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57.真相、2

 私の言葉にメルトは目を見開き、そして細めた。

 この反応からは正解かどうなのか、推し量れない。


「……突拍子もないことを言うんだね。笑えない冗談だよ」

「私、ずっと考えていたんです」


 噛みしめるように私は言葉を続ける。

 もうここまで来たら止まれない。


「死熱毒は調合も容易ではありません。もちろん毒を盛ることも……」

「…………」


 メルトはむやみに遮ってはこない。

 とりあえず私の説明を聞くつもりではあるようだ。


「皇太后に近づける人物。彼女が信頼を置くのは――陛下だと無理でしょうね。きっと警戒します。あなたなら毒の調合も服用させるのも可能です」

「君なら知っているだろうけど、皇太后の毒を治療したのは僕だよ? どうして毒を盛って治療なんてするんだい?」


 それについても私は答えを出している。

 ただ、これは推測に過ぎないが。


「目的はあなたという存在を国内で押し上げるため。事件以降、皇太后はあなたを熱烈に支持し、陛下の対抗馬にと目論んだのでは?」


 皇太后の毒殺そのものが目的ではなかった、私はそう思う。

 目的は皇太后の意識をメルトに向けること。

 そして、その目的は十二分に達成されたのではないだろうか。


「馬鹿げた妄想だね……」

「私は当時、皇太后を診た侍医のひとりから話を聞きました。彼は言いましたよ、あの症状が死熱毒だと確定したのは、あなたが助言してからだと」


 死熱毒はそもそもがマイナーな毒だ。

 この国で調合できる人間も診断できる人間もほとんどいない……。


 症状だけを見て、正しい診断が下せるだろうか?

 現代日本のような鑑定法もなく、症状から判断するしかないのに。


 だから、そこには隙がある。


 実際、ロバートたち医師団は最初の頃、原因がまったくわからなかった。

 皇太后に盛られた毒が死熱毒だと判明したのはメルトが助けたからだ。

 

「医師団はあなたの助言をもとに文献を調べて死熱毒に辿り着いた。だけど医師団が治療を試みても成功せず、ついにはまだ子どものあなたに治療まで求めた……」


 そうして考えると、さらにひとつの仮説が思い浮かぶ。


「皇太后が真に死熱毒だったのか、もはや真実はわかりません。治療不可な死熱毒をあなたが世界で初めて治療したのか……。それともその時の死熱毒は不完全なだけだったのか?」


 私は暗に皇太后の自作自演である、ということまで匂わせた。

 さらに危険な考察だけれど、可能性は十二分にある。


 死熱毒の特徴的な黒斑、これは決して細工が不可能な症状ではない。

 その他には熱などだが……これも同様だ。


「君は今、自分が何を言っているのかわかってるのかい?」

「ええ――ですが、これはもう過去の話です。もっとずっと大きな問題は、陛下の毒殺未遂事件のほうですよね」


 ……メルトは私の言葉を否定しなかった。


 ここまでは単なる前提に過ぎない。

 本当に重要なのはここからだ。


「こちらもやはり、あなたが仕組んだ……そうではないのですか?」


 これは本当の死熱毒だと思う。

 しかし、死熱毒なら助からない。


 そんなことをメルトがするのはなぜか。

 メルトは自殺する気でいるのではないか――。


 それが私の出した結論だった。

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