23/24
第二十三 キャンバスの森
人々がたむろする商店街。
彼らを突き刺す初夏の陽射し。
そんな中、私は見つけた、大きな森を。
この地から、何千マイルも離れている、スウェーデンの森林を。
精霊の宿る青白い木々、活力溢れる深緑の葉。
サファイア色の大きな湖。
キャンバスに描かれたその森に、私は一気に吸い込まれた。
なぜだろう。
森に入った私には、「時間」というものがない。
「時」という概念は、この世界には通じない。
でもいいんだ。
時間に追われた日常は、私を疲れさせるだけだから。
日々追われている私には、立ち止まる間は少しもない。
キャンバスに広がるこの森は、そんな私の時間を止めた。
私から、焦りと不安を奪っていく――。
森から帰るとすぐにまた、私の時間は動き出した。




