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30.宵闇通りの魔法薬店

 日が暮れるのを背にしながら、宵闇通りへ向かう。

 幸い、街行く人に聞きながら行けば迷うことはなかった。


 人の多さは変わらずだが、建物の雰囲気は暗くなってくる。

 どことなくトール族が増えてきているような……。

 

(治安が悪いってこういうこと……?)


 周囲にいる人の服装も柄が悪くなっている。

 とりあえずは気にしないようにしよう。


 宵闇通りの入り口にある魔法薬店にとことこ入る。

 まずは通りの奥に入らないで、手前のほうから。


「すいませーん」


 雑然とした魔法薬店。

 不愛想な店主の他に数人のトール族がいて、話をしている。


「……いらっしゃい」


 店内の全員の視線が私に集まってきた。

 なんだか嫌な視線と雰囲気だ。でも負けてはいけない。


「お嬢さん、ウチは初めてだろう?」

「はい、そうです」

「あんたは……商家の出身かい?」

「いいえ、錬金術師ですけれど……」


 店主が鼻を鳴らす。

 髭面の男性で気難しそうな雰囲気だ。


「あんたが? そんな若さで錬金術師だって? 本当かね」


 店にいる客も私に疑いの視線を寄こしてくる。

 

「半端者はお呼びじゃないんでね、ちょっとこっちに来な」


 呼ばれるままカウンターへ行くと、店主が瓶を取り出す。

 濁った黄色の液体が入っている――ポーションだ。

 

 状態としては初期の初期かな。


「あんた、これが何かわかるだろう?」

「低純度のポーションまで、あともうちょっとですよね」

「そこまでは図鑑でも読んでいればわかる話だ。この中身をポーションへ精錬できるかい?」

「お安い御用です」


 難易度としてはかなり低い。

 私が錬金術師かどうかを見るための試練だ。


 本当なら両手に瓶を持ち、じっくりと魔力を浸透させる。

 そして時間をかけて混ぜ合わせるのだが――普通の錬金術師なら数十分かかる。


(……ここは驚かせたほうがいいのかな)


 私は右手に魔力を集中し、すっと瓶を掴む。

 手の魔力を瓶から液体へ瞬時に移し、ポーションへ混ぜる。


 ぱぁっと液体の濁りが薄くなり、代わりに濁りが魔力の粒になる。

 すぐ濃い黄色いの粒が液体に現れ、沈殿した。


 これを見るたびに私はタピオカドリンクを想像してしまう。

 でもこれで低純度のポーションは完成だ。

 

「できました」

「はっ――ええっ?」

「これでいいはずです」


 私が言って瓶から手を離すと、店主がガッと瓶を掴んだ。

 そのままぐっと顔へと瓶を引き寄せる。


「ほ、ほんとうだ。嘘だろ、あの一瞬で……」


 店主が目を見開き、呆然としている。

 ちょっといい気分だ。


「魔力の粒も均等で申し分ない……。濁りもちょうどいい、低純度のポーションでこんなに美しいのは初めてだ」


 店主の瞳がきらきらしてきた。

 どうやら尊敬の念を勝ち取れたらしい。


「ご満足ですか?」

「ああ……もちろんだとも。むしろ疑って悪かった。若いのに大したもんだ」


 本当に感心しながら店主が瓶をカウンターの下に戻す。


「こんなに腕のいい錬金術師は宵闇通りでもそうそうお目にかかれない……。で、何の用なんだ?」


 すっかり好意的になってくれた店主が私に聞いてくれる。

 でもよく考えると……ここからどうしよう?


(長期的な関係を築くなら、やっぱり商売の話かなぁ)


 正直、いきなりメルトやアズールの話を聞くのは不可能だろう。

 どうにか関係を作っていかないと……。


 ここは焦ってはいけない。

 じっくりと関係づくりを進めよう。


「とりあえず何かお取引ができればと思っているんですが……」

「ああ、なるほど……売り込みか。お嬢さん、運がいいな。ちょうどウチのボスが2階に来ているんだ」


 店主がくいっとカウンター裏手の階段を顎で差す。


「会う人間は選ぶ人だが、お嬢さんの腕ならボスも満足するだろう。入りな」

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