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65.ソフィーとキャサリン

 すべてが終わり、私は離宮のベッドでマッサージを受けていた……。


「めちゃくちゃ凝ってますにゃー」

「あうあう……」


 ぽにぽにぽに。

 うつ伏せになった私の肩をキャサリンの肉球が押してくれる。


 なんという至福……。

 神とこの世界とキャサリンには感謝せずにはいられなかった。


「本当にありがとう、キャサリン。メルト殿下に使う毛まで集めてもらって、こんな……」

「いいんですにゃ!」


 もみもみもみ。

 ああ、気持ちいい……。


 そう、メルトの治療に使う諸部族の毛なのだが――これを集めてくれたのはキャサリンたち、離宮のメイドであった。


 彼女たちの働きのおかげで、ティリエにも気づかれることなく、迅速に必要量を揃えることができたのだ。


「それよりも……ソフィー様とメルト様のお力になれて、嬉しいですにゃ。でも本当にアレがお役に立ったのですかにゃ?」

「もちろんよ! あれがなかったら殿下は救えなかったわ!」


 どうして諸部族の毛が必要なのか。

 原作ではちらっとだが触れられている。

 というのも、ケットシー族などの毛にはほんのわずかに魔力を遠ざける力があるそうだ。


 ただ、これは本人も自覚できないレベル……錬金術で精錬しないと効果を発揮しない。


 死熱毒の治療薬には、この遠ざける力を利用する。

 要は肉体に根ざした死熱毒を追い出すのだ。


(……本当のところ、これが治療薬かどうかは疑問の余地があるけれど)


 追い出されても死熱毒の有毒性はなくならない。

 もし治療中に出てきた紫の煙を吸い込むとどうなるか。


 原作では『再び死熱毒に侵される』と推測されている。

 つまりもう一手打たないと、死熱毒の治療にはならないわけだ。


 私の声を聞いたキャサリンがほっとした声を出す。


「良かったですにゃ……。あの方のためになったのなら」

「……あなたたちにも人気なのね、殿下は」

「とてもお優しい方なのですにゃ。皇太后様の派閥におられても、私たちのためにたくさんの魔法薬を供給してくださったのですにゃ」


 キャサリンがしみじみと答える。


 魔法薬の調達はアズールもやっていたが、やはり今の帝国ではまだまだ供給が足りない。

 これまでアズール以前の皇室が普及を制限していたせいだ。


 それをアズールやメルトは変えようとしている……。

 一朝一夕にできることではないが、その一端を私も担っているに違いなかった。


 にしても、メルトはこれまで彼なりに色々とやってきたわけだ。

 これこそまさに――。


「情けは人のためならず、ね」

「にゃ? それはどのような意味ですにゃ?」

「あっ」


 しまった。

 つい、前世の語句が口から出てしまった。


 もちろん、この世界にそんな言葉はない。

 いや、大丈夫だ! 私はとっさに答える。


「ランデーリの古いことわざよ。人にした親切や善行は、やがて自分にも返ってきてくれるっていう意味」

「にゃん! まさにそうですにゃ!」


 もみもみもみ……。

 キャサリンの揉み圧が首にくる。


(……良かった。とりあえず、救うことができて)


 まだ完全に安心ということではないが。

 でも、きっと良い方向に向かってくれるだろう。

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