表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/67

17.帝都発着場

 アラン=ウェズールはゆっくりと宮殿の奥へ降下していった。

 ここからは見えなかったが、やっぱり宮殿の東側に発着場があるようだ。


「いずれは整備場と発着場をもっと増やしたいねぇ」

「そのためには予算が必要ですね」

「まさに。空中船はとても便利だけど、お金がかかる」


 それはそうだろうな。

 空中船を設計、実用化したのはアズールだ。


 つまりリディアル帝国の独占技術だけれど、コスト面は難題だろう。

 ランデーリ王国でこのアラン=ウェズールと同じものを作ろうとしたら、国家財政が破綻するかも……。

 この一隻でさえ、そのくらいの代物なのだ。


 降下した発着場は、お洒落な空港といった雰囲気だった。

 植木はぴしっと一列に刈り込まれ、芝生が敷き詰められている。


 管制塔、それに整備工場らしき倉庫も見えた。

 ほんの軽い揺れでアラン=ウェズールは発着場に降り立つ。


 ドキドキ……。

 前世の知識としてリディアル帝国は知っていても、訪れるのは初めてだ。


 しかもアズールの婚約者という立場で。

 帝国の方々はどう思うのだろうか。


 まさか石を投げられることはないと思うけれど。

 歓迎されないとそれはそれでツラい。


「さぁ、案内するよ」

「はい……!」


 アズールの差し出した手を取り、ゆっくりとタラップを降りる。

 船から芝生へ移ると、空気の質が変わって感じた。


「……とっても涼しい」

 

 さっきアズールの言っていた、船の結界を越えたのだ。

 ランデーリ王国よりも体感で数度は涼しい。

 私はぼんやりと夏の軽井沢を思い出していた。


 芝生を少し行くと、リディアル帝国の方々がずらっと並んでいるのが見える。

 

「いつも出迎えは無用って言うんだけどね。でも聞いてくれなくて」

「慕われているのですね」


 アズールは肩をすくめながらも満更ではない顔だった。

 並んでいるのは紺色の服を着たケットシー族、コボルト族、ヴォーパルバニー族の方々で、()()()()はひとりもいない。


 列の中から黒毛のケットシー族が前に出る。

 左胸に勲章とバッジが多数。この中で一番偉い人かも。


「お帰りなさいませにゃ、陛下!」

「ただいま」

「失礼にゃがら、お隣の方は……?」


 アズールが少しもったいぶって、咳払いする。

 それから彼は若干はにかみながら私のことを紹介した。


「僕の婚約相手、ランデーリ王国のセリアス公爵、ソフィーだ」


 さて、どのような反応になるだろうか。

 受け入れてもらえるだろうか。


 笑顔を浮かべながらも内心、かなりビビっていた。

 

 で、お出迎えの方々の反応は……。


「にゃ、にゃんとおっ!! これはおめでたいですにゃ!!」

「ついに陛下もご結婚へ向けて前向きになられたわん!」

「お祝いしなきゃですにゃー!!」


 お、おおー……。

 想像以上に受け入れられている!


 というか、やっぱり女っ気がないと思われてたんだ、アズール。

 まぁ……私に興味を持つぐらいだから、普通の女性には惹かれないか(自分が面倒だという自覚はあります)


「このソフィーはリディアル帝国へ供給されていた、ランデーリ王国産高純度ポーションの作り手でもある。彼女の知識は帝国にとっても重要なものになるだろう」

「なんと、あの途轍もないポーションの!?」

「おおっ……! こんな高名な方に来てもらえるとは!!」

「お触れを! お触れを出さなくちゃですわん!」


 それからはお祭り騒ぎだった。

 無理もない、これだけ大きな国の皇帝が外遊したと思ったら、婚約者を連れ帰ってきたのだから。


 後で聞いたら、出迎えの人たちは帝国の留守を預かる重臣たちとのことだった。

 いや、それにしてはハイテンションだったな。


(……というか、私ってかなりの有名人?)


 原作小説の開始時点でソフィーは死んでいるので、私にもよくわからない。

 でも、とりあえずあの地獄の日々には価値があったということだ。

 二度とやりたくはないけど。


 私の好感度は確かに跳ね上がったようで……不審がられることも煙たがられることもなく、お姫様のように宮殿へと連れていかれた。


(あとは……ふふっ)


 ちやほやされるのも悪くないけど、私としては――スキンシップということで、皆さんの頭を撫でられるのが一番だ。

 やっぱり皆、ふもっふもしててとても良い。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』や広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ