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20.高純度ポーション

「ふぅー……」


 頭の中にはたくさんの疑問がある。

 でもそれは一旦、置いておいて。


 ゆったりと心臓から力を引き出していくイメージだ。


 前世の知識があっても、私は私。

 かつてできていたことは変わらずにできる。


 心臓から熱い力の源泉が流れ出すように感じる。

 これをさらに、肩へ。腕へ。どんどん両腕の指先へと引っ張っていく。


(大丈夫……)


 高純度ポーションが戦略物資たりえるのも、製作過程が高難度だからだ。

 リディアル帝国でも再現できたのは、ここまでなのだろう。


 普通のポーションは黄色。この黄色が濃いほど出来がいい。

 メルトの作った目の前にポーションは純な黄色だ。

 ここまでは文句のつけようがない。


 だから、メルトが欲しているのはその先。

 ここから工程をひとつ足して、どうしたら黄緑になるのか。

 

「……ごくりですにゃ」


 キャサリンが息を呑む。


 今の私の魔力は研ぎ澄まされ、あふれ出そうになっている。

 私の魔力量はかなり多い……それを十二分に活かす。


 肩がじんわりと熱くなり、それが肘にも流れ出る。

 焦ってはいけない。


 身体の熱を押し出して、伝える。

 熱の先が手のひらにまでやってきた。


(……ここからだ)


 メルトもここまではやったことだと思う。

 身体の芯から魔力を取り出し、集める。そしてポーションに注ぐ。


 でもそれでは上手くいかない。

 少なくとも、私のやり方は違う。


 手のひら全体に緑色の魔力が満ちる。

 ぼんやりと光る緑の魔力――これをそのまま、瓶の注ぎ口にまとめていく。


 無重力に浮かぶ水のように。

 純粋な魔力が宙に浮き続ける。


「へぇ……」


 メルトが腕を組み、私の全てを見定めようとする。


(あと、もうちょっと)


 魔力は空気に触れても変質してしまう。

 だからこのまま魔力を注いでも、外側の変質した魔力が入って良くない。


 必要なのはもっとも純粋な魔力だけ。

 つまり、この宙に浮く魔力の中心部――これをゆっくり押し下げる。


 額に汗が浮かんでくるけれど、無視をして。

 

 中心部の純緑の魔力。これだけを抽出する。

 息を吸って吐いて。


 宙に浮かぶ魔力球が形を変え、つらら状に下へ伸びる。

 そのつらら状の中を純緑の魔力が通り――その先端がポーションへと接した、その瞬間。ぐっと純緑の魔力をポーションへ注ぎ入れる。


 そして素早く魔力球を引き上げ、部屋の中で弾けさせた。

 

「はぁっ、ふぅ……」 


 ポーションが淡く優しい光を放つ。

 その光は徐々に溶液へ溶けあい、消えていった。 


 残されたのは爽やかな黄緑色へと変わったポーションだ。


「成功しました」

「素晴らしい、なるほどね」


 キャサリンがいそいそとハンカチを取り出す。


「お拭きいたしますにゃ」

「ありがとう」


 椅子に座り、素直にふきふきされる。

 うーん……ケットシー族の手はやはり猫の手。

 顔の近くにあっても悪くないどころか、気分がいい。


「空気に触れた部分が入るのがダメなんだね。漏斗状にして、注ぐわけか」

「お判りになりましたか」


 ……恐ろしい。

 これを初見で理解したのはメルトが初めてだ。


 元婚約者のフィリスもあのクーデリアも全然わからなかった。

 何度説明しても理解できなかったくらいなのに。


 そこでメルトが低く笑う。


「くくくっ、でも言うは簡単……ってやつだ。製造の謎は解けたけど、これは難しい」

「殿下、そうなのですにゃ?」

「僕でもすぐには無理だ」


 ハンカチをしまったキャサリンが目をぱちくりさせる。

 彼女からしても信じられないらしい。


「魔力をあんな風に操作するのは人間業じゃないよ」


 そこでメルトが肩をこきりと鳴らした。


「でもだからこそ、燃えるけどね」

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