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第十五 涙の雨
おいていかないで。
声にならない叫び声を、アタシはあげる。
窓の外ではアタシの心の涙を写したように、
雨が静かに降っている。
「ずっとそばにいる」って言ったじゃない。
アタシ、信じていたのに……。
その言葉。
だけどアナタはアタシから、
もうすぐ去っていってしまうのね。
一人になったアタシには、どうしたらいいのか分からないよ。
……寂しいよ。やりきれないよ。辛すぎるよ……。
だけどアタシはその思いを、表に出すことはできないわ。
だってそんなアタシを見たら
アナタは絶対、不安になるでしょ、アタシのこと。
アタシがしっかりしなかったら、アナタが安心できないもの。
今までありがとう。
さようなら、逝ってらっしゃい。
病室に、一直線のブザーが鳴っても、彼女は黙って座っていた。
涙の雫も落さずに、でも彼の手を、しっかり握って。




