56.真相、1
ロバートとの会合が終わった私は、ひとりで考え込んでいた。
彼から与えられた情報を整理するために。
まずは6年前のこと。
6年前、ティリエに死熱毒を盛ったのは誰なのか?
そして誰が死熱毒を調合したのか?
どうしてメルトは解毒不可能とされる死熱毒からティリエを救えたのか?
これらの疑問から解を引き出すのは不可能だ。
なぜなら、真相は巧妙に隠されている。
そして、現在。
アズールに死熱毒を盛ろうとしたのは誰なのか?
6年前、ティリエに毒を盛ろうとした黒幕とは違うのか?
なぜメルトは死熱毒に侵され、それを治療しないのか?
どうして元の未来でアズールはメルトを殺してしまったのか?
これらからも真相を見抜くことはできない。
過去の6年前の毒殺未遂事件と照らし合わせて、初めて真相が見えてくる――。
「だけど、これをどう解釈したらいいの……?」
私はひとつの答えを組み立てた。
でも推測が多く、根拠は少ない。
否、最初から明白な根拠などないのだ。
私程度で手に入れられる根拠があるなら、こうはなっていない。
結局のところ、手が届かないからこその疑問なのだから。
そしてアズールが私に興味を抱いた、その理由も。
……多分、私は掴めたのかもしれない。
その日の夜、私は抜け道から帝都に向かう。
今日はメルトに会う、約束の日だ。
私の推測が間違いでなければ、すべての決着がつくだろう。
帝都の夜は今日も変わりない。
人は多く活気に満ちている。
この雰囲気を心から楽しめたら、どんなに良かっただろう。
街をすり抜け、私は『魂の奴婢の館』へ向かう。
歩いている間にも、心臓が早鐘を打つ。
(これは余計なことなんじゃないか――……)
色々なことが頭を駆け巡るが、それらをきっちりと追い払う。
……やらなければ。
でないと、救われるべき人間が救われない。
私は『魂の奴婢の館』へ到着し、店主に挨拶する。
「こんばんわ」
「おう、あんたか。魔法薬はうまくいっているようだな」
「おかげさまで」
「売り買いだとかは俺に任せな。ボスとあんたが作ってくれた最高の魔法薬はきっちり売ってみせるからよ」
この強面の店主ともすっかり顔馴染みだ。
実直で、細々としたことも全部整えてくれる。
メルトが信頼を置くわけだった。
……顔はちょっと怖いけれど。
宵闇通りに店を構えるなら、このぐらいがいいのかもだが。
階段を昇って私はいつも通り、2階へ。
そこではメルトが椅子に座って私を待っていた。
「やぁ、来てくれたね」
「……はい」
どこから切り出したものか、迷う。
でも言わなくちゃ。
「ちょっとよろしいでしょうか?」
「ん? なんだい?」
これまでのやり取りでメルトの信頼を勝ち取れたことを感じる。
初めの頃とは全然違う。
だからこそ、私はメルトを救いたい。
息を吸って軽く吐く。
思考を整理する。
意を決した私は、メルトの前に立った。
「ソフィー……?」
「メルト、私が間違っていたら遠慮なく言ってください」
そこで私は私の辿り着いた真相を話し始める。
もう逃げられない。始めたら終わりまで突き進むしかない。
でもそれでいい。
これが私の求めるものなのだから。
「6年前のティリア皇太后暗殺未遂事件――これの毒を調合したのは、あなたですね?」
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