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28.衝撃

「お嬢さん、こんなに奢ってもらっていいのかい?」

「どうかお気になさらずにー」


 私はバーテンダーに3杯目の酒を驕っていた。

 コボルト族の彼の声は上擦っている。


 よし、そろそろいいだろう。


「錬金術について、詳しい皇族とかいないですかね。商売に結びつけばなぁって思ってるんですけど……。よく知らなくて、どなたがいいとかアドバイスありますか?」

「あー、それならメルト殿下だろうね。魔術省のお偉いさんでもあるよ」

「メルト殿下は陛下の従弟ですよね、そんなに凄いんですか?」

「錬金術ならこの国で右に出る者はいないだろうね」


 ほうほう、メルトの名前がいきなり飛び出してきた。

 自画自賛したくなる会話術と思っておこう。


「でもメルト殿下は表舞台には立たないからねぇ。商売に繋げるのは難しいかも」

「残念、そうなんですか?」

「ああ、君は知らないのかい? 陛下の身代わりになって殿下が毒薬を飲んで以来、宮殿にひきこもってしまわれてね」

「……え?」


 なんだ、その話は。

 全然知らないぞ。


 え、アズールの身代わりにメルトが毒を飲んだ?

 確かにそう聞こえた。


 いや、そんな……そんなことは聞いてない。

 ……あり得ない。


 私があまりにショックを受けたからか、バーテンダーが補足する。


「やっぱり他国の人は知らないんだね。帝都では知らない人はいないくらい有名な話なんだけど」

「そんなに有名なんですか……」

「ああ、だって殿下が社交会で倒れたんだよ。そりゃあ隠し通せるわけがないって」

「…………」


 それはその通りだ。

 社交会みたいに人のいるところで倒れたら……。


 でも、それはなぜ、どんな状況なんだろう。

 わからない、何も原作では触れられてなかった。


「ショックかい? でもまぁ、リディアル家は色々あるからねぇ。後継争いに皇帝追放……アズール陛下が継いでくれて良かったけれど」


 その話は原作にも出てきている。

 アズールにはふたりの姉とそれに弟もいた。

 実母は死に、側室が繰り上げになって……まぁ、かなり複雑なのだ。


 そしてアズールは父である皇帝と義母を隠居に追い込み、皇帝に即位した。

 苛烈な政治闘争がこれまでにあって、それがアズールの根源なのだ。


「毒を盛った犯人はわかっているんですか?」

「実行犯はね。でも誰が裏にいたのかまでは……陛下の姉様がしたとも、先帝や皇后様が黒幕だとも……」


 バーテンダーが首を捻る。

 肝心なところがわかってないのか……。


「で、ひきこもったあとの殿下は……?」

「さぁねぇ……魔術省には在籍しているみたいではあるよ。表の会合には出てきてないんじゃないかなぁ」


 バーテンダーは酒を飲みながら首を傾げた。

 正直、彼はそこについてはさほど興味がないか知らないかのどちらかみたいだ。


 これ以上は確度の高い情報は無理か。

 というか、酔いが回って首がぐらぐらし始めてるし……。


 で、そうしていると隣のヴォーパルバニーの人たちもこちらを向いているのに気が付く。


 目線が合ったヴォーパルバニー族がくむくむと話しかけてくれる。


「そちらのお嬢さんは、政治に興味がおあり?」

「あ、はい……錬金術をやってまして、それで繋がれる縁があればなぁと」

「にんじん食べます?」

「いただきます」


 ぽりぽりぽり。にんじんソテーをおすそ分けしてもらい、食べる。

 甘味が強く、自然の風味が感じられる中々の一品だ。


「どうぞ、お酒奢りますよ」


 私が勧めるとヴォーパルバニー族のふたりが嬉しそうに頷く。


「あっそう? ありがとう、いい出会いだね」

「じゃあ僕も頼もうかな」


 ……とりあえずは一歩一歩だ。

 で、私とバーテンダーの話を聞いていたらしいふたりが話題を振ってくれる。


「メルト殿下のことならとっておきの情報があるよ」

「……とっておき、ですか?」


 ヴォーパルバニー族が赤い目を輝かせている。

 とっても可愛い……。


「殿下の部下が、ひそかに宵闇通りへよく来ているみたい」

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