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92話 結成

「皆、急な呼び出しに付き合わせてしまってすまない」

俺たちが拠点に来た次の日、ケルンに攻撃を仕掛ける隊を結成するため、ジェイソンに呼び出された。

その中には隊長も含まれている。

「ジェイソンさんに呼ばれたから来たんですけど…これってなんの集まりですか?」

爽やかな顔をしている青年が前に出た。

「私も何も聞いていませんよ」

「あぁ俺も聞いてない」

周りから続々と声が上がる。

「そうだな、なんの説明もせず呼び出して悪かった。簡潔に言おう。お前たちにはケルンに攻める特殊部隊になってもらう!」

「ケルンに攻めるだって!?」

「それはここの戦力じゃあ不可能じゃなかったのか?」

「お前ら少し静かにしたらどうだ…確かにここの戦力ではケルンに攻めるのは得策ではなかった…だがそれは過去の話だ。そこにいるやつを見れば、攻めるというのは驚くほどの話でも無い。そうだろジェイソンさん?」

「流石は天才剣士グラジオと言ったところか…そうだ、シェパードは前に来てくれ」

俺はジェイソンの横に並ぶ。

「彼はシェパード。遊撃隊に所属し…ネームド『シャドウ』を単独撃破。さらにネームドクラスの魔物使いの魔族もほぼ単独で撃破している」

「それは想像以上の化け物だな」

「彼が加わった今、敵にネームド魔族がいなくなったこの機会を逃すわけにはいかない!ここに集められたのは俺が独断で選んだメンバーだ。君たちには特殊隊として、ケルン内部への侵入、そして敵側の大将の首をとってもらう!」

俺もそこで初めてこの隊の任務を知った。

(なるほど、正面から戦うのには人数が少なすぎると思ったが、少数精鋭による侵入のためか)


「というわけで、俺たちには特殊任務を任せられたわけだが…まずは自己紹介しとくか。俺はグラジオ、獲物は剣だ。主な戦果としてはネームド『インビジブル』の討伐ぐらいだ」

「ぐらいって…あっ、私はアンバーです。職業は魔法使い。得意なことは、罠を仕掛けたり、形を変えたり…そんなところです。戦果は特にありません…」

「まったく、アンバーはもっと自信をつければ良いのに!私はリール、職業は盗賊!冒険者上がりだから、ケルンの街のことも少し知ってるわ。よろしく!」

「俺はジェイル錬金術師だ。職業がら、最前線に出ることはないが戦えないことはない。このメンバーの中では年齢が上の方だからな、何かあったら相談してくれ」

この四人が俺と隊長以外のメンバーである。

「俺はこの隊の指揮を任された、ギルザレンだ。隊長と呼んでくれ。元は遊撃隊を率いていたが全滅しちまった。あいつらの思いも背負ってるから、簡単にくたばるつもりはない」

隊長も自己紹介が済み、俺の番が回ってきた。

隊長以外の目が怖いほど俺に集中した。

(そりゃそうか、突然現れて状況をひっくり返すほどの戦力だと言われた奴は気になるよな…)

「俺はシェパード。得物は槍だが、それ以外の武器も一通り扱える。よろしく」

「いや短か!?」

俺の自己紹介に対して、リールがつっかかってきた。

「もっと話すことがあるでしょ。ほら、『シャドウ』を倒した話とか、どうしてそんなに強いのかとか!」

「リールさん、もう少し落ち着いてください。彼も困っていますし…」

「アンバー、あんたは気にならないの!?彼の実力は本当にすごいのかとか」

「た、確かに気にはなりますけど…だからといって、あまり踏み込むのも悪いですよ」

「それもそうね」

アンバーに止められてリールはあっさり引っ込んだ。

「彼の強さは俺が保証するから大丈夫だ」

「戦ってもいないのに、強さがわかるのか?」

「俺は人の気配を捉えるのが得意でね。君からは強者の気配が溢れ出ているわけ。だけど、少し読みにくい気配だね。君、実力を隠してるでしょ」

「それついてなんだが、俺も自分の力を全て把握できていなんだ。確かに『シャドウ』を倒したのは俺なんだが、その後の魔物使いの魔族は俺が倒した記憶がないんだ」

「記憶がない?」

「あぁ、その魔族は自称魔王軍の幹部クラスらしくてな、俺はそいつによって追い詰められ気絶したんだ。そして気を取り戻すと、俺の槍がその魔族を貫いていたんだ」

「つまり、あんたが倒したことには間違いないけど、その時の記憶は全くないってこと?」

「そういうことだ」

「なるほど…だが単独でネームドを倒している実力があればなんの問題もない」

「それもそうね、ネームドを単独討伐なんてそこの天才剣士君くらいしかできないと思っていたからね」

「俺を君付けするのは止めるんだ」

「私より年下なんだから君付けでいいでしょ!」

「たった一つしか違わないではないか!俺はもう18だぞ」

「じゃあ、リールさんは俺と同い年か…」

俺はどうやらリールさんと同い年らしい。

「嘘でしょ?あんたは私より三つ上くらいだと思っていたわ」

「それは老けていると言いたいのか?」

「そういうわけじゃないわ。なんか、風格?というか、その落ち着き具合が年上に感じるのよ」

「私も同い年です」

「ほら、この隊の中でグラジオ君が一番年下じゃない!」

「だから君付けは止めろと、」

「お前らいい加減にしろ」

「そうだぞ、ここは隊長命令で、」

「おじさん二人は黙ってて!」

『お、おじさん…』

隊長とジェイルが、あまりのショックに膝をついて地面に倒れた。

「ほんとにこの隊で大丈夫なんだろうか…」

俺は目の前に広がる光景を見て、不安を感じた。

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