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6話 改定者

俺たちの目の前に現れたのは、おれがこの世界時来てから初めて出会ったモンスターだった。


(どうする、今の俺は武器もないし攻撃用の魔法の一つも使えない。俺とこの子だけなら何とか逃げ切ることができるかもしれない。でも、ここにいる人たちを見捨てることになる)


「お兄さん、モンスターの様子を見てください。この部屋の入り口で止まって、なぜか入ってこようとしません」


(なぜだ、やつが嫌がる要素があるのか。それともこちらを恐れているのか……)


「はっ!もしかして」


俺はポーチに収納していた牙を取り出した。

先日何かに使えるかと思って、剝ぎ取っておいたものだ。

おれが牙を前に掲げると、モンスターは一歩後ずさりした。


「お兄さん、その牙は?」

「これはあいつの牙だ。この前たまたま倒したときにはぎ取っておいたのだ。まさかこんなところで役に立つとはな!とりあえずこの牙を複製!」


牙を二つに増やし、一つを前方に投げつける。

するとモンスターは後ずさりし、目の前から消えた。



---



「とりあえず一時的にしのぐことはできたが、すぐに戻ってくるだろう。何とか対抗策を考えないとな……」

「あの~お兄さん……」

「ん?どうした」


「私はこう見えても魔法使いです。杖の代わりになる媒体があれば魔法を使うことができます。その牙を媒体にすれば、二回は魔法が使えるはずです。ただ私が使えるのは初級魔法だけです。倒しきれるかどうか分かりません」

「いや、今俺らにできる攻撃手段はそれしかない。頼りにしてるぞ!」

「は、はい!」


彼女は頼られたことがうれしかったのか、しっぽを大きく振っている。


「俺がやるべきことは、魔法発動までの時間を稼ぐこと。つまり前衛職か……とりあえずこの折れた鉄格子で戦うしかないか」


武器というには心もとない鉄の棒を持つ。


「いいか、やつが再び現れたら俺はすぐに飛び出す。なんとしてでも時間を作るから、最大威力の魔法をお見舞いしてやれ!」

「はい!」



---



「ガルルルル」


やつが近づいてくる音がする。


(ビビるな俺、今この状況を打破できるのは俺たちしかいない。俺が突破されたら主力であり、唯一の火力担当の彼女がやられてしまう)


足音が止まり、静寂が訪れる。


そしてあいつが曲がり角から顔をのぞかせる。

目が合う。


「せぇーい!」


自身を鼓舞し距離を詰める。

向こうも動き出し俺の喉元に牙を突き刺そうと飛び掛かってくる。

俺は鉄の棒を顔の前に素早く動かし、牙を防ぐ。

しかし奴の体重に耐え切れず背中から倒れる。


「風の太刀よ我がもとに集え、相手を切り刻め『ウインドカッター』」


彼女の魔法が奴の顔に直撃する。

確実にダメージは通ったはずだ。


しかし、致命傷にはならなかった……

奴は倒れず俺ののど元に嚙みつこうと牙を近づけてくる。


「お兄さん、ダメです。威力が足りません!」


(彼女が魔法が使えるのはあと一回しかない、何とかして致命傷を与えないと)


「ズサッ」


奴の爪が俺のあばらを切り裂く。

今までに見たことがない量の血が飛び散る。


「うあぁー!」


あまりの痛みに腕の力が抜けそうになる。

しかし、急所を守るためにも力を抜くわけにはいかない。


(このままでは確実にのどをかみ切られる、クソこんなところで死ぬわけにはいかないんだ…


「この世界で死んだら、現実でも死ぬからね」


……死ぬわけにはいかないんだ。俺はあいつらとこの世界を救うんだ。


「もうお前だけの職業を作ったらどうだ?この世界の理を曲げる者だから『ブレイカー』なんてどうだ」


……そうだ、俺は理を曲げる者『ブレイカー』だ!この状況を変えられるのは俺だけだ!)


職業 ブレイカー(改定者)


脳に文字が直接浮かんできた。


(いまなら、やれる気がする!)


「魔法を、もう一度魔法を放ってくれ!」

「でも、私の魔法じゃ威力が……」

「大丈夫!俺を信じてくれ。今できる最高威力の一発を頼む!」

「わ、分かりました。風の太刀よ我がもとに集え、」


(集中しろ、今の俺ならいけるはずだ。魔法の回路を意識しろ、威力を倍にいや、3倍、まだ足りない……5倍にするイメージで!)


体からごっそり力が抜けていく、目もかすんでいく。


(まだだ、集中を切らすな!)


「鋭く、鋭く、何にも負けない刃となれ!切り刻め『ウインドカッター』」


彼女の手から放たれた風の刃は先ほどとは比べ物にならない威力となってモンスターに向かっていく。

そして、首から上と下を切り離した……


「ズシャ、」


仰向けに横たわる俺の横に頭が落ちてきた。

目が合うが今は先ほどと違って安堵のため息が出る。


「よかった……」


安心し、限界だった俺の意識は遠ざかっていく。


「お兄さん!!」


駆け寄ってくる彼女の姿が見える。

どうやら、ケガはしていないようだ。


(よかった……)


そこでおれの意識は途絶えた。

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