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16.帝都上空

 会議の終わりを待ち、アズールと改めて昼食を共にした。

 一緒に食べる場所は執務室だ。


 白身魚のポワレとローストビーフ、さっぱりめのレモンソースで。

 黒のちょっと味の濃いパンがよく合う。


 アズールは大量の資料を読みながらパンをかじっている。

 

「悪いね、まだ手が空かなくて」

「いえいえ、どうかお気になさらずにっ」


 ちらっと見えた紙にはセリアス公爵領の地図が描いてある。


 まぁ、つまりアズールの仕事を増やしているのは他ならない私なのだ。

 お食事中にまで波及する仕事をすみません……!


 それはそれとしてローストビーフはしっとり味が濃くて美味しい。

 だんだん胃が元気になってきて、さらに食欲が増している気がする。


「顔色も良くなってきたね。安心した」

「……そんなにひどかったですか?」

「あの館の時は……そう、すぐ倒れるんじゃないかと思ったよ。あるいは囚人かな?」


 やっぱりそう見えていたのか。

 正直、自分の顔は悪くなっていってもなかなかわからない。

 でも客観的にはやっぱりそうなのだろうな。


「ご心配をおかけしまして。でもキャサリンのおかげでかなり体調も戻ってきています」

「うん、リディアル帝国に着いたら宮廷医にも診てもらうからね」

「えっ? そこまでしてもらわなくても――」


 と言いかけて、アズールの手が止まる。

 ジト目である。


「良くなったように見えても、それは表面的かもなんだよ?」

「……うっ、それは」

「ここにも医者はいるけど、設備はない。婚約中に倒れられても困るし」

「はい……」

 

 理はアズールのほうにある。おとなしくお世話になろう。

 にしても、意外と世話焼きなんだな……。


 本編の小説ではこんな人間ではなかったような気がするけど……。

 主人公とアズールはあくまでビジネスパートナーだったので、私とはまた違うんだろう。


 アズールが微笑んで食事を再開する。


「わかってくれて、ありがとう。ごめんね、本当に昨日はヤバそうだったから」

「いえいえ、ありがとうございます」


 こうして果物もしっかり食べ、ちょっと休むとリディアル帝国へと到着する。

 飛行船はやっぱりかなりの速度だなぁ……。馬車の何倍もの速度だろう。


 甲板に出ると風景が一変しているのに気が付く。

 山々の頂に雪の冠が残っているのだ。もう7月なのに。


 それだけじゃなく、山自体の標高もランデーリ王国よりずいぶんと高い。

 リディアル帝国が北にあるとはわかっていても、やっとそれを実感として理解できた。


 アラン=ウェズールの甲板は穏やかな風がそっと吹いている。

 これは船全体を包むように結界が張られており、風や温度を調整しているからだ。    

 でなければかなりの風と気温差になるだろう。


「もうすぐリディアル帝国の都だ。ソフィー、君は来たことあるっけ?」

「ありません。リディアル帝国にも初めて入ります」

「なるほど、もうちょっとゆっくり飛んでも良かったかな」


 目を細めて国土を見つめるアデール。

 本気かもしれない。


 でもアデールにはお仕事が山ほど(私の作ったものも含む)あるはずだ。

 それは申し訳なさすぎる!


「それはまた、次の機会にしましょう! ええ、また今度に!」

「……そう? わかった」


 少しの間、風景をゆっくりと見渡すと――家の数が増えてきた。

 街道もはっきりと大きくなっている。


「そろそろですか?」

「うん、あの山を越えたらね」


 アデールが指差す先に小さな山があった。

 斜面に沿って村が連なり、街道が伸びている。


 ちょっと胸が高鳴ってきた。

 なにせ、これからの私が住む場所だし……!


 アラン=ウェズールが山を越えると、そこには大都会が広がっていた。

 

「うわぁ……!!」


 紺色の建物がびっしりと並び、いくつもの尖塔が突き立つ。

 公園も整備され、人々が舗装された道をせわしなく行き来している。


 そして視界の中央にあるのがリディアル帝国の宮殿だ。

 重々しい紺色と白の奥宮が並列しているのが印象的だった。


 ランデーリ王国よりも遥かに建物は高く、何倍も密集している。

 それよりも驚いたのは小さな空中船が何隻も飛び交っていることだった。


 一隻のサイズはアラン=ウェズールの数分の一くらいだけれど。

 ランデーリ王国にはああした空中船は一隻もなかった。

 リディアル帝国が世界最強と言われるのもわかる。


「どうだい、これがリディアル帝国の都さ」

「素晴らしいです……!」


 アデールが眼下の絶景を心から誇らしそうにしている。

 まさに、この帝国と大都市をアズールが統べているのだから。


 それからアズールがふっと私に優しい顔を向けた。


「ふふっ、君の都でもあるんだからね」

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