表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/67

50.茶器鑑賞会

 数日後。夏の暑い盛りに皇太后主催の茶器鑑賞会が執り行われた。

 開催場所は皇太后の離宮だ。


 私のお供は……キャサリンといったケットシー族やコボルト族の人ではない。

 私の離宮では数少ないトール族だけをお供にした。


 これはティリエの派閥へ乗り込むことを考慮したものだ。

 正直なところ、キャサリンたちをこの場に連れていくのは気が引けた。


 間違いなく気分の悪くなる差別的言動に直面するだろうし。

 ならば連れていかないほうが賢明だ。


(……やっぱりトール族しかいないわね)


 招かれた招待客も、その供もトール族だけ。

 このリディアル帝国ではおよそ考えられないトール族の比率である。


 皇太后ティリエの離宮は瀟洒で豪勢だ。


 芝生が青々と茂り、生け垣は天使の形に刈り込まれていた。

 肌を熱する陽気に向かい、色鮮やかなユリの花が咲き誇っている。


 でも庭の広さや離宮の体積は、私の離宮のほうが上であると一見してわかる。

 アズールが全力を持って私に用意した、というのは今更ながらに本当のようだった。


 離宮の入り口ではティリエ自ら、来客を出迎えている。

 私の姿を認めるや、ティリエが顔を綻ばせた。


「ようこそ、ソフィー。来てくれて嬉しいわ」

「こちらこそ。お招き頂いて光栄です」

「うふふ、来てくださるか不安だったけれども……陛下をどのように説得したのかしら?」

「特に何事もなく。私のするべきことは私が決めますので」


 嘘は言っていない。

 アズールも政治的に私を送り込んだほうが得であるとわかっていた。

 ただ、気が進まないのと自分では行きたくないだけだ。


 でも私の回答はティリエにとって、好ましいものであったらしい。


「あら、あの方に向かって勇気があるのね。そうよ、憚ることなんてないわ。あの人に対してだってね。さぁ、行きましょう」


 ティリエ直々に私を先導し、離宮の大広間へと案内してくれる。

 大広間には大勢の女性貴族とメイドがすでにいた。


 広間にはテーブルが凹型に並べられ、種々の茶器が置かれている。

 一番多いのは純白の陶器。次にあるのは茶色の陶器だった。


(まぁ、正直に言うと茶器の良さは全然わからないのよね)


 多分、大広間に入ってすぐ置かれている純白のティーセット。

 まるっとしたアレが一番高価な代物だと見当をつける。


「素晴らしいコレクションですね、皇太后様。どれもきらびやかで美しいですわ」

「あらあら、わかってくれる? どれも手に入れるのに苦労したのだから」


 ちょっと褒めるだけでティリエのご機嫌は急上昇だった。

 

 それからはティリエのほうから茶器の細々とした説明(自慢)が始まる。

 やれこれは南方から取り寄せただの、東方の逸品だの。

 リディアルではまだここまでの白は出せないだの、これから何が流行りそうだの。


 生返事にならないようにだけ注意し、ティリエに喋らせることを目指す。

 ……どうやらそのほうがティリエも気分が良いようだし。


「まぁ、そうなのですか?」

「皇太后様はどうお考えなので?」

「リディアルの間ではどのように評価されているのでしょう?」


 なかなかの対処っぷりだと思おう。

 前世で身につけた対お局様用話術だ。


 ふぅ……とりあえずボロは出ていないはず。


 一通り、茶器を見て回ると1時間ほどが経っていた。

 ティリエが広間の大時計を見上げる。


「そろそろ良い時間ね。ランチもご一緒にどうかしら?」


 来た。

 私にとってはむしろ、そっちが本題だ。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』や広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ