだとしたら、銀行強盗でもした後で、バレバレの動画にでも出ればいい。流石に銀行強盗までしたら動画には出れるだろう。


だが、俺には未来がある。


「つまり、出来るだけ犯罪は避けたい」


犯罪しなきゃ、他人に迷惑がかからないので一石二鳥である。


「あと、出来るだけ早くこのループから抜け出したい」


これは、ループには何か副作用があるかも知れないし、わんちゃんループしすぎたら自殺しちゃうかもっていう心配があるからだ。


「なかなかに無理難題ですね…」


知ったかぶりの佐藤が唸る。まぁ言いたいことは分かる。正直俺じゃどうすればいいか検討もつかねぇ。


「ギャンブラー高橋、お前なら何かしらいいアイディアは出てこないか?」


「いいアイディアかは分からんが、何個か案はある」


流石だぜ!こういう時いっつも頼りになるんだがらギャンブラー高橋は。


「世辞はいいぜ。とりあえず3つだ。1つ、トルッターでお願いしてみる。2つ目、暴露する人間になる。3つ目、バレバレの住所を特定し配信に写りに行く」


なるほど。どれも本気を出せば何とかなりそうな気がする。


「2つ目のやつは、猛獣使いのクロの人脈勝負ってことになりそうですね」


「そやぁ、そんな都合よく、陥れていい有名人の人脈がありゃいいじゃけんけどの」


うーん。俺自体の人脈でそんな人は知らないが、人から人に辿ってけば何とかなるんじゃないだろうか。


「3つ目のやつは、そうですね、もう住所って特定されてたりするんですか?」


「出来てりゃ苦労しないんじゃかの」


ギャンブラー高橋は茨の道であることは理解していた。そして、俺に問う。


「どうじゃけ?」


とりあえず全部やってみるしかねぇ。


「ありがとう!すげぇ頼りになった」


やる事さえ決まれば、あとは行動だけ、そう思い、走って帰ろうとした。そしたら、知ったかぶりの佐藤が肩を掴んできた。


「待ってください、今日は僕たちの説得に時間がかかったじゃないですか」


突然そんな事を言い出した。一体何を言わんとしてるのかはよく分からん。


「時間がかからないようにするんですよ!」


んー、そう出来たら嬉しいがどうやって?


「なるほどのぉ。合言葉による説得か」


ギャンブラー高橋は持ち前の勘の良さで、知ったかぶりの佐藤のいわんとしていることを悟った。


「その通りです!合言葉を設定して、次からはこの工程を省略しましょう!」


なるほど!合言葉を設定するのか!ん?でもちょっとまて、


「今設定したって、次の今日には2人とも忘れてるじゃないか」


2人が覚えてくれてなきゃ合言葉は成立しない。


「発想を逆転してください!覚えてなくても使える合言葉を作ればいいんですよ!」


ん?よく分からん。


「つまりよぉ、自分でしか知り得ない情報を合言葉とすんだよ」


ほほう!やっと理解できた。確かに、知らないはずの情報をなんで知ってんの!?もしかして、ループしてる!?ってなるのか。


「いや、そんな上手くいくか?」


「お前どこでそれ知ったんだよ~!えっち!からかわないで!」ってなりそう。


「大丈夫じゃろ。俺たちの仲じゃぜ」


まぁ、信じるしかないか。


「では、僕の合言葉から教えますね!」


いきなり知ったかぶりの佐藤が訴えてきた。こいつの勇気は尊敬に値するぜ。


…自分しか知らない情報って個人情報だよな、仕方ないとはいえ気が引けるな。


でも、俺の為に言ってくれるわけだよな。ここ以外の誰にも言わず、墓場まで持ちかえる覚悟は出来た!さぁこい!


「これ伊達メガネなんですよ」


少し間が空く。


…ええぇぇ!?


クロは驚愕した。


他の人からしたらなんでそんな驚いているのか分からないかもしれないが、俺たちが驚いてるのには理由がある。


「だって前、目が見えねぇっつってコンタクトしてたじゃねぇか!?」


そう、コンタクトをしてた時期があったのだ。


コンタクトつけるとこまで俺はこの目でしっかりと見た。


「あぁ、あれは伊達コンタクトです。」


伊達コンタクト!?そんなもんない!伊達にもなってないぞ!!


「僕はクールキャラなのでメガネ付けないといけないんです。よって、目が悪いキャラを演じてた訳です!」


相変わらず、ちょっと変わったヤツである。


「いやぁ、そんな重大なこと教えてくれてありがとな。」


「いえ、こちらも嘘をつき続けるのは恥ずかしかったのでちょうど良かったです。」


まぁ、とわいえ合言葉を入手出来た。ってことは残すは


「…」


黙ってるギャンブラー高橋だった。


「大丈夫だ。ギャンブラー高橋。そんな大層な告白じゃなくていい。別にスマホの暗証番号とかでいいん…」


「地毛だ」


ん?なんて?


「地毛だ」


じげ?地毛か。



夕日がその金のリーゼントを照らしている。その輝きは、金のバラより美しい。


地毛ぇぇ!?え、そのリーゼント地毛なの!?世の中、世にも奇妙な物語だらけやん!?


「黙ってて悪かった…」


「いや、まぁ別に地毛でも地毛じゃなくてもなんも悪いことじゃないだろ。ただ、めっちゃ驚いただけで」


アンビリバボーである。これは仰天ニュースだ。


「本当にありがとな。これで俺は皆からの信用が得られそうだ」


「良かったですね!」


「…」


ギャンブラー高橋は黙ったまんまだ。そこまで落ち込む必要ないのに…。明日いじりまくろ。


「うし!じゃあこの調子で次のステップに行こう」


俺は顔を上げる。


前向きが1番!だって、それはポジティブだから…



それから、話し込んでいたら、夕日も傾き、月が負けじと少しずつ輝き始めた。


ここまでの話をクロはまとめる。


「俺は帰ったらすぐトルッターでお願いする。それが終わったら、人脈確認だ。家族や友達全員にとにかく聞きまくる。これは全員の共通のやること事項だ。その後、22:00頃から通話開始して、状況確認と住所調べ、以上だよな?」


「ですです!」


「精一杯がんばっていこうじゃけ。」


じゃあ、あとは時間との勝負だな。


「うし、じゃあ、これにて解散!!」


元気よく解散宣言をした。


それぞれ3方向に散って走り出す。俺たちの力を合わせれば、明日を迎えることも難しくは無いはずだ。皆、そう思って全力を尽くしたのだった。



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