45.次の目標
何事もなく離宮へと帰り着いたのは、深夜になってからだった。
すすーっと寝支度を整えて、ベッドに飛び込む。
久し振りのアルコールで私はぐっすりと眠ることができた。
翌朝、お昼近くになって目覚める。
二日酔いも何もなし。なんという気持ちの良い目覚めだろうか……!
(いっぱい錬金術して、錬金術オタトークもできて、美味しいお酒も飲めて楽しかったぁ~……)
もにゅもにゅ。口元を動かしながら昨日のことを振り返る。
メルトのことを最初はちょっと壁のある子だと思っていたが、全然そんなことはなかった。多分、メルトにも従兄の婚約者という気兼ねがあったのかも。
私もメルトとは物怖じせず、後半は同じ錬金術師の目線で話せた。
彼の知識や情報網は私にとっても有用で……きっと私とメルトが組めば、リディアルの錬金術にとって大きなプラスになるだろう。
(働かなくていい、みたいな感じではあるけれど……でも手は動かしたいのよね)
あの館の時のような過労死寸前はまっぴらごめんだけど、かといって食っちゃ寝で過ごすには長すぎる。
頑強な私が死ぬまで、50年あるとして……さすがに何かやりたい。
(――それにこの世界の運命も変えちゃったし)
本当の私は過労死するはずで。
アズールの助けになるのは本編の主人公ミラ・クオーツだった。
私は私の都合と望みで、その運命を書き換えてしまったのだ。
本来はミラが救うはずだった、なにか。
為しえるはずだった、あれこれ。
前世で読んだ本の中身とこの世界が、どこまで重なるかわからない。
今のところ、私が動かした運命以外は――同じだ。
だとしても、この世界はあの本と違うのかもしれない。
私が前世だと思っている記憶も、結局そうだと証明する手段はない。
本当はソフィーという魂が長い長い異世界の夢を見て、それを覚えているだけなのかも……考えても始まらないけれど。
今までは抜け出すだけだった死の運命。
(でも……今は)
あのメルトに死んでほしくなんか、ない。
彼は物凄く才能ある若者だ。しかもちゃんと努力している。
メルトの年齢の頃、私の大学生活はとっても普通だった。
国のことなんて考えなかったし、あれほど何かが出来るということもなかった。
彼の心の距離は、きっと生まれついた身分と死熱毒によるものだろう。
きっと前世で同じ大学や職場にいたら、彼を魅力的だったと思うに違いない。
助けたい、今は強くそう思う。
(そのためにも……私は私の出来ることをしないと)
今日は身支度したら文献を漁りに行こう。
死熱毒の情報をもっともっと得ないといけない。
離宮の改装もほぼ終わった。
リディアルでの新生活、それを本格的にスタートさせる時期だ。
まずはメルト、そして錬金術。
これらをやることはアズールの助けにもなるはずだから。
これにて第3章、終了です!
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