気づいちゃった、気づいちゃった、わーい、わい!
「はいどうも〜、バレバレです。今回なんですけども、とある芸能人の浮気についてですね。現場を目撃していたね、関係者から…」
このスマホに写っている、黒髪にマスクをした小太りなyotuberはバレバレ。いわゆる暴露系と呼ばれるyotuberである。
暴露系yotuberって何?って人に簡単に説明すると、有名な人が行ってしまった良くないことを動画で暴露する、といった感じのyotuberである。例えば、芸能人の浮気だったり、俳優の犯罪行為だったり…
もしこの動画主、バレバレの事を初めて知ったり、ニュースでしか見たことがない人は嫌悪感に苛まれることは想像にかたくない。
だが、慣れると意外と面白く、暴露がエンタメに昇華していってつい見入ってしまうのである…
「という訳ですね。関係者さんありがとうございました。どうですか皆さん、衝撃の事実でしたよね!じゃあ終わりにしましょう。この芸能人の嘘はバレバレー!」
少し野太い声で決めゼリフを言いながら手のひらを画面に向け、この動画に終わりを告げた。
今日の動画もおもろかったなぁ。でも、いつも思うけどあの決めゼリフダサいよなぁ
っと思いつつ、俺はスマホの電源を切りベットの上で寝る準備を整えた。時計の針は12時を指している。
高校生が寝るには丁度いい時間だなと思った男、クロは早速部屋の電気を消した。
この日の部活はめっちゃハードだった為、ベットに横たわったらすぐ寝れた。いびきをかくほどぐっすりである。
──────
それは突然だった。
クロは真っ暗な世界の中心に立っていた。
なんだここ?精神世界的な感じか?
感じた事のない感覚に戸惑い頭をかく。
そんな中
──バレバレの動画に出演せよ
突然声が響いた。
…ん?なんだよ
何かが自分に問いかけていると直感的に感じた。
謎の声が響き渡る。
──バレバレの動画に出演せよ
は?バレバレ?
バレバレとは、あの暴露系yotuberのバレバレだろうか
謎の音が反響してずっと脳に残り続ける…
多分これは夢だ…
気持ちわりぃ夢だぜ…
いつまでたっても謎の声はやまぬことを知らない。
クロは漆黒の中で頭を抱え続けた。
──────
チリチリチリチリー!
目覚ましが鳴り響いた。いつもと同じ音量のはずだが、今日は体がビクッってなった。いつもよりいい目覚めだった。
いや、よかったんかい。
いつまでもチリチリ鳴らしていると近所迷惑なので、スマホの画面をスワイプした。スマホの画面が切り替わり、6月10日(月)7:00と表示される。
それにしても、変な夢見たなぁ
珍しい夢を見たなと感慨深く思った。
まだ頭に残ってる、バレバレの動画に出演せよと。
いや、出演したくねぇよと。
バレバレの動画の見すぎだからかな〜と推測してたところで、下の階にいる母親から声がかかった。
「クロ!早くしないと遅れるわよ!!」
いつもの元気な声が聞こえる。
クロは母親にはーいと答えて、部屋のドアを開け、下の階に降りた。
リビングに着くと、そこには椅子に座り、朝食を食べている妹の姿があった。妹は降りてきた俺に気づいたようで、俺に手を振ってきた。
「おはよ〜」
おぉ、珍しいな…っと妹が挨拶してきた事に驚く。だって、最近はお互い挨拶なんてしてなかったから。
昨年、妹が中学に進学した時からパタッと挨拶が無くなったのだ。でも、それは仲の悪さではなくて、単に挨拶するのが面倒なだけだと勝手に思ってる。
「おはよう。なんだ、何かいいことでもあったのか?」
「ふふん!」
妹は何故か胸を張っていた。うちの妹は可愛いが、ふふんとはなんだふふんとは。あまりに可愛すぎるぜ!
そのふふんと言わせるほどの何かを聞かせてもらおうじゃねぇか。
「んー、内緒だよ!」
うん、元気なのはいいことだ。ただ、妹はイタズラ好きなので内緒とか言われるのは畏怖の対象である。
まぁ、詮索しないのが俺のいい所でもあるので、ここは見逃すことにした。
「そうか、今日も学校頑張れよ〜」
一旦会話を区切って、俺も朝食を食べ始める。今日はカレーだった。朝から重すぎるぜと思った次第である。
しばらくして、妹はカレーを食べ終えたようで、ご馳走様~と言いつつ、自分の部屋に向かった
俺もカレーを食い終わったため、ご馳走様と続けて、学校の準備のため部屋に戻った。
教材の整理は大変だ。曜日によって何を持っていくのか決めなければならないから。
今日は月曜日なため、非常に荷物が重い。
最悪だ、置き勉出来ねぇうちの高校は狂ってるぜ。
恨みつらみを言いつつ、制服を来て、もろもろの準備を完了させた。
だから、玄関に向かい、靴を履いた。そして外出の旨を伝える。
「行ってきまーす!」
今日は快晴だった。
──
場所は変わって、現在、クロは暴露高校にいる。どうやら昼休みなようで、クロは2人の友達と一緒にくっちゃべっていた。
「…あ、そうだ。今日さ、唐揚げを食べようとしたら実はカエル肉だったぐらいの気持ち悪さの夢見たんだよね」
どんな例えだよ。
いや、めっちゃ突然なんだけどね、と前置きしつつ、夢について語った。
頭に響き渡る声──バレバレの動画に出演せよ──のことを。
「な!気持ち悪いだろ。…そう思うよな!ギャンブラー高橋!!」
共感を求めるため強く訴えた。
ギャンブラー高橋と呼ばれた男はうんうんとその金髪のリーゼントを揺らす。
「頭に響き渡るってのは、バットで頭殴られた感覚と同じじゃろうけ、そりゃ気持ちわりぃや。知ったかぶりの佐藤も同じように思ってるじゃろ?」
知ったかぶりの佐藤と呼ばれた男は、メガネを触りながら、顔を傾け、青髪をたなびかした。
「うーん、僕はどちらかと言うと、バレバレさんの動画に出演するという内容の方が気持ち悪いですね」
「んぁ?どゆこっちゃ?」
「だって、バレバレって犯罪者の晒し上げですよ。バレバレの動画に出演するということは、社会で罰されなければならないことをしたということです」
知ったかぶりの佐藤はバレバレの動画に出演することのデメリットを話す。
確かに、今考えてみればバレバレの動画に出演=悪いことをするなのか。そんなの考えもしなかったな。
「でもよぉ、俺バカだから間違ってるかもしれねぇじゃけどよ、バレバレの動画に出演するだけならなにも、悪いことをするだけじゃねぇんじゃねぇか?」
「どういうことです?」
「言葉通りの意味じゃけ。バレバレの動画には、被害者と加害者が両方そろっとる。つまり被害者も出演できる」
それに…とギャンブラー高橋は続けた。
「バレバレの動画には生活困窮者や相方なども動画に出演しとる。さらに、たまたま写っちゃった一般人もいるじゃろ」
相変わらずちぐはぐな口調で的を得た発言を…。確かにその通りだ。別に悪者になれなくたって動画には出演できる。
「むむ、確かにその通りですね。ですが、出演できる確率は、悪者の方が高いのでは無いですか?」
「悪者の定義によるが、悪者が加害者を指すならそんなことねぇんじゃねぇか。むしろ、被害者の方が多いじゃろ。ああいうのは、暴露する人間が必要条件だ」
なるほど、動画に出たいなら暴露側に回れば確率が高いわけだ。暴露される側にはなりたくねぇからな。
「お前ら、めっちゃいい意見ありがとな。参考になるわ」
まさか、夢の話をしただけで、夢の内容の解決策が出てくるとは思わなんだ。
「僕たちで良ければなんでも相談してくれればいいんですよ!3人集まれば3人分の頭です!」
その通りだ。
「世の中には虫の知らせや正夢って言葉もあるじゃけ。無視するよりかは、少し考えた方が後悔しないじゃろ?」
みんな、優しすぎるぜ…!まぁ、あくまで夢だからそんな気にする必要もないんだが。
そうやって話していると、不意に知ったかぶりの佐藤が時計を確認し始めた。
「そろそろ着席しなければならない時間ですね」
こいつが言うように、もう喋っている余裕は無さそうだ。俺ら全員席離れてるからな。
そんなこんな解散しようという流れの時に、ちょっと気になることはあるんだがなっとギャンブラー高橋が呟いた。
「気になること?」
「気になることですか?」
俺と知ったかぶりの佐藤が聞き返す。
「おうよ、もし本当にバレバレの動画に出演しなきゃなんねぇなら、期限はいつまでって話じゃぜ」
まぁ、確かにいつまでに出演すりゃいいか分かんないよなと思いつつ、あくまで夢だからなぁとも思った。
いちいち夢に構ってらんないもんな。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴った。
急いで皆席に戻る。ギャンブラー高橋が急いで席に向かう姿はギャップ萌えだった。
昼休み後の授業、5限の始まりだ。
皆が席に座った後、
純粋アイドルの星空、あっ、こいつは俺の幼なじみ、が「きりーつ!気をつけ!礼!」と元気よく号令をかけた。
「お願いします」
クラス全員が声を合わせる。
「はいお願いしますね」
それに対し年季のある先生は淡々と返し席に座った。いつものように、そのまま授業を始めるのだと思った。
だが、その予測は外れた。教授の口から衝撃の一言が発せられる。
「…えぇ、今日は抜き打ちテストから始めまーす。成績に含めますから本気で取り組んでくださいね」
抜き打ちテストだと…!?
────
「ただいま~」
学校と部活が終わり、帰ってきた時の家の安心感は半端ない。どれぐらいの安心感かと言うと、すぐトイレが行きたくなるぐらいである。
「おかえりー」
母親がいつものように返してくれた。
俺は自分の部屋へ駆け込んでバックを投げ捨て、トイレに向かった。
トイレし終わった後、部屋のベットに横たわりyoutubeを開く。そして思い出す。
あ、そういえばバレバレに関する夢を見たんだよな…。
今日の夢をそこまで重要に考えていなかったクロは、学校にいる間にそこまで夢を意識してなかった。
夢の原因は、バレバレの見すぎかな…と思いつつ、面白そうなサムネのバレバレの動画をクリックした。
しばらく動画を見てから、夕飯を食べ、お風呂に入って、また動画を見ていたら、もう寝ていい頃合いになっていてた。
今日はほんとに何もない日だった。いつも通りの平穏である。変な夢見たから、何かが始まる、そんなことは無かった。
「さて、そろそろ寝るか」
スマホのアラームをセットするため、スマホを起動した。時刻は6月10日(月)23:00であった。
今日も今日とて部活で疲れてたためぐっすりである…
「おやすみ~」
自分に今日の終わりを告げた。
────
また突然だった。
──バレバレの動画に出演せよ
謎の声が響き渡る。
ん?またかよ…
流石に鬱陶しい。
──バレバレの動画に出演せよ
分かったって。分かったから静かにしてくれ気持ちわりぃ。
何度も頭の中で響き渡る。
──バレバレの動画に…
うるせー!
クロは頭を抱えながらベットから飛び上がった。
流石にうるさすぎでずっと寝てられなかった。
なんなんだよこんちくしょう!うわぁ、もう目覚め最悪だわ。今まで見た夢の中で一番タチ悪いぞお前!
と思いつつ、起きてしまったものは仕方ないので時間を確認した。スマホには6月10日(月)6:59と表示されている。
そこでふと違和感を感じた。だがそれの違和感の正体に気づけない。寝起きだから頭も回らない。
なんだこのモヤモヤしたものは。何かがおか…
チリチリチリチリー!
「うっわお!?」
目覚ましが始まりを伝える。
いきなりだったので、クロは驚いた。
久しぶりにこんな大声出しちまったわ。鶏の卵から鶏の卵が出てきた時以来だわ。
驚いてはいるようだが、エッグマトリョシカボケを噛ませるぐらいには元気なようだ。
そうか、7:00にアラームセットしてたから今なった訳だな。とんだ罪の野郎だぜ。
「クロ!早くしないと遅れるわよ!!」
いつものように母親は俺を急かしてきた。いやぁー、変わらない良さってあるよな~と思いつつ、はーいって返事をした。
とりあえず朝食を食べようと、下の階に行くため階段を降りてると、妙にスパイシーな香りが漂ってきた。
くんくん。これは青酸カリィ!?、じゃなくてキャリー&ライスだ。
おっとと、困るぜ。流石に朝食2連続カレーは胃にクリティカルだぜ。
そう思いつつリビングに行くと、そこには椅子に座って朝食を食べている妹の姿があった。妹は降りてきた俺に気づいたようで、俺に手を振ってきた。
「おはよ~」
んんー、デジャブ。珍しいからいつもなら喜んでいるところだが、2連続になるとその幸福はちょっとばかし薄れちまったぜ。
「おはんよ、今日も今日とて機嫌がいいな~。今日こそはその理由を教えてくれてもいいんじゃないか?」
「…ん?内緒ぉー」
そりゃそうだよな。でも、それで納得出来ないのがお兄ちゃんである。ので、ちょっと推察してみよう。昨日と今日の朝の共通項を探せばいいだけのイージーゲームだ。
なんだろ、
朝の出来事だよな
朝……
…朝カレー!?
朝カレーなのか!?
確かに普通なら2連続カレーで気を落とすだろう。しかし、もし、朝カレーのことを愛してるとしたら…点と点が重なった。
それはただの点だが。
「好きだったのか…」
「……!?」
妹はその言葉を吟味した後、驚愕した。そして、驚愕したかと思えば、顔を真っ赤にして、頭を横にブルンブルンして、下を向いた。そして、その震えた手でカレーをまた食い始めた。
図星のようだ。今度カレー作ってやろう、そう思った。
しばらくして、カレーを食べ終わった娘はそそくさと自分の部屋に戻って言った。
かくいう俺も、もう食べ終わったので授業準備のため自分の部屋に戻った。
俺は時間割を確認して、必要な教材と不要な教材の仕分け作業に入る。今日は火曜なので教材は少なめだ。
なんで、火曜は教材が少ないかと言うと、数学×2、英語×2、体育×1の偏った時間割だからだ。割とハズレな曜日ではある。
だが、明けない夜はないし、止まない雨はないので、1週間に1回やってくるのがこの世の理らしい。
そんなノスタルジックな気持ちに浸りつつ、準備が出来たので玄関に向かった。そして、外出の旨を伝えた。
「行ってきまーす!」
今日も快晴だった。
────
場所は変わって、現在クロは暴露高校にいる。様子を見てみるに、どうやら一限が始まる前らしい。もっとも、最も特徴的なのは、クロは尋常ならざる汗をかいている様子である。
「嘘…だろ…?」
クロは頭を抱えていた。
だってそうだろう?今日は火曜授業だと思っていたら、どうやら月曜授業を行うらしいのだから。
「教科書がない…!!」
クロは悔し涙を流す。
だってそうだろう?怒られちゃうもん。
「おい、どうしたんじゃけ?猛獣使いのクロ」
随分大層な名前で呼ばれたクロは振り返る。
その声は…ギャンブラー高橋!!
思わず飛びつき抱きついた。
「おやおや、どうされたのですか?」
その声は…知ったかぶりの佐藤!!
思わず手でしっしっ、ってやった。
「扱いが酷くありませんか!?」
知ったかぶりの佐藤は、プンプンです!と言いながら不平を訴えていた。
「文脈から推測するに、お前さん教科書忘れたんだなぁ?」
「その通りです…」
なんて情けないんだ俺は…。これを糧にしてもっと成長しようと覚悟を決めた。
「でも、僕には分からないことがあるのですが、どうしてそんなに教科書忘れたぐらいで落ち込んでるんですか?今までも教科書忘れるとかあったでしょうに」
知ったかぶりの佐藤は頭にはてなマークを浮かべていた。
「確かにその通りじゃけぇの。忘れ物の1つや2つぐらいでくじくじする男じゃねぇよな」
ギャンブラー高橋も、知ったかぶりの佐藤の意見に同意のようだ。
「俺はただ教科書を忘れただけじゃねぇんだ」
「と、いいますと?」
「今日を火曜だと思って火曜の準備をしちまったんだ!?」
2人の頭にイナズマが走った。
「…そ、それってつまりですよ?」
「お前さん…、今日の授業に必要な教科書を何も持っていないってことじゃけ?」
俺は力強く頷いた。
「……とりあえず、時間的に席に戻りますか。猛獣使いのクロ、強く生きてください」
「また後でな」
そう言って2人は去っていった。
意外と薄情。
「どうやら覚悟を決めなければならないようだな」
俺は悟った。だが、この失敗が俺を強くする。
一限の先生は怖い人だった。だから教科書忘れるやつなんて今までほとんどいなかった…
チャイムなる前の寸前に先生のところに駆け寄る。そして、
「あのぉ、先生、教科書忘れてしまったのですが…」
恐る恐る声をかけた。
その後、普通に怒られて妬みを言われた。ワンチャン怒んないかなって思ってたんだけど、ダメだった。
ちょっと気分は落ち込んだが気持ちを切り替える。そうじゃないと、あと4限なんてやってげない。
そうやって思いながら授業を受けていると、少し違和感を覚え始めた。
「んん?この内容昨日やったよな?」
明らかに先生は昨日と同じ内容を説明していたのだ。しかも、具体例まで一緒だ。
周りを見渡す。もし、同じ違和感を抱く人間が他にもいれば変な挙動をしているはずだ。
そう思ったが、誰もそれに当たる行動はしていないようだった。
全く同じ授業を行うなんて前代未聞である。だが、それに周りが違和感を抱いていない現状は前代どころか末代まで未聞だろう。
よって、実はみんな違和感を抱いてる説にベットさせてもらう。
この仮説の検証のために、まずノートを破って、
昨日と同じ授業してね?
というメッセージカードを作った。
そして、これを紙飛行機にしてギャンブラー高橋まで飛ばした。
これで高橋も同じ感想を抱いていたら万々歳である。
紙飛行機は直線の起動を描き、リーゼントの真横にぶっ刺さった。
紙飛行機がぶっ刺さったことに気づいたギャンブラー高橋は少し不機嫌そうな顔をして、それを引っこ抜いた。
とりあえず返事待ちなので、落書きでもして待っているとする。
そうやって待っていると、急に寒気がしたのでギャンブラー高橋の方を向いたら、豪速球のくしゃくしゃの紙が飛んできていることに気づいた。
大谷レベルの豪速球に俺が反応できるはずがなく、おでこに直撃した。めっちゃ痛いよぉ…。
感傷に浸りながらも、俺の額に当たってから机に落ちたくしゃくしゃの紙を開いた。そこには
「おめぇ、昨日は日曜じゃぜ?授業なんてねぇじゃろ」
と書いてあった。
一瞬混乱した。そして待ってもしかして今教科書忘れたなんかと日にならないぐらいエグいことが起きてるのかもと勘ぐった。
とりあえず冷静になれ、俺。焦ったていい事はないぜ。
まず整理しよう。
俺は今日火曜だと思ってた。だから、火曜の授業の準備をしてきた。
だけど、何故か月曜の時間割で授業を行うってんだがら驚愕して、教科書を持ってきてないことを嘆いてた。
で、昨日と同じ授業を行ってるからおかしいと思って、ギャンブラー高橋に聞いたら昨日は学校じゃないという話だ。
つまり、今日は月曜ってことで、俺にとっては2回目の月曜ってことか!?
これは世界の理が変わるかもしれない。止まない雨はあったかもしれない。とりあえず、スマホで日付を確認した。
…月曜日。月曜日だ。
俺以外が間違ってるのか?俺が間違っているか?とにかく、とりあえず言えることは…
「強くなってニューゲームってことだ」
混乱しすぎてよく分からないことを呟いていた。
授業後、俺はいつもの2人を呼び会議を開いた。
「えぇ、10分しか休みがないから手短に話す。」
「珍しいですねぇ。そんな焦ってどうされたのですか?」
「…」
知ったかぶりの佐藤は珍しく焦る俺のことを少し面白がっているようだ。珍しくって言っても、教科書の時にも焦っていたがな。
面白がっている知ったかぶりの佐藤とは対照的に、ギャンブラー高橋は静かに見守っていた。
もしかしたら、俺のメッセージカードから何となく推測出来ているのかもしれない。
俺は力強く発した。
「15年間、この日を待ち続けていた。数年に一度、すべてを変えてしまう出来事が起こる。それを一度でも成し遂げることができれば幸運だが……。」
「スティーブ・ジョブズのパクリですね」
「いや、お前さん時間なかったんじゃねぇじゃけ?」
「…続けるぞ。
思えば、今日は色んなおかしな事があった。2連続カレー、2連続妹のご機嫌、2連続同じ授業。本日、革命的な現象を発表します。」
固唾を飲んで知ったかぶりの佐藤は見守る。ギャンブラー高橋は面倒くさそうにしているが。
「……俺、タイムリープしてる」
衝撃的な事実に気づいてしまった。