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南極の北極星  作者: 夜月星野
10/24

第十 風

三年前の四月。

あの日もこんな暖かい風が吹いていた。

私は桃色のカーテンに包まれて、この校門を通ったんだ。


――風は、どこから来てどこへ去るのだろう――。


季節、匂い、会話、友人……。

風は、それぞれの思い出を持ち去っては、

時を見計らって帰ってくる。

思い出を返しに、帰ってくる。


「ご卒業、おめでとうございます」


片手に枯木(かれき)(いろ)の証書筒を持ち、私は校門を通った。



今吹いている風は、いつ帰ってくるのだろう。

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