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9話 願い

ルナと共に拠点に帰ると村長が村人全員を集めて待っていた。


「お話は終わりましたか?なにやらアクシデントもあったようですが、二人ともよい顔つきだ。若者の成長は早いですね」

「シゲルさんもこんなに人を集めてどうかしましたか?」

「えぇ、これからの話を少々。皆さん改めてこちらが私たちの命の恩人であるアサヒ殿です。彼は我々の先祖のナガオ様と同じ日本から来られたお方です」


「彼が……」

「あの黒髪、もしかしてと思っていたが……」

「そして彼は私に誓ってくれました。この世界の間違った歴史を正し、この世界を救うと!真の歴史に正すことは私たち一族の願いでもあります。この場で彼に出会えたことは、きっとナガオ様のお導きでしょう。これから我らがナガオ村、アサヒ殿の旅の手助け全身全霊でやらせてもらいます!」

「いいのですか!?私は勇者ではないのですよ」

「先ほど皆で話し合って決めたことです。皆もあなた様の役に立てること喜んでいますよ」

「そうですよ、アサヒ様!」

「私たちはあなた様のお力になりたいのですよ」


「皆さん……、私はこの世界に神と名乗るものとの誓いでやってきました。私には三人の友人がいましたが、この世界に来た際に離れ離れになってしまいました」


彼らの顔が頭に浮かぶ。


「彼らとは共にこの世界を救うと誓いました。世界を救えと伝えられた身ですが、この世界に来た時には何をすればいいのか右も左も分かりませんでした。そんな時に、彼女と出会い、そしてあなたたちに合うことができました……

そこで私の進むべき道が決まりました。私にとってこの世界を救うというのは、彼女のような獣人族が理不尽に差別されることのない、そして誤った歴史により三種族が争うことがない世界を作ることです。しかし私には力もなければ、この世界の常識もありません。だから皆さんの力を私に貸してください!おねがいします!」


「もちろんですよ、アサヒ様」

「お兄さん、一緒にこの世界を救いましょう!」

「ルナ、皆さん、ありがとうございます!」

「それではアサヒ様、これからの詳しい話をしましょうか」


それから俺は村長とこれからについて話を進めた。



---



そろそろ日も落ちるだろうか。

村長との話はだいたい終えることができた。


大まかに決まったことは二つ。

一つ目、これからの俺たちの行動についてだ。

現状圧倒的に情報が足りていない。

パーティーメンバーと合流するにも情報は必須だろう。

そのために俺はルナと旅に出ることにした。

まずはここから近い街を目指そうと思う。

一人で行くことも考えたが俺一人だと攻撃手段が心もとないし、ルナのやつが悲しむだろう。


二つ目、ナガオ村についてだ。

さすがにこの大所帯で動くのは大変だ。

だからナガオ村の方々にはこの洞窟を拠点に村を気付いてもらうことにした。

俺たちの活動の拠点を作った方が今後の活動が楽になるだろう。

彼らも帰る場所がないのでちょうどいいだろう。

これから人が増えていくことも見越した計画である。


「とりあえず私は明日から旅立とうと思います。村長さん村のことは頼みます」

「分かりました。あなた様もくれぐれもお気をつけて、とくにルナさんに関しては獣人族差別のこともありますので……」

「えぇ、彼女に悲しい思いはさせませんよ!」


村長とはそこで分かれ寝床に向かう。


「あっ、お兄さん!お話は終わりましたか?」

「うん、終わらせてきたよ。それでね、明日から旅立つことにしたんだ。朝一から動くから準備を済ませておいてくれ」

「分かりました。お兄さんとの二人旅、楽しみです!」

「楽しみって……まあいいか、楽しむことは悪いことでもないしな。明日は早いから、早く眠りにつくぞ」


明日から始まる旅に不安を抱きながら眠りについた。


(楽しみか……そうだな初めてのゲームに挑戦するときは不安と楽しさが入り乱れるこんな気持ちだったな。この世界に来てから楽しむという気持ちをすっかり忘れてしまっていたな。そうだよ、異世界に来て初めての街、ワクワクしない方がおかしいな!どんな出会いが待っているのかな……)



---



「アサヒ、ハルト、アオイ……みんなどこにいるの……」

「何ぼさっと立ってるんだ!早くこっちに来い!」


そういうと彼は、私の首元に繋がれた鎖を引っ張る。


「んっ、」

「下等な獣人が人間様に逆らうんじゃない!しかし、お前は獣人にしては随分とキレイだからな、さぞあの方も喜ぶだろう……」


(私と一緒につかまっているあの子は大丈夫だろうか?私があんなミスをしたばっかりに……せめてあの子だけでも)


「こいつらを引っ張ているのも疲れるわい!無駄な抵抗をしやがって、今日は一晩ここで過ごすぞ。とりあえずそこの木にでも繋げておけ!」


(人数は三人、私を連れている彼と護衛の二人。そして馬が3頭。隙を見つければあの子だけでも逃せそう)


彼らは私たちと馬を木につなげると野営の準備を始めた。


「ねぇ聞いて、今から私が一瞬隙を作るからその隙に逃げて」

「お姉ちゃんはどうするの?」


「私は大丈夫よ!何とかして見せるから。だけど一つお願いがあるの、私と同じような黒髪の人を見つけてこのことを伝えてほしいの。その人たちの名前は、ハルト、アオイ、そしてアサヒ。彼らに、ユイは捕まってしまったと、伝えてもらえる?」

「うん、わかったよお姉ちゃん。絶対に伝えるから」

「ありがとう。それじゃあまずは君のひもを切るね」


私が繋がれてるのは鉄の鎖だが、この子が繋がれているのは紐だ。


(私の職業が剣士でよかった…この木の枝でもこの縄くらいなら切ることができるのだから!)


落ちていた木の枝を広い力を込める。

そして縄に木の枝を当て、断ち切った。


「お姉ちゃんすごい!」

「いい、まだ動いちゃダメ……今から馬の縄も切って暴れさせる、その隙に逃げて!」


音をたてぬよう馬に近づき縄を切った。

そして馬のお尻を思いっきり叩いた。


「ヒヒーン!」

「おい馬の縄が切れてるぞ!早く捕まえろ!」

「いまよ!逃げて!」

「うん」


馬が暴れだしたのと同時にあの子は走り出していく。


「おいあいつも逃げてるぞ!クソ、どうして縄が切れてんだよ!」

「もういい、あいつは無視だ。まずは馬を取り押さえろ」


どうやらあの子は逃げ切れたようだ。


「おい、お前。お前がやったな!」

「私は鎖でつながれているのよ。何ができるっていうの?」

「ええい、口答えするな!」


そういうと彼は思いっきり私のことを蹴りつけた。


「うっ、」

「獣人は黙って寝ていろ!」


彼の機嫌が戻ったのか、私のもとから離れていった。


(誰か私のことを見つけて……)

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