54.離宮に戻って
「にゃー……皇太后様とのご会合、お疲れ様でございましたにゃ!」
ティリエの離宮から私の離宮へ帰ってきて。
出迎えてくれたのはキャサリンたちであった。
「ただいま。ふふっ、早速使ってくれたの?」
「はいですにゃー! ソフィー様のお手製石鹸、最高ですにゃっ!」
実はティリエの茶器鑑賞会に出かける前、キャサリンたちには完成したての自作石鹸をプレゼントしていた。
数時間前のことだったけれど、もう使ってくれたらしい。
「……うん、ふわふわ感が増しているわね」
「それはもうですにゃ! 色艶も素晴らしいの一言ですにゃ!」
むにむに。キャサリンが自分の頬を揉む。
とっても可愛い。
メイドたちの毛並みも輝くほどに変わっている。
「石鹸でこんなにも素晴らしいツヤが出ますなんてにゃー……!」
「毛触りがもう、全体的に違いますのにゃー!」
キャサリンもずいっと身を乗り出して触って欲しそうにしている。
自分からは言い出せないにしても。
全身から石鹸の効果を確かめてくださいオーラが出ていた。
それを察した私はすすっとキャサリンに手を伸ばす。
「ふむふむ……触ってみてもいいかしら?」
「どうぞどうぞですのにゃー! ぜひ、お確かめくださいにゃー!」
快く許可をもらえたので……。
ふもふもふもっ。
うーん、素晴らしい……!
自分の作った石鹸で、もふる。
まさに自給自足と言えるかも。
そんな感じでケットシー族の皆様を堪能して。
(はぁ……いつまでもこんな生活ができたら、いいのにね)
異世界転生も楽じゃない。
むしろ人の生き死にが関わっている分、シビアだ。
私のすることで国の未来が変わり、大勢の人に影響する。
ケットシー族の皆さんと戯れて錬金術に唸るだけなら、なんと気楽だったことか。
……ということで、私はまた執務室に閉じこもって考え事を始めた。
ついでに机の鍵付き棚にさっきもらった宝石を隠す。
うーん……こんなに宝石はもらって嬉しくないモノだったろうか。
「とりあえず、また考えないと……」
ティリエから伝えられた情報を書き出し、まとめる。
この中のいくつかは私でも検証可能だ。
例えば6年前、ティリエが死熱毒に倒れたこと。
治療期間は約半月。そこから平癒。
ティリエと繋がる医者は多くはないはず。
トール族以外に診せることは考え難いし……。
完治したのであれば……なおさら情報を得るのは難しくないはず。
この世界じゃなければ探るなんて無理だったろうけど。
(……あとは死熱毒の治療をメルトが行い、成功したってことだけど)
しかし、これはティリエの死熱毒の話が本当ならばだ。
そもそも嘘や誇張があったら意味がない。
コンコン、執務室のドアの下のほうがノックされる。
この高さとリズムはキャサリンだ。
「はい、何かしら?」
「にゃー、ソフィー様? お茶の時間ですが、今日はいかがしますにゃ?」
普段はティータイムも取る私だけど、今日はティリエのほうで済ましてきた。
なのでキャサリンも聞いてきたと思うけど……。
「あ、そうね……少な目でいいけれど、用意してくれる?」
「承知いたしましたにゃー!」
つつつーっとキャサリンが優雅に下がる。
残念ながらキャサリンの用意する紅茶と洋菓子はとても美味しい。
それにティリエとの茶会ではさすがに量を制限していたし。
後半は色々ありすぎて味なんて吹っ飛んでしまっていた。
そう、もっと余裕を持ったティータイムが人生には必要なのだ。
少しして、キャサリンがティーセットを持って戻ってくる。
そこで彼女がおずおずと私に聞いてきた。
ティーセットを持ちながらの表情ではない。
メモ帳を閉じて、キャサリンに向き直る。
「……最近、執務室に籠っておられますが、大丈夫ですのにゃ?」
「うん、こっちは大丈夫だから」
「にゃ……お手伝いできることがありましたら、何でもお申し付けくださいにゃ」
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