3話 始まり
「チュンチュン、チュンチュン」
(小鳥のさえずりが聞こえる。風が気持ちいい。あたたかい陽射しが全身を包む)
「グワァ、グワァ」
(アヒルもいるのか?)
「ガルルルルー、ガルルルルー」
(これは肉食獣の声だな!さすが俺、目をつぶっていてもわかる…ん!?肉食獣!?)
恐る恐る瞼を開けると、目の前にはトラ?のような猛獣がいた。
(あっ、これまずいやつだ…)
脳が判断するより早く体が動き出していた。
猛獣に背を向け下り坂をすごい勢いで駆けていく。
「まずい、まずい、まずい!とにかくこいつから逃げないと」
後ろから迫りくる感覚に、背中を押されるようにがむしゃらに走り続ける。
周りを見ず走り続けたからだろうか、進行方向に大きな岩があらことに気が付かなかった。
(まずい、このスピードのまま行くとよけきれない!かといって、スピードを落とせば後ろのバケモノに追いつかれてしまう。どうする、どうする…今俺にできる最大限の事をしろ!)
あまりの窮地に思考が止まりかけたその時、たった一つの道筋が見えた。
おそらく、日々の習慣がとっさに体を動かしたのだろう。
「もうこの方法しかねぇ!やってやる!」
そう叫び俺は、目の前の岩に向かってスピードそのままに突っ込んだ。
そして一瞬視界が暗転した後、視界が開けた。
そして背後から、
「ドーン」
と大きな音が響いた。
おそらく俺を追いかけてきたバケモノが岩にぶつかった音だろう。
「た、倒したか!」
恐る恐る岩の裏に回り、バケモノの姿を確認する。
そこには、頭がつぶれた姿で横たわるバケモノの姿があった。
「うっ、科学文明の中で生きてきた現代人にはきついな…これはいわゆるモンスターってやつだな」
そう思い、観察をしていると急にめまいに襲われた…
(あれ、いくら慣れてないからってこんなにめまいが来るとは…)
めまいと共に視界がボケはじめ、意識を失ってしまった…
---
「おいリーダーいつまで寝てんだよ!」
「そうよ早く起きなさいってば」
「そうだぞ、俺たちの冒険は始まったばっかだからな」
ハルト、ユイ、アオイ…
「あんまぼーっとしてると置いてくぞ!」
(おい、待ってくれ…)
「待ってくれ!!」
伸ばした手はやや赤く染まりかかった空をむなしくも空ぶるだけだった。
(どうやら、気絶していたみたいだな…他の魔物どもに襲われなかっただけましか。とりあえず夜を超す準備をしなければ、)
幸いにも倒れていた近くには森があった。
そのため日が完全に落ちる前に急いで薪を集めることにした。
集めた薪に火をつけ、魔物の肉を焼く。
魔物からはドロップ品のみが落ちるゲームもあるが、この世界では倒した魔物はそのまま残る仕様らしい。
捌くのは大変だが、肉が手に入ったから感謝しないとな。
「案外食えるもんだなー、魔物を食べれる世界で助かった」
一人で過ごす夜というのはかなり心に来るものだ…
自然とおっもたことが口に出てしまう。
「まずは現状把握だな、俺は神と名乗るものに助けてもらう交換条件で、この世界を救いに来たと。おそらく、俺以外の3人もこの世界のどこかにいるはずだな…合流もしたいが、まずは俺自身が生き残ることを当分の間、第一目標にするべきだな。確か神は…
「君たちが行く世界は、夢あり、希望あり、魔法ありの世界だ!職業は今のものが引き継がれるからね!」
って、言ってたな。つまり職業があるわけだ!ということは、『ステータス』おっ、本当に出た」
ステータスという俺の言葉に反応にし、目の前に半透明のディスプレイのようなものが現れた。
名前 アサヒ
年齢 19
職業 ???
MP 10/10
HP 96/100
魔法 :*;.//'x,>/::;::k/@k/._l]*::l;l\o;><:@k./
称号 救世主 理を曲げる者
「名前はプレイヤーネームの方が使われているのか。そしてHP、MPがあると。HPが減っているのはさっき倒れたからか…称号や文字化けしてる魔法も気になるが、一番の問題は職業だよな~」
職業 ???、神が言うには職業は引き継がれるはずだから、本来の俺の職業は『旅人』になるはずだが…
「まー今考えてもわからないこともあるだろう。とりあえず明日からは町や村を探すことにするか。第一村人はどんな人だろうか。もしかして、救世主様私を仲間に入れてくださいとか言われちゃったりして、超絶美少女の魔法使いの子がいたりして…」
これから始まる冒険に胸を躍らせ、少し肌寒い夜風が当たる中眠りについた。
(神様は、この世界で死んだら現実でも死んでしまうと言っていたな。今日みたいな賭けで行動することはなるべく控えないとな。命はどの世界でも一つ、大切にしていこう…)
---
「おかしい、どうして俺は檻の中にいるのだろうか」