第2話 自称神
「おい、真っ暗じゃないか!」
扉をくぐった先は何もない場所だった……
一面暗く、すぐ隣にいるパーティーメンバーさえ見えなくなりそうである。
「だだっ広い空間が広がってるだけみたいだな。やはり未完成エリアだと考えるべきか…」
「なんか怖いし、早く戻ろうよ~」
「そうだな…って、俺らが入ってきた扉がないぞ!」
「ログアウトボタンも消えてる…おいアサヒ、お前でもこの状況どうにかできないのか!」
「座標ずらしバグも、すり抜けバグも使えない!おそらくこの空間自体が今までのゲーム空間とは完全に区切られているんだろう…こうなった以上もうバグが使えないと考えるべきだろう」
「うそ、アサヒでもどうにもできないなんて…私たちこれからどうすればいいの!」
「ユイ、一度落ち着け!今取り乱してもどうしようもない」
「そうだな、全員でこれからのことを考える必要があるな。まずはこの空間を調べることから始めよう。何かわかるかもしれえない」
そうして俺たちは、探索を始めた…
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「とりあえず分かったことをまとめよう。まずこの空間は半径約30メートルの円状であること、空間は見えない壁で囲まれている。高さは不明。おそらく、未完成のボスの間と考えるのが妥当だろう。そして見つけた唯一の手掛かりは叩くと下に空間がありそうな音がするここの床だけだな!」
「確かめに行くしかないな…頼めるか、ユイ」
「任せて!このぐらいならスキルがなくても楽勝よ!」
そういってユイは地面に向かって剣で連撃を加えていく。
そして数秒後大きな衝撃と共に床が崩れ落ちた。
4人が一斉に落ちていく……
10メートルくらい落ちただろうか……
「いてて、全員大丈夫か?」
「なんとかな!」
「予想通り下に空間があったわね」
全員の無事が確認でき、目の前のがれきの山を越えるとそこにはたった一つの王座、そしてそこには足を組み深々と座る人の姿が……
「ここは君たちが来れるような場所じゃないはずなんだけどな~」
「あんたはいったい誰なんだ!」
「そうだね~、君たちの世界でいうところの神に当たる存在かな」
「神ですって!冗談はやめてよね!」
「そうだ、そもそもこのゲームは何なんだよ。10年前に存在しないはずの技術が使われていたし、こんな謎の空間まであるときたもんだ。ちゃんと説明してくれ!」
「めんどくさいけど、ここまで来た君たちに敬意を込めて教えてあげよう!このゲームは君たちの世界とは異なる世界の神たちによって作られたものだ。その目的は世界を救うシュミレーションを行うためなんだ。僕たちの仕事は世界の均衡を保つことなんだけど、直接干渉することはできないんだよね。そこでその世界に勇者を送り込んで世界を救ってもらうんだ。その勇者を選別するためにこのゲームを作っているってわけ、わかった?」
「なるほど、ずいぶん勝手な話だが理解はできた。で、俺たちにその拒否権はあるのか?」
「もちろん、普通は拒否権はあるよ~、断った場合は記憶をちょっといじらせてもらうけどね」
「ちょっと待て!普通はってどういうことだ!」
「君たちの場合は、ちょっと特殊かな。そもそも普通は入れない場所まで来ちゃったわけだし、そっちに非があると思わない?それでただで助けてくれっていうのは虫のいい話過ぎないかい?」
「確かにそうだけど、私たちに何ができるっていうの…まさか、」
「うん、君の想像通りだよ!今から君たちには世界を救いに行ってもらいます!世界を救った暁には、君たちをこの場所から出してあげよう。さらにこっちにも少し落ち度があったし、戻ってきたときに一つ願いをかなえてあげよう!特別だよ~」
「みんな、どうやら俺たちに選べる選択肢は1つみたいだな」
「俺は一度勇者になってみたかったんだ!ちょうどいい」
「わたしも、ここから出るためならなんだってやってやるわ!」
「ふっ、決まっちまったもんは仕方ない」
「全員やる気みたいだね~、それじゃあさっそく送っちゃうよ!」
そういうなり、床に大きな魔方陣が浮かび上がる。
「ちょっ、まだ詳しいこと聞いてないぞ!」
「あれ?言ってなかったっけ、君たちが行く世界は、夢あり、希望あり、魔法ありの世界だ!職業は今のものが引き継がれるからね!もちろんみんなばらばらの場所からスタートだからね~、それじゃ~行ってらっしゃい!」
魔方陣が激しく輝き、意識が薄れていく。
「あっ、そうだった。そっちの世界で死んじゃうとこの世界でも死んじゃうから気を付けてね!」
「おい、そういう大事なことは早…」
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そうしてこの日、4人の勇敢なる者たちが異世界へと旅立っていった…