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15.ふわふわなケットシー族

 一連の仕事が終わった時には夜になった。

 さっきがっつり寝たのだけれど、普通に寝たくなった。

 ……家族と言い合いするのは体力がいる。


 ということで、夜10時には寝た。

 もちろんアラン=ウェズールの寝室で。

 新しい屋敷で寝るつもりにはならなかった。


 翌日、目が覚めてカーテンを開ける。


「うわぁ……!」


 きらきらした陽光が差し込み、私の顔を照らす。

 眼下では森と山を駆け抜け、雲が間近にある。


 前世での飛行機より高度が低いらしく、しっかり風景が楽しめた。

 しばらく外の風景を眺めて、それからキャサリンに声をかける。


「にゃー! ご朝食をお持ちいたしますにゃ!」

「ありがとう。陛下は……?」

「申し訳ありませんのにゃ、今は会議中ですのにゃ。お取次ぎはいたしますが、お会いできるのは会議後になるかと思いますにゃ」


 ふっと時計を見ると、11時だった。

 ……かなり寝ていた気がする。


 いや、むしろこれでいい!

 これまでなら考えられないほどのゆったり生活だ。


 でもアズールに合わせてもらうのは申し訳ない。

 会議の内容は多分、セリアス領のことだろうし……。


「会議に割り込むには及ばないわ。昼食をご一緒できればとお伝えして」

「しかとお伝えしますにゃ! ご朝食は軽めでもお食べしますにゃ?」

「あ、そうね……ありがとう、そうするわ」


 そして軽めの朝食――ポトフと肉汁したたるソーセージ、甘めのヨーグルトを食べてキャサリンとお話をする。


 ケットシー族やコボルト族について、私の知識は偏っている。

 というのも前世の知識がほぼ全部だからだ。

 ランデーリ王国にはこうした人々は少なかった。


 実際、セリアス領には行商人とか旅人か……定住していた人はいなかったように思う。キャサリンが顔をごしごししながら色々と説明してくれる。


「身だしなみは大切ですのにゃ。ケットシー族はとても綺麗好きですにゃ」

「だから毛がふかふかなのね」

「コボルト族も同じですにゃ。一日に何度もシャワーを浴びる人もいますのにゃ」


 昨日、セリアス公爵領で陛下と一緒に護衛をしてくれたのがコボルト族の人だ。

 長身で、目元が隠れるくらい毛が多い。

 身体能力と五感に優れ、戦士としてはぴったりだ。


 ……なるほど、両族ともお風呂やシャワーが好きなのね。


「あとはお昼寝も大切ですのにゃ。ケットシー族はよくお昼寝しますにゃ」

「ふむふむ……」


 頭の中に甲板で寝そべるケットシー族が思い浮かぶ。

 絶対に可愛い。


「……気になりますのにゃ?」

「えっ? あ、まぁ……」


 どうやら考えていることが顔に出ていたらしい。


「こほん、ランデーリ王国にはあまりおられませんでしたからね。皆様のことはよくよく知っておかないと」

「おおっ! さすがはソフィー様ですのにゃ! リディアル帝国の皇妃として目覚めておられてますのにゃ!」

「――まぁ、当然のことですので!」


 なんだかキャサリンの元から高い好感度がさらに上がった気がする。

 私は純粋にケットシー族のことをよく知りたいだけなんだけれど。


 というわけでメイドのお昼寝部屋に案内される。

 そーっと……忍び足で、起こさないように。


 中を開けるとふかふかのクッションが並べられ、そこでメイドのケットシー族がすーすーとお昼寝をしていた。


 素晴らしい光景だ。

 身体を丸めたケットシー族はとてもいい。


 キャサリンが私に囁く。


「撫でてゆかれますにゃ?」

「いいのですか?」

「わたくしたちはブラシも撫でられるのも大好きですのにゃ。それが高貴な方であればなおさら名誉なことですのにゃ」


 ……ほうほう、小説の中でも確かに主人公から撫でられたケットシー族が「名誉なこと」と言ったような記憶が。

 人から撫でられるのが好きなら、もちろん止める理由はない。

 私も撫でたい。


 というわけで、ゆっくり物音を立てずにお昼寝部屋に入り、寝ているケットシー族の頭を撫でる。


 ほわほわして、すっごく温かい。

 猫ちゃんの温かさと毛の豊富さだった。


「ふむ、ふむ……ふふふ……!」


 こうしてキャサリンの案内によって、私はケットシー族の頭を撫でて回り――本当に癒されてメイド部屋を出た。


 ふぅ……満足。

 しかし終わってみると、人の頭を撫でて回るのはランデーリ王国ではシンプルにヤバい行為ではある。


「……でも失礼じゃなかったかしら」

「大丈夫ですのにゃ。陛下もよくしておられますのにゃ」

「――え?」


 お昼寝部屋に忍び込んで?

 それはヤバい。


「ち、違いますのにゃ! 謁見や褒賞として、ですにゃ。忍び込んでとかではないですにゃ!」

「あ、ああ……そうよね」


 冷静に考えればアズールがそうするはずもなく。

 私と同レベルに考えてしまった。


 でも謁見の時か……。

 横一列に並んで膝を曲げるケットシー族の頭を撫でていくアズールを想像してしまい、私はちょっと笑ってしまった。

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