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5話 遭遇

「あれ、こんなはずじゃなかったのに…」


俺は慌ててMPを確認する。


MP25/100


連続のすり抜けでかなりMPを消費していたようだ。


「まずいな~、これじゃあしばらく出れそうにないな…」


(さぁ~どうしたかもんか、とりあえずMPが回復するまでここで待つしかないか)


「お兄さんは、魔法使いか何かですか?」

「ん?俺は魔法使いじゃないぞ…」

「では、どうやってここに入ってきたのですか?魔法でも使わない限り、ここには入ってこれませんよ!お兄さんは何者なのですか!?」


「俺は…俺自身も何か分からないんだよな~」

「な、何か分からないって、10歳になった時に神様から転職を言い渡されるはずですよ!」

「あぁ~、そこのところはちょっと複雑でな~、とりあえず悪者ではないから安心してくれ!」

「今のところ、壁から出てきて、鉄格子に向かって何やら念じてる不審者ですけどね・・・」

「グッ、痛いところをつかれるな!」


「…ふふっ」

「おっ、ようやく笑ってくれた!女の子は笑った顔が一番似合うな!」

「わ、笑ってなんかいませんよ!」

「そ、そうか。それでな、俺はしばらくの間ここにいさせてもらうことになった。と言っても、数時間かそこらだ。そしたら俺の秘密の技でここから出してやるからな!」


そう言い放つと、彼女の隣に腰を下ろした。


「そういえば、自己紹介してなかったな。俺の名前はアサヒだ。君の名前は?」

「私は…名前がありません」

「名前がない!?どうして、って言うのは聞いても大丈夫かい?」

「理由は…お兄さんになら言ってもいいかな」


彼女はそう言うと、かぶっていたフードをとった。


そこには、可愛らしいケモ耳がついていたのだ。


(なるほど、彼女は獣人だったのか…この世界には、獣人がいると、)


「君は、狐の獣人かい?」

「はい、お兄さんは嫌がらないのですね…」

「嫌がる?」

「多くの人間族の方は、獣人族を嫌います。特に王都の人間は差別意識が強いと聞いています」

「あぁー、俺の出身地はかなりの辺境でな、そう言う差別とかはなかった場所なんだ」

「そんな場所があるんですね!」


(なんか騙してるみたいでもうしわけないな…)


「獣人族には家族から名前をもらう習慣があります。私は奴隷になったとき、その名前が剝奪されてしまったのです」

「君が奴隷になった理由は、獣人差別が関係かい?」

「いえ、これは獣人族の問題です」

「獣人族の問題?」


「私は生まれながらにして、魔力がありました。魔力を持っているだけなら、獣人族の中にごく稀に生まれてくることもあります。問題が起こったのは、10歳の天職の儀の時でした。私の職業は魔法使いだったのです。獣人族の伝承の中に、獣人族の魔法使いは裏切り者であるというものがあります。そのものはかつて我が同胞を裏切り、魔王に仕えた者であると。そして一族から魔法使いが生まれたら、そのものを処刑しなければいけないという掟が生まれました。私も本当は処刑されるはずでした…ただ私は族長の娘だったので、奴隷落ちという形で一族から売られました」


「君は、一族を恨んでいるかい?」

「まったく恨んでないと言ったらウソになりますが…それでもこの判断をした一族のことを、そして父のことを尊敬しています。処刑されなかっただけありがたいです」

「そうか」


(強くて、優しい子なんだな。こんな子が奴隷になっちまう世界なんて…)



その後、この世界についていろいろと教えてもらった。


まずこの世界には4種族がいる。

人間族、獣人族、エルフ族、魔族。

現在魔族の王、魔王が各種族に向けて侵攻をしている状況であるということ。

ここは人間族の領土であること。 

などなどこの世界についての情報を集めることができた。


(ユイは獣人族だったが、大丈夫だろうか?アオイはエルフ族だし、見つけやすいかもしれないな。ハルトは…あいつなら何とかしてるか!)


あと1時間もすれば魔力が完全に復活するだろう。

少し仮眠でもして待つことにした。


「悪い、少し仮眠させてもらう。何かあったら教えてくれ」

「わかりました、自由な人ですね…」



「お兄さん、お兄さん!」

「んっ!?どうした?」

「何やら洞窟の奥が騒がしいです!」


耳を澄ませてみると確かに微かだが声のようなものが聞こえてくる。


(よくこの音に気付いたな!獣人族は耳がいいのかもしれな。それにしても、この音は人の声というよりもっと野性味のあるような…)


「お兄さん、嫌な予感がします」

「あぁ、俺も同感だ!ここにいてはまずそうだ、逃げるぞ!ついてこい!」

「分かりました!」


俺は彼女の手を握ると


(すり抜け)


鉄格子に向かって突っ込んだ!


「ちょっ、待って」


そして彼女は俺と一緒に鉄格子をすり抜けた。


「えっ、お兄さん何をしたの!」

「ちょっとバグを使っただけさ!」

「バグ!?」

「説明は後だ、とりあえず出口に向かうぞ!」

「出口ってどっち?」

「君が知ってるんじゃないの!?」

「どうして私が知ってるとおもったの?」

「いや~、連れてこられたときに道を覚えてるかなって…」

「そんな余裕はなかったの!」

「ちくしょう、とりあえず声が聞こええてくる方向とは逆に向かうぞ!」

「それしかないようですね」


そういうと急いで、走り出した。



洞窟はかなり入り組んでいたが、何とか開けた場所にたどり着くことができた。


「ここは何のスペースだ?」

「ここもどうやら奴隷を入れておく牢屋でしょうね。ここは人間族がいるようですが、同じ荷馬車で見た顔ぶれが数人います」


確かにここも奴隷がいるようだった。

おそらく人数は20人程度だろうか。


こちらをうかがう様子はあるが、皆絶望に打ちひしがれた顔をしており、ほとんど生気が感じられない。


「クソ、全員助けてやりたいが、今の俺の魔力量では全員救うことはできないな」

「お兄さんとりあえず先に進みましょう!」

「仕方ない、絶対後で助けに来るからな!」


絶対助けに来ることを心に誓い進もうとした時だった…


「ガルルルル」


背後から身の毛がよだつ声がした。

恐る恐る振り返ると、そこには俺がこの世界に来て初めて出会ったモンスターの姿が…


「おいおい、まじかよ」

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